top コラム本日のマイカメラ第37話 ライカⅢf

本日のマイカメラ

第37話 ライカⅢf

2024/10/08
柊サナカ

愛機ライカⅢf。使っていて楽しいです。

 

毎回カメラ市に出かけていっては、何か買ったり買わなかったりしているわたしですが、カメラ市だけを定点観測しているだけでも、社会の景気とか空気みたいなのがなんとなくわかるような気がします。
 

ある年のカメラ市は外国人、特に中国からのお客さんがすごく多かったり、女性でキャリーケースを引いた人がたくさんいた年もありました。(ちなみに今年のカメラ市は中国からのお客さんはぐっと減り、タイからのお客さんが多かったそう。世相ですね)
 

相場もどんどん変わっていき、高くなったままでずっと値段が変わらないコンタックスT3などもあれば、いくぶん値段が落ち着いてきたカメラもあります。
 

新品のデジタルのライカは百十万円などという価格です。それに比べると、バルナックライカの値段は落ち着いているように思います。よかったら、このページにもリンクがあります、J-カメラで調べてみてください。
 

状態にもよりますが、下は二万円台から見つけられると思います。ちょっとびっくりですよね。お読みになって、(バルナックライカって、そんなに安いの?)と思われた方もいらっしゃることでしょう。ただ、整備済みで、状態も良く……となると、二万円からは多少かかります。最初の一台はぜひ整備済み、保証ありのものをお勧めします。

 

ファインダーをつけたところ。精密機械の凝縮された感じが好きです。 

 

わたしが最初に手に入れたライカはライカⅢf、これは赤城耕一先生と、某誌のお買い物企画で購入した物で、思い入れが特にあります。
 

わたしはこのバルナックライカの佇まいがとにかく好きで、拙著「谷中レトロカメラ店の謎日和」でもヒロインのカメラとして出したくらいです。(ちなみに、Ⅲfでセルフシャッターなしのものでした)
 
歴史的に重要、ということもありますが、機能美といいますか(ああ、首から提げてみたい……)と思ったのですね。赤城先生は、使いやすさと、当時まだライカを触ったことのない、わたしのカメラの経験を元に、別のM型ライカをお勧めしてくださいましたが、最後に何を買うか決めるときに、「じゃあ買います……Ⅲfを!」と言い、その場にいたみなさんが(話を聞けよ!)という空気になっていたことも懐かしい思い出です。
 

Ⅲfを使ってみて、手に馴染む感じも、手触りも、シャッターの感触も大好きだなと。
 

ではなぜ、こんなにバルナックライカが安いのか……それは、手放す方が多いからかも知れません。こんな一生物の素敵なカメラをなぜ、と思いますよね。みなさん生涯使い続けたいでしょうし、わたしもそう強く思っていますが、裏面のファインダーをご覧ください。二個あって、左側の小窓があります。この窓、大豆より小さいです。なんというか、リコーダーを押さえる穴みたいな穴を覗いて、ピントを合わせます。二重になっている像がピタッ! と合わさったとき、この小穴から見える世界はちょっと夢のように楽しいのですが、たぶん老眼が進むと物理的にピント合わせが難しくなる……。

 

裏面をどうぞ。この裏の、小穴の左がピント合わせ、小穴の右がファインダーです。 

 

わたしはそうなったら目測カメラとして使いますし、広角12ミリなどを付けて、ピント合わせをしなくていいようにするつもりですが、次の世代に譲りたいと考える人が出てくるのも、わかる気がします。ちなみに、電子部品がありませんので、オーバーホールをしつつ長く使えます。
 

操作も楽しいし美しいし、わたしは気に入っているのですが、もう一つの気になる点としてはフィルム装填がすこし難しいこと。なにぶん昔のカメラですから、こちらが合わせなくてはならない部分もたくさんあります。
 

裏蓋を外したところ。こういう風に切ってね! という注意書きがあります。

 

バルナックライカのフィルム装填には、ベテランの方それぞれに流儀があり、うかつに口に出すと戦争が起きそうな話題なのですが、今までに見知った装填方法によると、
 

・フィルムをカットする→これは専用の型取り器具(ABLON)もあるくらいで、ベテランの方はこの方法を推す方も多いです。ただ、わたしはあまり器用ではないし、カットした切れ端(ささくれ)が中の機構に入って悪さをするとも聞いたので、この方法で装填してはいません。自分でカットしなければならない長巻きでも、ささくれを作ってしまい、カメラの中から切れ端がぽろっと出てきた、という経験のあるわたしは用心しています。
 

・テレホンカードを使ってさしこむ→テレホンカードって何? という世代の方も多かろうと思います。昔は公衆電話があって、それ用のプリペイドカードがあったのです。この、薄くて弾力のあるカードを使って差し込むやり方をおすすめするベテランの方もいます。
 

・シャッターを開けて装填する→まずレンズを外します。シャッターをスローにして、T(タイム)に合わせます。指でひっかからないようにちょっと押し上げて、位置を合わせます。わたしはもっぱらこのやり方です。ただ、外などで交換するときに、綺麗で落ち着ける場所を見つけ、まずレンズを外し……とやっているうちに、撮りたかった猫も鳩もどこかに行ってしまうことがあります。

 

フィルム装填をしています。わたしはレンズを外す派です。 

 

しかし、長年使ってみていろいろわかってくるうちに、ライカ初心者に対する赤城先生の助言は、一言一句正しかったな……と思い返すことがよくあります。その道のベテランの言うことは聞くものですね、ほんとうに。今となっては、確かに最初のライカとしてはわたしもM型をおすすめすると思います。それでもこのⅢfが素晴らしいカメラと言うことには代わりはありません。ライカの歴史に触れてみたい人、ぜひ! 老眼が進んでいない若い世代にどんどん使っていただきたい。

 

撮れた写真をお見せします。ピンボケになってしまいましたが気に入っている一枚。SLの中です。(Leica Ⅲf, summaron 35mm, 絞りF3.5, 1/60秒, 富士フイルム C200) 

 

実家で飴を作ったときのこと。(Leica Ⅲf, summaron 35mm, 絞りF3.5, 1/60秒, 富士フイルム C200)

 

てるてる坊主。(Leica Ⅲf, summaron 35mm, 絞りF5.6, 1/60秒, Kodak Gold200)

 

レンズはズマロンが気に入ってよく使います。SLに乗ったときの車窓。(Leica Ⅲf, summaron 35mm, 絞りF3.5, 1/60秒, 富士フイルム C200)

 

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