みなさんは、「あ、そうだ。フィルムカメラ始めたいんだけど、何が良いですか?」と聞かれたらどうしますか。
わたしの場合は、(そうかこの人はカメラが……、喜ばしいことだ。カメラを始めようという人に、どんなカメラがいいだろう。あまり高いものをおすすめして、そんなに高いの? やっぱり無理かな、となっては責任重大だ。かといってあまり安くて、持つ喜びがないものだと、なんだ、こんな感じなのかとなって、はまらないかもしれない。持つならやはり専門店で整備したものを持って欲しいし、写りも良いものがいいだろう。この人は、鞄はいつもどんなものを持っている? 持ち物が多くてもいいようなタイプだろうか。趣味にどのくらい情熱をかけるタイプなのか。ライフスタイルはどんな感じなんだろう。一概にカメラを始めたいと言っても、少しやってみたいのか、いっぱい写真を撮ってみたいのかわからないから、おしつけがましくなってしまっては本末転倒)と、急に陰気な顔で黙って、一点を見つめたまま、いろいろフル回転で考えてしまうので、「あ、そういえば」と他の話題に変わってしまうこともたびたびあります。
さんざん悩んで「持ってみたときに、良さそうだなと思ったカメラがいいのでは?」などと、曖昧で無難な答えをひねり出すこと数回。
むやみに高騰しているものをすすめるのも心が痛むので、そこまで高騰していないもの。でも写りが良いもの。初心者にもフィルム装填がしやすいもの。
――となると、わたしはアグフアオプティマ1035はどうかな、と思うのです。
わたし自身、このアグフアオプティマ1035は、中古カメラ市で早田カメラさんに、「こんなカメラがありますよ」とおすすめされたことがきっかけで知りました。ピントは目測なのですが、目測の目盛りが人マーク、二人の人マーク、山マークと可愛い。その日は悩みつつ、いったん帰りました。その次の日にも行って悩んで帰り、また次の日行って悩みつつエイヤッとばかりに買ったのです。なんでそんなに悩んだかというと、持って本当に楽しいカメラなのか? ということが心配で……。
でもこのアグフアオプティマ、持ってみると、良さがじわじわと染みてくる良いカメラなのです。まず、ファインダー。めちゃくちゃ明るくて見やすい。たぶん、覗いてみた人はビックリするんじゃないかと思います。明るくて見やすい大きなファインダーっていいですよね。買って帰りながら撮り歩き、あまりにファインダーが見やすくて、ファインダーからの景色をスマホのカメラで撮ったくらいです。
デザインも良い。ドイツの機能美! みなさん大好きアグフアのマークがついているだけではありません。この形、なんか似てるな……と思って愛機マキナ670の隣に並べたら、親子みたいで大変良い。知らないうちに生まれて増えました、みたいな趣があります。
シャッターは赤丸ボタン。大きくて押しやすいし、上から見たときにもアクセントになってとても好きです。シャッター音は独特で、「ギュッ」とか「ジュッ」とか言います。何かの鳴き声っぽいです。
ファインダーからの景色。あまりに綺麗だったので、買って帰りながら、ホームで撮った一枚です。
プラウベルマキナ670と並べたら、親子のようなアグフアオプティマ1035。
アグフアオプティマ1035は上部からも可愛い。
古いカメラを買ったら、黒いスポンジみたいなモロモロが取れてきて困ったという経験はありませんか。モルト、経年劣化でボロボロになりがちですよね。このアグフアオプティマ、モルトを使っていないのもいいです。
そして、いちばん初心者泣かせなのがフィルム装填。わたしはこれまで何本失敗して、行きつけの写真店さんを困らせたか。「何も写っていなかったですね……」「ギャアー!」と申し訳なさそうにフィルムが戻ってくるときの悲しみ。あんな経験は、カメラを持ち始めた人には味わって欲しくないです。今日び、フィルムも高いので……。
このアグフアオプティマ、すごいのが、フィルムの先を差し込むだけ。それでもうフィルム装填がOKなイージーローディング機構搭載のカメラなのです。撮影したフィルムが巻き取られていく先も、フィルムのパトローネのようになっていて、途中で万が一開けても、撮った分のフィルムは無事です。このアグフアオプティマでは、わたしもさすがに一度も失敗はありません。
フィルムカメラを知っている世代だったら、撮影後のフィルムに光は厳禁だと言うことは重々おわかりだと思いますが、フィルムカメラを知らない世代は、実に軽やかに裏蓋を開けてしまうこともあるといいます。最初聞いたときは、まさか、と思っていましたが、本当だそうです。(そうですよね、そもそもフィルム自体が馴染みのないものですから……)
そういった世代にも、アグフアオプティマ1035は、おすすめなカメラではないかと思います。
フィルム巻き戻しも独特です。中身はどうなっているんでしょう。巻き戻しボタンを押すと、巻き上げレバーが突然、巻き戻しレバーに変わり、そのまま、巻き上げと同じ動作でフィルムを戻していけるようになります。これが、ミリミリ(巻き戻すときの音)ミリミリ、まだ終わらないな、ミリミリ……ミリミリ……ミリミリ……と延々巻いていく。フィルムってけっこう長かったんだなあと、しみじみするくらいの巻き戻しなのですが、それでも、どんな人でも失敗しないようにと、よく考えてある仕組みだなと思います。
アグフアオプティマ1035内部の様子。イージーローディング機構をご覧ください。
肝心の写りなのですが、レンズがゾリター40ミリF2.8です。わたしは、このアグフアオプティマ、青空を撮ったときが、特にとてもいい感じに写るなあと思っているのです。良い感じの青。なので、わたしはこのアグフアオプティマを持つときは、カラーフィルムでよく空を撮ります。
さすが老舗の名カメラ店は、その人に合いそうなカメラがよくわかるのだな……と思いました。初心者こそカメラ店に行ってみてください、カメラを触って何十年のベテランが選ぶ、ぴったりのカメラが見つかるのではと思います。アグフアオプティマ、これからも愛用します。
青空。(アグフアオプティマ1035、フジC200)
猫じゃらし。(アグフアオプティマ1035、フジC200)
雪の日(アグフアオプティマ1035、フジC200)
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