top コラム本日のマイカメラ第19話 ステレオロッカ

本日のマイカメラ

第19話 ステレオロッカ

2023/04/11
柊サナカ

ステレオ写真、お好きですか。
 

一時、ステレオの絵本やムックがものすごく流行ったことがありましたね。見ると目が良くなる、という触れ込みでした。
先日、日本カメラ博物館のJCIIミュージアムで、「ステレオ写真に浮かび上がる幕末・明治の日本 Part1 Rossier(ロシエ)&Burger(ブルガー)&Metcalf(メトカーフ)」を見てまいりました。この展示、面白かったのは、ステレオ写真を見るのに、一人ひとつ、双眼鏡のようなビューワーの貸し出しがあり、それを覗きながら鑑賞できたことです。みなさん、童心に帰ったようにビューワーを通して写真を鑑賞していました。特に、メトカーフの写真は素晴らしく、目の前に幕末の日本が立体的に広がるのは、神秘的ですらありました。
 

それから、ステレオ写真もいいなあと思い始めたのです。ステレオ写真と言えば、わたしはてっきり透過するもの、たとえばスライドのような、リバーサルフィルムで撮影し、それをフォーマットに合った専用のビューワーで見ないと鑑賞できないと思い込んでいました。手で持って、双眼鏡のように覗くタイプのビューワーにより、必ずしもリバーサルフィルムで撮影しなくてもいいし、なんなら目を寄り目にする立体視でも楽しめるなと思ったら、不意にステレオカメラが欲しくなってきたのです。 
 

今年もCP+に行き、いろいろ見物して回りましたが、心残りは中古カメラ市がなくなったこと。物欲を持て余していると、近くにワットマンカメラがあるから行かないかと誘われました。ワットマンカメラは、CP+に合わせたのか、なんと30%オフキャンペーンをやっており、いいな、と思いつつ見ていたら、ありました、ステレオカメラ。

 

よく、カメラと目が合ったと言いますが、本当に目が合った気がしました。

ロボットのような、ステレオロッカです。

 

ステレオロッカ、キャップ装着。眼鏡みたいですね。

 

このステレオロッカ、ブローニーフィルムを入れて使います。

正直、迷いました。なぜなら、特殊フォーマットに手を出しては、一回撮ってなんだか満足し、防湿箱にしまい込んでいるカメラがあるということを、よくよく知っていたからです。みなさんにも覚えがあるはず。例えばパノラマカメラとか……、ロモキノとか……。
 

ひいらぎよ、よくよく考えるべし、と思いつつ上の空でご飯を食べて頭を冷やし、それでもやっぱり欲しいなと、またワットマンカメラに戻りました。

 

ステレオロッカ背面。窓を遮光しています。

 

赤窓二つ。

 

見てください、ステレオロッカの後ろになぜか赤窓が二つ。これ、なんで赤窓が二つあるんだろう? と不思議に思っていたら、これ、まず下の赤窓に1が来て撮影し、次に上の赤窓に1がくるまで巻き上げるようになっています。この通りに撮影すると、なんということでしょう。6×6フォーマットの中に2枚2組、計4枚の写真が写るようになっているのです。これは例によって、赤羽のマリア堂さんに現像とスキャンをお願いしたものですが、これならお店スキャンでも対応してもらえて、たいへんありがたい。

 

駅のホーム。このように2枚2組で写ります。得した気分です。(ステレオロッカ、Ektar100)

 

ステレオロッカを逆から見ると、ロボットみたいで本当にかわいい。

 

このカメラ、逆さにすると鼻水を垂らした子供みたいな顔になって可愛いのですが、唸ったのはその描写です。さすがにプラスチックレンズでf8、シャッタースピードも固定ですので、室内では暗すぎてだめでしたが、日中なら曇りでもよく写りました。オモチャっぽいのに、意外に写るなと思いませんか? わたくし、びっくりして、すっかりこのステレオロッカが好きになりました。

 

ステレオロッカの街角。(ステレオロッカ、Ektar100)

 

よろしければ、より目にして立体視してみてください。わたしはあまり器用ではないので、立体視の方法で交差法しかできませんが、これを交差法で見ると、ちゃんと奥行きが出たりするので面白いですよ。

 

ステレオ写真は、いままでにも小さなブームが来て、今度こそ流行る! と業界は意気込むも、日本ではあまり流行らなかったという経緯があると、日本カメラ博物館の学芸員さんに聞いたことがあります。
たしかに、外国ではけっこうステレオカメラが使われていて、JCIIミュージアムの展示でもあったように、作品群として残っているようですね(そして、ちょっといかがわしい内容の写真もステレオ写真で残っているとか……) 

 

このステレオロッカは1950年代、ステレオカメラブームの時に作られたカメラのようです。当時の広告を見ましたが、子供用の懸賞の賞品にもなっていたようでした。外観も可愛いのは、もしかして子供向けだったということもあるかもしれません。わたしはステレオロッカの外観も、撮れる写真もすっかり気に入り、やはり軽率に中古カメラは買うべき。買わなければわからなかったこともある、と思うようになりました。これからも愛用します。可愛いステレオロッカくん。

 

ステレオロッカ内部パーツ。内部パーツはプラスチックではなく金属です。

 

神社。(ステレオロッカ、Ektar100)立体に見えましたか?

 

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する