ライカM4につけてみました。しっくりきますね。
シネレンズ、って良いと思いませんか。
デジタル全盛のこのご時世ですが、最近、フィルムで映画を撮る映画監督が以前より増えてきましたよね。最近も「哀れなるものたち」(→ https://photoandculture-tokyo.com/contents.php?i=3587)などを観てきたところです。フィルム+シネレンズの描写にすっかりやられました。わたしはもうずっとシネレンズが欲しくてたまらないのです。
じゃあシネレンズを買おうと思ったら、Cマウントのものがわりに手に入りやすいのですが、それらは映画用16ミリフィルムに合わせたサイズ。どうしても、周囲がけられて、小さな丸い穴を覗いた写真のようになってしまいます。そこだけ切り出して使うのも、せっかくの画質を落としてしまうようで、気が引けます。
フルサイズのセンサーサイズに合うようなものがないかな……と思って探していると、Cooke Speed Panchro Series II というレンズを、ライカMマウントに改造したものを見つけました。1940年代のレンズで、値段はたいていASKとなっています。怖くて聞けません。ハリウッドで使われていたという名作レンズで、数も少ないらしく、eBayでもあまり出て来ない様子。それはまあ、80年以上前のレンズですものね……。
でも、このシネレンズ、Cooke Speed Panchro Series II 50mm f/2を、ライカMモノクロームとかライカM3に付けて、当時の名画のように、いろいろ撮れたらなあと夢見ます。正直欲しい。欲しいですが、みなさんの奥さんや夫がある日突然、「今日、ちょっとライカMモノクロームとCooke Speed Panchro Series II 50mm f/2を買ってきたよ」となれば、家族会議がはじまりませんか?
LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII 美しい佇まい。特徴的なフォーカスレバーがとても使いやすい。
そんな折に、ちょうど周八枚でおなじみのLIGHT LENS LABで、シネレンズも作っているという情報を得ました。周さん……! 我らがカメラ好きの願いをわかっていらっしゃる! そう、周八枚と同じように、この貴重なシネレンズCooke Speed Panchro Series II 50mm f/2を分析、当時のオリジナルの設計のまま、現代の技術で蘇らせたということです。その名もLIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII 。
外観で特徴的なのはこのフォーカスレバー。ちょっとウサギの耳のようですよね。これはオリジナルもこの形です。こんな形のフォーカスレバーは初めてで、おっかなびっくり触りましたが、これはいい。映画では素早くフォーカスを合わせる必要があるためなのか、本当に操作しやすいのです。手持ちのレンズのフォーカスレバーを全部この形にしてもいいくらいです。(好みじゃない人向けに、付け替えもできるように、別パーツもありました)
真鍮のボディは手触りと動きに高級感があって、スルスルリと動きます。この際、オリジナルのCooke Speed Panchro Series II 50mm f/2も触ってみたいですが、なにぶん古いレンズなので、こんな風になめらかには動かないのではないかと思います。
見た感じ、大きくて重いのかな、と考えていましたが、このLIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII は、M3につけてもSIGMA fpにつけてもバランスがいい。毎日のように使っていましたが、負担のない大きさです。付属のフードもいい質感です。
専用フードをつけてもかっこいい。
上から見たところもいい感じです。
例によって、わたくしが毎日、大喜びで実際に撮ってみてこんな感じというのを、一枚一枚、普段より写真多めでお伝えしていきますね。まずはライカM4、コダックのフィルム、ポートラ160で撮影。
(写真1)LeicaM4・LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII・絞りF8・1/500秒・Kodak Portra160
ええ、なんでもないタンポポです。そしてなんでもない路地です。それでも、映画のはじまりのように見えてきませんか? なんでしょう、この光がそう見せるのでしょうか。いきなりドラマチックになってしまいましたよ。こんなに主人公然としたタンポポを撮ったのは、はじめてです。
(写真2)LeicaM4・LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII・絞りF8・1/ 1000秒・Kodak Portra160
ツタに覆われた家と扉。この扉に物語があるように見えてきました。ちょっとアンダー気味ですが、植物の一つ一つが光っています。
(写真3)LeicaM4・LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII・絞りF8・1/ 100秒・Kodak Portra160
夕暮れの自転車とミラー。ミラーの中にご注目、ある夕暮れ、歩いてくるふたりの物語が始まりそう。
(写真4)LeicaM4・LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII・絞りF8・1/ 1000秒・Kodak Portra160
写真2の別カットで、今度は人を入れて。背景の緑はどこまでもくっきりと、歩く人たちも何か深遠な目的のために行動しているように見えます。
(写真5)LeicaM4・LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII・絞りF4・1/500秒・Kodak Portra160
今度は絞りを開けて使ってみます。暖簾にフォーカスが当たると、背景の人はぼんやり。
わたしはかねてから、そのレンズが使われていた時代のもの――時代がフィルムならフィルム、デジタルならデジタルで合わせると相性がいいのではないのかと思っていました。今回のLIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPIIは、レンズ自体が作られたのは現代ですが、設計思想は1940年代ということで、フィルムで撮ったときに、ハッとなるようなドラマチックな雰囲気が出るなあと、撮って驚きました。
わたしはSIGMA fpのシンプルなデザインがとても好きなのですが、LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPIIはよく似合いますね。
こんどはフードを付けたところです。いいでしょう?
とはいえ、作られたのは現代。それなら、現代のミラーレスカメラにも合うはずでは、と考え、今度はSIGMA fpにつけてみました。
(写真6)SIGMA fp・LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII・絞りF4・1/30秒・ISO1250
路地のちょうちん。後ろの夜景はふわっとなりました。ちょうちんはまさに今そこにあって、光を発しているようにくっきり。
(写真7)SIGMA fp・LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII・絞りF2・1/80秒・ISO100
今度は開放で。白い花がとろけて、ちょっとにじんでいるようなのが好きです。後ろの暗いところとの遠近感と言うか、奥行きがあるような気がします。
(写真8)SIGMA fp・LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII・絞りF5・1/30秒・ISO320
わたしの好きな東十条商店街を上から。商店街の明かりが前に、後ろに俯瞰した道が広がり、立体感ある写りになりました。
(写真9)SIGMA fp・LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII・絞りF8・1/400秒・ISO100
フレアが出ましたが、こういう形で出るのだな、と驚きました。色も形も珍しいような……?
(写真10)SIGMA fp・LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII・絞りF4・1/1000・ISO100
ここにピントがきてほしいなあ、というところにぴったり来て、あとはスッととろけるのはいいですね。ただの信号機なんですが、事件の一秒前みたいな雰囲気になりました。
映画のように写真を撮ってみたい。シネレンズが気になるけれど、どれを選んだものか、と思っている人には、LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII、周クックは、現代の技術でよみがえった名作シネレンズとして最適解ではないでしょうか。単なるカメラ好きの作家であるわたしが撮ってこの感じなら、もっとすごい人が撮ったらいったいどうなってしまうのか……? みなさんもドラマチックな一枚を。
- LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 SPII(周クック)
- マウント:ライカM
- 焦点距離:50mm
フォーカス:MF(マニュアルフォーカス)
レンズ構成:5群7枚
対応撮像画面サイズ:35mmフルサイズ
最短撮影距離:0.7m
絞り:F2-F22
絞り羽根:11枚
フィルター径:43mm
付属品:専用レンズフード、UVフィルター(内蔵)、交換用フォーカスレバー
サイズ:Φ51×55 mm(突起部およびマウント部除く)
質量:約 350g- 取り扱い=焦点工房
- https://www.stkb.jp/shopdetail/000000001900/
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