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本日のマイカメラ

第2話 イントレピッドカメラのチェキ化計画(ロモ グラフロック)

2021/12/21
柊サナカ

イントレピッドカメラ。赤じゃばらが可愛いです。

 

ところで大判カメラって可愛いですよね。ピント合わせのときに布をかぶったりするのも、何か趣深いですし。身も蓋もない言い方ですが、なんというか、撮っている自分がかっこいい。
これを読んでいらっしゃる読者のみなさまはカメラ好きな方が多いと思いますので、説明は不要だと思いますが、一応。

 

一般的に、いわゆるフィルムと聞いて思い浮かべるのは、あの殻みたいなパトローネに入ったフィルムだと思います。そのパトローネに入っているのが35ミリフィルム。カメラの中でも、このフィルムを使うカメラの割合が多いです。

それより少しサイズが大きくて、巻物のようになったフィルム。これが120フィルム(ブローニーフィルム)ですね。これを使うカメラは中判カメラと呼ばれます。ハッセルブラッドとかマキナとか、二眼レフなども中判カメラです。

 

その次に、大判カメラが来るのですが、大判カメラのフィルムがどうなっているのかを説明すると、巻いてはおらず、ぺらっとした一枚のシートフィルムです。4×5サイズで、だいたいハガキより少し小さいサイズくらい(10センチ×12.5センチ)。この一枚のフィルムをどう使うかというと、暗室の中で、フィルムホルダーという板のような器具に挟んで、上から遮光のための薄い蓋(引き蓋)をして持ち運びます。ホルダーには裏表入るので、一枚のホルダーに二枚のフィルムを装填できます。

 

あの布をかぶって大判カメラで撮影してみたい、と思ってすぐに、イギリスのサイトで、4×5サイズのイントレピッドカメラを注文していました。わたくし衝動で生きております。(このほか8×10、というもっと大きなサイズのフィルムもあります。未知の世界です)ホームページ自体は英語ですが、やりとりは日本の通販と変わりません。日本への発送も対応しています。

(→HPはこちら https://intrepidcamera.co.uk/

 

イントレピッドカメラの可愛いところは、蛇腹の色が黒だけでなく、グリーンや紺などカラフルな色を選べるところ。わたしはビビッドな赤にしました。ご覧ください。見ているだけで素敵ですよね。届いて鼻息荒く組み立てて、フィルムもセットしたものの。

 

このイントレピッドカメラ、木製なので、ジナーなどの金属製の大判カメラと比べると、まだそこまで重くはないのですが、わたくし運搬のことをまったく考えておりませんでした。まず、イントレピッドカメラ本体、大判レンズ、シャッターレリーズ、フィルムホルダー五枚程度、ピントグラス、ピントルーペ、露出計、かぶる布である冠布、一つ一つは軽くても全部揃えば、結構な重さとかさになります。そして忘れてはならないのが三脚。カメラ自体が大きいので、倒れないように、重量に対応した三脚が要るのです。


これらをすべて準備すると、荷物でぎゅうぎゅうになったリュックを背負い、三脚も斜めに背負って、二泊旅行くらいの大荷物になります。車が運転できたらいいのですが、ペーパードライバーの上に、東京で運転するのは怖い。というわけで、二泊旅行くらいの大荷物を背負って、よろよろしながら電車とバスを乗り継いで撮影地へ……。


でも、大判カメラは、冠布をかぶって薄暗い中、息を詰めるようにしてピントを合わせていくと、それまでぼんやりしていたものが、ある箇所でいきなり鮮明になって、大判カメラの箱の中に景色を今閉じ込めたんだ!みたいな不思議な高揚感があります。ひみつ道具みたいで楽しく、大判カメラ、いいなあと心から思えます。

 

そんな大荷物でやっと到着して、カメラを組み立て、さあようやく撮影だ、ジャングルジムに当たる西日と影を撮ろう……と思ったら、「測量ですか」といろんな人に聞かれたり、かと思えば謎の紳士が謎体操第一を始めて、謎体操第五くらいになっても、カメラの前からずっとどいてくれなかったり。(撮るので、ちょっとそこどいてくださいよ、とかいうのも傲慢よな……)と思いつつ、体操の終わりをひたすら待っていたら、すっかり日が傾いたりということもありました。ええ、フィルムはホルダーにセットした、たったの十枚のみです。


運搬以外に、困ったのは現像もです。フィルムもこのとおり大きいので、Yankeeの現像タンクは箱のよう。現像液も1リットル以上使います。攪拌するのにも、筋トレみたいな大仕事。(JOBOからも大判専用のタンクと自動攪拌システムが出ているようですが、かなりお高いそう。なのでひたすら重い箱を攪拌しています) 


イントレピッドはすごく可愛いカメラですし、4×5も撮っていてとても楽しいのですが、正直、自分のキャパシティを超えるカメラで、数回撮って「よし」と満足し、防湿ケースの中にしまい込んだままになっていました。どんなに好きなカメラでも、自分のライフスタイルに合う、合わないはあるものです。愛着もあるので売りたくはないのですが、どうにも扱いが大変。困ったな……、と思っていると、ロモから耳寄りな情報が。
 
なんと大判カメラ用(4×5)の、インスタントバックが発売されるというのです。フィルムはチェキのフィルム、富士フイルム インスタックスワイドで、その場で写真が見られるとか。4×5のフィルムの購入も大変なら、現像も何かと大変だったものが、手に入りやすいインスタックスワイドのフィルムが使えるようになり、これで現像問題は一気に解決しそう。インスタックスワイドは、通常のチェキのフィルムのサイズよりずっと大きいので、見応えのある写真が撮れます。4×5のレンズの描写で、どんな写真が撮れるのでしょう。

 

大判カメラをチェキ化できる「ロモ グラフロック」


さっそく申し込んで待つこと数ヶ月。ようやく4×5をチェキ化できる「ロモ グラフロック」が届きました。
ロモ グラフロック自体はインスタントカメラの雰囲気です。引き蓋もあり、大判のフィルムホルダーを分厚くしたもの、というような感じがします。電池も単三電池四本と、それなりに電力を消費する様子。
 
このロモの新システムを、我がイントレピッドカメラに装着します。一応、取り付けることはできたのですが、わたしのイントレピッドカメラが旧型の、ゴム紐で固定するタイプということもあり、すぐ外れそうで心もとない。見た目が悪いですが、補強のために黒マスキングテープで数カ所留めました。(註:現在のイントレピッドカメラは、リニューアルして金具でしっかり留められるタイプのようです。詳しくはイントレピッドカメラのホームページをご覧ください)

 

イントレピッドカメラと、ロモ グラフロックを並べてみました。厚みがあります。

 

あとは、インスタントカメラとはいえ、大判の撮影とほとんど同じです。ピント合わせ→フィルムホルダーの代わりに、ロモグラフロックに交換する→引き板を外してからシャッターを切る→ロモグラフロックのスイッチを押して、インスタントフィルムを排出→数分待つと像が浮かび上がるという仕組みです。
最初は光が入ったりして数枚分失敗しましたが、コツを掴むと面白い。

 

装着したところ。

 

初回、出てきたフィルムが金具に引っかかり、つっかい棒のように押して光が入り失敗したので、最初の一枚で出てくる遮光の紙をとっておいて、それをガイドのようにして撮影すると、金具に引っかかって失敗することがないようです。
これでわたしの大判カメラ、イントレピッドカメラが、無事にチェキ化できました。
こんな可愛いチェキはほかにありません。(かさばりますが)

 

撮れたフィルム。

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