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本日のマイカメラ

第11話 コンタックスT

2022/08/30
柊サナカ

好きなカメラはいろいろありますが、わたしは、レンズキャップを必要としないタイプのカメラが好きです。GR1やローライA26もそうだし、このコンタックスTもそう。レンズが格納されるギミックなんかは、見ていると気持ちよく、ついつい眺めてしまいます。

 

以前ライカのキャップを道で落としてしまい、どんな運命のいたずらか、坂を車輪のようにどこまでも転がっていってしまって、必死で追いかけた思い出があります。まあ、おむすびころりんくらいなら、(まあおむすびくらいがまんしよう)と思えますが、ライカの純正キャップころりんなら、死んでも追いかけます。
心臓に悪かったので、それからは純正のキャップはあまり持ち出さないことにしました。なのでキャップいらずのカメラはありがたいのです。

 

しかし、コンタックスといえば、コンタックスT2の値上がりは凄まじいですね。わたしが欲しい欲しいと思ったのはもう6年くらい前ですが、当時は5、6万円もあれば買えたくらいでした。あのとき3台くらい買っておけばと思うくらいの値上がりです。10万を切っていると(お買い得かな?)と思うほどのお値段。あっこれお安い! と思ったら、良く見たら裏蓋だけだったりして、(さすがコンタックスT2。裏蓋も高いな)と思ったのでした。

 

そのコンタックスの初代である、コンタックスT。このカメラは思い出深く、かつての「日本カメラ」で、赤城耕一先生と、中古カメラ店を巡ろうという企画の時に買ったものです。
今思えば、カメラ好きが、中古カメラ店を何店も練り歩くわけですから、面白いものばかり見てしまって、赤城先生のトークも面白く、原稿料よりもガンガン買いまくってしまう魔の仕事でありました。二店目三店目と見ていくうちに、値段のゼロとかがぐるぐる回り出して、これも仕事だから~、と何かのリミッターが外れてしまいます。

 

そのカメラ店巡りで、ラッキーカメラのウインドウを外から見ていたときに、〔現状渡し〕と但し書きが付いているコンタックスTを見つけました。わたしがコンタックスT2を使いたかったのも、ツァイスのゾナーT* 38mm F2.8を使ってみたかったためです。
このコンタックスT、なぜ〔現状渡し〕なのかな? と思って見ていたら、カウンターの液晶不良とのこと。しかも格安。赤城先生も手に取ってみて、目で(これは買いですよ)とおっしゃるので、(ですよね)と目で応え、「すみませんコンビニは近くに? はい向かいのなるほどハイハイ、ちょっと行って参ります!」と小走りで行ってきて、お札を握りしめながら帰ってきて購入したのがこのコンタックスTです。

 

赤いシャッターボタンは人工サファイヤ。シャッターボタンの材質なんて特に気にしたこともありませんでしたが、これは”宝石”なんだと思うと、急に一枚一枚、宝石のありがたみを感じるような気がします。何気に丸じゃないというのも、おしゃれでいいですよね。
コンタックスT初代は、あまり店頭で見かけないような気もしますが、T2よりは相場がお安いように思います。

 

赤い人造宝石シャッターにご注目。

 

コンタックスTもGR1も、こういったコンパクトカメラは、カウンター等の液晶部分に不調があるものが多いです。カウンター不調は不便かなと思いきや、いざ使ってみると、意外と平気だったので、液晶部分の不備があっても、他の状態を見て、お安ければ買いだと思います。

 

コンパクトなカメラだとしても、自分の撮る意思を反映させられるカメラってよくないですか。一瞬、目測かと思いきや、コンタックスTは二重像合致式で、コンパクトながらも、撮る楽しみが充分にあるのも良い点です。
写りはこの通り。色がこってりしていて好きです。このレンズは、特に赤の発色がいいとよく聞きます。

 

川沿い(コンタックスT、f8、fujiC200)

 

最近、暑いのもあって、身の回りのものをコンパクトに、鞄も小さめのものを持つことが多くなりました。そんな小さな鞄にも、余裕で入るカメラはやはり嬉しいですね。レンズポーチにもすっぽり入ります。ストラップもコンパクトにしようと思い、輪っかに指を通すタイプの、フィンガーストラップにしました。

 

大きさを比べるためにフィルム箱を置いてみました。本当にコンパクトですよね。

 

コンタックスT、本当におすすめですよ、みなさんどうぞ! と言いたいところなのですが、このコンタックスT、わたしの持っている中で、一番フィルム装填をしくじったカメラです。”柊や、わたくしを使えるものなら使ってみなさい”というような、貴婦人のような気位の高さを感じます。
どんなカメラでも、1回失敗すれば2回目はまあまあ大丈夫な中、続けて3回連続フィルム装填を失敗したときには、凹んでふて寝しました。最初にフィルムをうまく噛ませるのが難しくて……。今ではそれなりにコツをつかんだので、もう失敗はしません。ベテラン勢にはおすすめですが、フィルムカメラを持ったことのない方の、最初のカメラとしては、積極的におすすめしません。
とはいえ持つ喜び、撮る喜びのあるこのコンタックスT、鞄の中に一台入れておくだけで、町歩きが楽しみになります。

 

 

ずいぶん泣かされたフィルム巻き上げ機構。

 

雨上がり(コンタックスT、f8、fujiC200)

 

草(コンタックスT、f5、fujiC200)

 

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