本日のマイカメラ

第7話 AIGLON

2022/05/10
柊サナカ

最近、二眼レフに興味津々の柊です。
日本カメラ博物館「いまも変わらぬ魅力 二眼レフカメラ展」で、ずらりと並んだ二眼レフの数々を見てからと言うもの、二眼レフが欲しい欲しいと思い続けてきました。
手持ちにある二眼レフは、先日もこちらのコーナーで書いたことのある、マミヤC330のみです。このマミヤC330、すばらしい写りで、とても良いカメラであり、今後も使い続けたいのですが、なにせ重い。できればもうちょっと軽く、日常で持ち運べるような二眼レフがあればなあ、と思いつつ、銀座松屋へ。ちょうどカメラ市をやっているので、ちょっと二眼レフを見てみたいなと。

 

二眼レフというと、憧れのローライフレックスがまず頭に浮かびました。名機の誉れ高いローライフレックスは一生に一度は持ってみたいです。ただ、十万円以上と大きな買い物になりますので、そういう大物のときは、一人ではなく、目利きの人と一緒に買い物したい。わたしが中古カメラを見るときは、シャッターのなんとなくの速度、レンズの状態、外観くらいで、細かくはとてもチェックしきれないのですが、やはりカメラ愛用歴の長いベテランは、中古品を見るときも、見るべきポイントを外さないので、一緒にいると心強いのです。


今回は一人なので、大物狙いをやめ、小さくて軽くて可愛い二眼レフ……小さくて軽くて可愛い二眼レフ……とブツブツ頭の中でつぶやきながら、お店のブースを回っていきます。
カメラにはいろんな楽しみ方があって、コレクター気質の方は、数回シャッターを切っただけで満足して棚に飾り、眺めて愛でる、たまにシャッターを切って、その音で満足というタイプの人もいるようです。そうやってカメラ自体の形や機能を楽しむのでしょう。
わたしはカメラ自体の形も好きですが、どちらかと言うとたくさん撮るタイプです。カメラも多くなると、常に使わないカメラも出てきます。なるべく全部使えるよう、ゆるやかなローテーションを組み、常時鞄の中に数台入れて、毎日何かしらをフィルムで撮っています。
ですので、形より、重さよりも最重要視するのは写りです。できれば、すんなりよく写るものよりも、レンズ自体に特徴があって、くせがあるくらいのものを使ってみたい。

 

いろいろなお店にお邪魔していたら、早田カメラさんで、じゃあこんなのはどうです? と、可愛いのをいろいろ出してもらいました。早田さんが、このレンズはアンジェニューですよ、と言いながら出してくださったのが、このAIGLONです。
アンジェニュー。
わたしのまわりの、カメラのベテランの方たちがよく愛用しているアンジェニュー。気になって以前、自分でもライカマウントのアンジェニューをレンタルしたこともあって、もし自分がアンジェニューを使いこなして写真が撮れたら、ちょっといいなあ、と思っていたのです。
二眼レフは一般的にレンズが交換できないため、スッキリ写る方と、柔らかく写る方と、同じカメラでも、レンズが二種類のバージョンがあるものが多いそう。このAIGLONもそうで、柔らかく写る方が、アンジェニューと言うことです。(もう一方はベルチオだそう。そちらも気になります)

 

AIGLONのアンジェニューf4.5。好きな写りです。PARISかあ……。

 

よく見てみると、このAIGLON、レンズが特徴的なのです。写真の、二眼のうち、上のレンズをごらんください。なんとこの上のレンズにはピント合わせ機能がありません。ただのレンズです。覗かせてもらいましたが、最初は目を近づけて、ぼんやりとしか見えず、あれ? と思ったら、もっと下で見るとのこと。おへそ近くまで離すと、しっかりと像が見えました。この上のレンズは、構図を見るためのもの。(ということで、AIGLONは厳密に言えば二眼カメラですが、二眼”レフ”ではない? という分類の方もいらっしゃるそうです。わたしは形から、二眼レフでいいかなと思い、AIGLONは二眼レフと位置づけています)

 

でも、上下のレンズが連動しなくて、どうやってピントを合わせたり、写すのだろうと思いますよね? これは、下のレンズのところにシャッターがあります。ピントは目測で合わせます。
お詳しい方がほとんどだと思うので、改めて説明はいらないかも知れませんが、一応。
目測でのピント合わせは、自分で被写体までの距離を大体1m、大体4mなどと求め、レンズの目盛りをその距離に合わせ、シャッタースピードも合わせて撮るような感じとなります。わたしはローライ35も愛用しておりまして、目測機にはなじみがあります。

 

この、上のレンズにピント合わせ機能が無いことで、機構はよりシンプルとなり、ファインダー内も明るく、とても見やすく、なおかつ軽いという利点があります。わたしは構図をものすごくカッチリ決めて撮る派でもないので、この(見えるからええやろ)的な割り切り方をしたこの機構は、とてもいいなと思いました。わたし向きです。

 

もう一つ良いのは、AIGLONで撮影するとき、カメラを構えているようにはぜんぜん見えないこと。AIGLONで撮るときには、カメラはへその辺りにあります。このように、目とファインダーの位置がとても遠く、被写体の方も直接向いていないので、街中でも臆せず撮れます。今までちょくちょく、ストリートスナップで揉めた話も聞いているので、人通りのあるところでカメラを構えるときは、気を遣っていました。以前は人が切れるまで根気強く待ったりということがありましたが、このAIGLONに関しては、ストリートスナップも、うまく撮れそうだなと思います。

 

ファインダーの見えはだいたいこんな感じです。

 

欲しい! でもその前に。
勢いで買って後悔するのは避けたい。わたしは「ちょっと頭を冷やします」とエレベーター前のベンチに座り、買った場合のわたくし、買わない場合のわたくしを脳内でシミュレーションし、マイ脳コンピューターで満足度から運用コスト、買った場合のお財布の安否などを割り出していきます。あとでその様子を見ていた人に聞くと、あまりに思い詰めた顔をして座っていたので声もかけられなかったと言います。
買う? 買わない? 買う? 買わない? 迷うこと一時間。
買おう。 

 

そうやって購入したのがこのAIGLONです。小さくて軽いため、鞄の中にもすっと入って持ち運びにもまったく困りません。革ケースも、このAIGLONのサイズが特殊なため、ぴったり入るものが見つからず、革ストラップもついていないので、最初何も付けずに使っていました。でも、もし落としたらと思うと気が気じゃないので、今では片側のみ、フィンガーストラップを付けてあります。シャッタースピードが最高で1/150秒ということに時代を感じますが、それはフィルムを使い分けたりして慣れていきたいです。

 

AIGLONの内部。 

 

フィンガーストラップをつけてみました。eBayでも革ケース、ないんですよね……。あきらめずに探してみます。

 

写りにも大満足。カメラ自体1950年代のカメラと言いますから、わたしよりもずいぶん年上なのですが、写りは本当によく、撮るのが楽しみになりました。きっと一昔前のパリの路地などを撮っていたに違いないこのカメラ、今やひいらぎの手によって、下町の商店街などを撮ったりと、数奇な運命であることよなあと思います。これからもこの手乗りサイズの二眼レフ、AIGLONを愛用していきたいです。

 

アロエ。絞るとシャープになりますね。(AIGLON, angenieux f.8, 1/150 ektar100)

 

光る葉っぱ。(AIGLON, angenieux f.4.5, 1/60, ektar100)

 

エフェクトフィルムの赤羽。(AIGLON, angenieux f.8, 1/150, LomoChrome Purple)

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