top コラム本日のマイカメラ第1話 本日のお題「リコーGR1」

本日のマイカメラ

第1話 本日のお題「リコーGR1」

2021/11/23
柊サナカ

昨今の、コンタックスT2などのコンパクトカメラ人気にひっぱられて、GRシリーズのフィルム機であるGR1も、値段が上がっているとのこと。じゃあ柊はこのカメラをいつ買ったのか、と問われたら、わたし自身は買っておりません。家にあったのです。


このリコーGR1、もともとは夫の持ち物でしたが、今は(ずっとしまっておくとカビが生えるかもしれないから、定期的に使った方が良いかもよ)などと言いつつ、よく持ち出しています。夫は、結婚前はカメラ好きで(フジ派)、三脚にデジタルカメラを据えて花の群生や、藤の大木などを撮りに行くという、渋めの写真趣味でしたが、結婚後もデジタルカメラで、子どもたちをよく撮っていました。
ところがカメラを肩からかけていたとき、振り向いた拍子に振り子のようにカメラが揺れ、当時四歳だった娘の額にガッチーン!と跳ね返るほどにヒット。ギャーンと泣いた娘が「パパ大嫌い!」と泣き叫んで大変なことに。
はじめての「パパ大嫌い!」がそんなにショックだったのかどうか、その頃から夫はカメラを持ち出すのをやめて、撮ることもあまりなくなってしまいました。そこで残ったカメラのコレクションは、我が懐に……

GR1,f8,フジカラーC200

 

そんなこんなで夫のコレクションの中にあったGR1は、いま、私が使っています。GRシリーズは元々好きで、GRデジタルⅡを昔から愛用していました。GRシリーズは鞄に入れて、写真日記のように毎日撮るのに向いており、今もペンとメモ帳代わりにGRⅢを毎日持ち歩いています。帰省や旅行には絶対に欠かせない、定番カメラとなりました。小説の舞台なども、資料として、書く前に何百枚と写真を撮りまくります。

 

私自身、写真を撮りにいく、いわゆる撮影のための外出なら、カメラ何台かとフィルムにレンズにといろいろ準備していきますし、どんなに重かろうが、かさばろうが構わないのですが、日常でいいなと思ったとき、撮りたいことも多くあります。そんなとき、カメラがいつもの鞄に入るか、入らないかは大問題。レンズのキャップもない方が気楽でいいし、全体の形としても、出っ張った部分がなければ、鞄にもうまく収まります。いつもの鞄にフィルム、インナークッション、GR1の気楽さ。
そういう点でも、GR1(およびGRシリーズ)は、完全に日常に溶け込むカメラという感じがして好きです。毎朝のジョギングにだって持って行っています。

 

カメラを持っていないときに限って、ものすごくいい光が来ていたり、二羽とも白いハトだったり、女子中学生二人が、土手でウクレレを練習していたり、そういった、いい瞬間に立ち会っているときに、撮り逃した!となったら悔しくて眠れないじゃないですか。そうそう一眼レフは持ち歩いていないですし。(ウクレレを練習していた二人は、いまだに思い出します…… ほんとうに爽やかな光景だったのです。まあ、カメラを持っていても、撮らせてもらえるかどうかは別の話ですが)

 

GR1,f5.6,フジカラーC200 

 

素晴らしいのはコンパクトな外見だけじゃなくて、GR1には、使ってみると実に気の利いた仕掛けがあります。
わたしはカメラを複数台、日替わりで使っているために、フィルムを入れたまま、たまに間違ってうっかり裏蓋を開けてしまうことがあります。ギャッ!とか言って光の速さで閉めるのですが、大抵、ダメになりますね……
このGR1に関しては、まずフィルムを入れると、最初に全部巻き取ってくれます。最初にフィルムを入れたとき、ジーという謎の音が止まらず、何が起こったのかわからなくて、何の故障かとおろおろしました。GR1は、一枚撮影するたびに、フィルムのパトローネの中に、撮影した分を収めていくタイプなのです。
途中で裏蓋が開いちゃった(もしくは間違って開けてしまった)というときも、撮影した分は、フィルムのパトローネの中なので無事です。何があっても、撮った写真は残すんだという心意気、なんだかプロっぽいですね。

 

 

GR1,f8,フジカラーC200

 

GR1は、写りも好きです。GRといえばの、GRレンズ28ミリ、F2.8。ものすごくシャープな写りでありながら、影の様子や、いろいろなものの質感とかが、ヘアサロンで出てくるおしゃれ雑誌で、こっちを見ていないモデルの写っている雰囲気のような、机の上のリンゴ一つ撮ったとしても、そのままポストカードにしたくなるような、味のある感じに写ります。
28ミリの広角、空を入れて写したときの、空の青の深さとかも好きですね。わたくしの日常はいたって地味なので、そうそう映えるものもないのですが、それでも、そんな日常も、「この写真、壁に飾ろうかな」と、ちょっとばかり特別な感じに写るのが、GR1ではないかと。

 

GR1,f4,コダック エクタ―100

 

このGR1では、ポジフィルムもよく撮ります。ポジフィルムはフィルム自体もお高い上に、現像代も高く、露出を間違うとうまく写らないので、気合いが入ります。間違いのないカメラで使いたいですよね。このGR1、上部左に露出補正ダイヤルがついており、撮影で一段落として、または一段上げて、ということが簡単にできます。ぜったいに外せないものは、まず適正露出で撮り、+1、ー1、というように撮ったりもしています。

 

GR1,f8,コダック エクタ―100 

 

ところで、わたしはモノクロ自家現像もするのですが、自家現像の時は、あとでフィルムをリールに巻けるように、いつも巻き戻しで力加減して、パトローネからフィルムの先(ベロ)を出した状態で、フィルムを取り出すのが常です。なぜって、フィルムの先を出すフィルムピッカーが、わたしは大の苦手なので……。巻き戻しで勢い余ってベロが中に入ってしまったときには、とても困ります。何度やってもフィルムの先が出てこず、ブツブツ言いながらパトローネをこじあけることも。 
GR1は通常、フィルムが自動できっちり巻き戻った状態で出てきますが、横に小さな穴(フィルム巻き戻しボタン)がついており、先の尖ったボールペンなどで押すと、パトローネからベロが出た状態で巻き戻してくれます。こういうところ、些細なところですが、すごくユーザー思いの機能だなと……助かります。

 

GRファンなので、GR帯留 

 

このGR1に関しては、わたしの愛機もそうなのですが、液晶が薄くなってくる持病があるようです。そこは1996年の販売から年数がかなり経っていますので、その点は仕方がないかなと思います。これからも、なんでもない毎日を撮るために、大事に使っていきたいです。

GR1(及びリコーGRシリーズのフィルム機)を愛用している皆さん、どのくらいいらっしゃるのでしょう。読者の中にいらっしゃいますか。
もしいらしたら、愛機自慢や撮った作品など、ぜひいろいろ教えてください。

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する