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本日のマイカメラ

第34話 4×4カメラ(127カメラ)大集合「4×4photography」展

2024/07/09
柊サナカ

4×4カメラ(127カメラ)大集合「4×4photography」展 集合した出展者のカメラたち。どれも手のひら大の可愛いカメラです。

 

6月の最初の週あたりから、毎年四谷のランプ坂ギャラリーにて行われる、「4×4photography」展をご存じでしょうか。


コラム筆者の柊も毎年参加しており、来年ももちろん参加するつもりでおります。

 

会場の雰囲気を少しだけお見せします。

 

会場は今年から二部屋に。こちらの部屋の雰囲気も少しだけお見せします。

 

人はなぜ、こんなに127フィルムを使うカメラに惹かれるのか……まずは見ていただきたい。全部サイズが小さいのです! どれも手のひらに乗るくらいの大きさです。かわいいでしょう?

 

この「4×4photography」展には、参加者の4×4カメラコレクションが大集合します。プリントはぜひ会場で見ていただきたいので、今日は、集まったカメラを中心にご覧ください。
 

クワバラユキさんのカメラコレクション、日替わりで変わります。


こちらは子供から大人まで大人気、クワバラユキさんの127フィルムカメラコレクション。「どうしてこんなに……?」と聞いてみたら、カメラ全般お好きで、特に127フィルムのカメラだけを集めているわけではないということです。博物館のようなお部屋を想像します。傾ける方向でシャッタースピードが変わるカメラなんて、初めて見ました……! 

 

クワバラユキさんのカメラ、珍しいPURMA SPECIAL。1937年発売、イギリスのカメラということです。 

 

PURMA SPECIALは傾きによってシャッタースピードが変えられるのも珍しいですよね。

 

別の日ではコレクションも変わったりして、子供から大人まで大人気でした。

 

今回8回目のこの「4×4photography」展、これだけ長く続くのは主催の森崎美佳さんの熱意と人柄にもあると思います。森崎さんのようにカメラに情熱を注ぎ、全力投球できる方というのは、同じ女性として、見ていて素敵だなあと……。
 
その森崎さんに、「なぜ4×4photography なのか」127フィルムのカメラを使い始めた経緯を伺いました。

 

もともと森崎さんは、ポラロイドのSX-70を愛用していたそう。みなさん覚えていらっしゃいますか。ポラロイドのフィルムって、製造中止となり、市場からなくなった時がありましたよね。どんなにかっこいいカメラも、お気に入りのカメラも、フィルムがなければただの置物です。

 

そのうち、インポッシブル社が新たにポラロイドフィルムを復活させたこともあって、森崎さんも最初、それを使っていたとか。でも、薬剤のせいかうまく撮れない。旅行に行ったのに、撮影したフィルムがほとんど撮れていなかった経験もあったそう(当時の話で、今はインポッシブル社のフィルムも薬剤も改良されているのでご安心を)。

 

「“じゃあ、フィルムにしよう”と思ったとき、四角いカメラってあるのかな、というところから探しました。そうしたらベビーローライに出会って。戦後のベビーローライを持った瞬間に、覗いて、なんだろうこれ! って感動してしまって、そこから惚れ込んで……」と森崎さん。
 
ネットでフィルムを探し、使い方を覚えて使っているうちに修理に出して、修理に出している間に寂しくなってもう一台。それなら今度は黒を買おう。そうしているうちにまた戦前ベビーローライに出会い、欲しくなってしまって、今やベビーローライのコレクションも全種類コンプリートまであと二台のところまで来ているとか。
 
でも森崎さんが撮り始めた当初は情報も少なく、うまく撮れなかったそうです。どうやったら写真がうまく撮れるのだろう……、みんなの写真が見てみたい。するとワークショップの先生でもある、カメラマンの森谷修先生に「写真展をやればいいよ」と勧められたのだそうです。でも当時は森崎さんもベビーローライを買ってまだ1年。初心者なのに写真展を開くなんて……と、とても迷っていたそう。そこでの森谷先生の言葉がいい。

 

「できないって言ったら一生できないよ」

 

主催の森崎美佳さん愛用のカメラ。わたしは4×4カメラで困ったときには、いつも森崎さんに相談しています。

 

柊のカメラ、左からコマフレックスSとベビーローライ。わたしも森崎さんの戦前ベビーを見せていただいてから、アッ可愛いと思ってもうメロメロに。127フィルムは初めてで戸惑いましたが、フィルム等も、森崎さんに相談に乗ってもらいました。

 

じゃあやろうということになって、フィルムをかわうそ商店に買いに行ったら、「写真展、協力するよ!」ということに。
 
「ベビーローライに出会ったのがすべてのきっかけというか、127フィルムを使うこのカメラじゃなかったら、フィルムを自分で現像しようと思わなかったし、暗室で手焼きしようということもなく、多分、写真屋さんに出して終わりだったんだと思うんです。そのベビーローライとの出会いがいろんな方たちに広がって、友人ができたり。一台のカメラが紡いでくれたご縁ですね。このカメラに出会ってなければ、多分写真展などもやっていないと思います」
 

森崎さんの話を伺っていると、一台のカメラがどんどん縁を広げ、その後の人生も変わるということもあるんだなあと思いました。

 

――できないって言ったら一生できないよ―― 
至言です。
 

プリモジュニアをお使いの佐竹㐂信さんの作品は、毎年の一月一日がテーマ。

佐竹㐂信さんは、キャプションも4×4のホルダーなのです。かわいい。


プリモジュニアをお使いの佐竹㐂信さん。カメラ屋さんで見かけて、これいいなと思ったそう。いつも一月一日に写真を撮って、作品として残すことを決めているそうです。毎年、一月一日の空気がそのまま残っているなんて素敵ですよね。そんな風に、日付を決めて毎年必ず撮るというのもいいなと思います。佐竹さんはいつもプロジェクターで投影するための、4×4の専用ホルダーをキャプションにお使いで、それも可愛いです。

 

鈴木常彦さんの愛機、ナーゲルピュピレ。

 

ナーゲルピュピレは上からも綺麗ですね。

 

ナーゲルピュピレとパーレット。なんと美しいのでしょう!

 

二眼レフが多い中、少し違った形のカメラをお持ちの鈴木常彦さん。「ナーゲルピュピレ」というカメラで、とにかく優雅で可愛いです。鈴木さんに、127フィルムカメラを始めたきっかけを伺いました。

 

「ナーゲルピュピレにほれ込んだのがきっかけです。昔、六本木にレチナハウスというカメラ店がありまして、そこで初めてナーゲルピュピレを見たんです。一目ぼれでした。それでお金を貯めて、やっと買いました。フィルムはフィルムならではの温かみを感じるのがいいですね」

 

ピュピレはドイツ語で「瞳」という意味があるそう。美しい女性の瞳を連想しました。
 

川崎和義さん愛用のプリモジュニア。毎年美しいプリントが評判です。ぜひ会場で。


たくさんの展示に作品を発表し続けている川崎和義さん。綺麗なプリモジュニアが素敵です。

 

「ローライフレックス4×4と、プリモジュニアが2台。それからヤシカ4×4が1台。もう4台に増えましたね。やっぱりコンパクトで撮影しやすいところが好きです。あとはやっぱりカメラとして凄く凝縮されているというか。その感覚が持っていていいですね」

 

川崎さんは今回、展示作品に購入依頼があり、それがとても創作の励みになったそうです。
 
さまざまなフィルムを扱うことで、世界的に有名な「かわうそ商店」さん(リンクはこちら→https://kawauso.biz)は、展示会場で出張かわうそ商店をやってくれるなど、お楽しみイベントもあります。
 

来年6月初めの「4×4photography」展もどうぞお楽しみに。
 

「4×4photography」展 出張かわうそ商店さん。わたしも来年の展示に向けてのフィルムを買い込みました。127フィルムも取り扱っている、「4×4photography」派の強い味方。それ以外のフィルムも充実しています。→https://kawauso.biz/

 

森崎さんは、ポラロイドフィルムの製造終了を受けて、大好きなカメラが使えなくなったことがとてもショックだったそう。127フィルムがこれからも存続してほしいという願いをずっと持ち続けているのです。

 

我ら127フィルムカメラの民は、127フィルム絶滅しないで……! と祈るような気持ちで使っています。だってフィルムが無くなってしまったら、どんな良いカメラでも、ただのかっこいい文鎮になってしまいますから……。

 

なので、「4×4photography」展に来てくださる人は大歓迎、127フィルムのカメラに興味を示してくれる人がいたら嬉しくて小躍り、「127フィルムのカメラ買います」とか「来年参加したいんですけど」と聞いたら、もう嬉しすぎて拍手する勢いです。一人でも127フィルムカメラユーザーが増える→フィルムが売れる→フィルムメーカーも採算が取れて、もっと続けようとなる、この良いサイクルをどんどん回していければ本望です。
 
これは国内だけではなく、127フィルムカメラユーザーは海外でもみんな仲間という認識の人が多く、誰かが困っていたら、すぐに親身になり、アドバイスなどしあったりするそう。

 

カメラと言うと、すぐマウントを取るなど、めんどうな人も中にはいると思いますが、127フィルムカメラ界隈に限っては、そんな雰囲気をただの一度も見たことがありません。「みんなでこの辺境の村を守ろう!」「一人でも村民を増やそう!」という感じがして、わたしはとても好きです。
 

6月最初の週は「4×4photography」展、と覚えてください。来年もぜひお会いしましょう。

 

最終日に集まったカメラたち。来年6月をお楽しみに。 

 

 

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