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書棚の片隅から

49 『Photography in print : writings from 1816 to the present』 その2

2025/12/15
上野修

1816年から1980年頃までの写真をめぐるテキスト約75編を収録した、英語の写真論のアンソロジー『Photography in print : writings from 1816 to the present』を、もう少し具体的に見てみましょう。
 

といっても、570ページのボリュームですので、トピックを絞った方がいいと思います。よく知られている現代写真の巨匠、ロバート・フランク関連のテキストをピックアップしてみましょう。

 

編者のヴィッキ・ゴールドバーグの序文に、次のような記述があります。

 

 

     Still, good words about pictures exist in far too great numbers for one book. Some here are very good indeed, and all can lay claim to illuminating some corner of photographic history or aesthetics, or to giving insights into a particular photographer. Well, all but a few, and those are just for fun. By no means comprehensive, this collection ran into the usual publishing problems of space, which meant that many eminent photographers and critics ended up on the cutting-room floor.As it is, space is unfairly allocated and does not reflect value judgments about photographers; Robert Frank, to name but one example, has only his own few lines because I just couldn't locate an appropriate piece that measured up to his importance. Other good pieces were simply unavailable.

 

最近では自動翻訳も高性能になったといわれていますので、いくつかのサービスを用いて試してみましょう。

 

 それでも、写真に関する良質な言葉は、一冊の本に収めるには多すぎるほど存在します。ここに収録されているものの中には、実に優れたものもあり、どれも写真史や美学の一角を照らし出したり、特定の写真家への洞察を与えたりしていると自負できます。まあ、ごく一部を除いては。それも、ほんの一部で、それも単なる楽しみのためのものです。本書は決して網羅的ではなく、出版につきもののスペースの問題に見舞われ、多くの著名な写真家や批評家が編集室の隅に追いやられてしまいました。現状では、スペースの配分は不公平で、写真家に対する価値判断を反映していません。例えば、ロバート・フランクについてですが、彼自身の言葉は数行しかありません。これは、彼の重要性に見合う適切な文章が見つからなかったためです。他の良質な文章は、単に入手できなかったのです。(Google翻訳)

 

 とはいえ、写真に関する優れた論考は一冊の本に収まりきらないほど膨大にある。ここに収録されたものの中には実に優れたものもあり、いずれも写真史や美学の片隅を照らし出したり、特定の写真家への洞察を与えたりする価値を主張できる。まあ、ごく一部を除けば、だがそれらは単なる娯楽だ。決して網羅的ではないこの選集は、出版上のスペース問題に直面し、多くの著名な写真家や批評家が結局カットされる結果となった。現状では、スペースが不公平に割り当てられており、写真家に対する価値判断を反映していない。ロバート・フランクを例に挙げれば、彼に関する記述がわずかしかないのは、彼の重要性にふさわしい適切な文章を見つけられなかったからだ。他の優れた文章も入手できなかった。(DeepL)

 

 それでも、写真についてのすぐれた言葉は一冊の本には収まりきれないほど膨大に存在している。ここに収められた文章の中には実に素晴らしいものもあり、いずれも写真史や美学の一端を明らかにしたり、特定の写真家について洞察を与えたりするものだ。まあ、いくつかはそうではなく、単なる遊びとして入れたものもあるのだが。網羅的とは言えず、この選集も出版上の常として紙幅の制約に悩まされ、多くの著名な写真家や批評家の文章が涙をのんで割愛される結果となった。現状でも紙幅の配分は不公平であり、写真家に対する価値判断を反映したものではない。たとえばロバート・フランクなどは、その重要性に見合う適切な文章をどうしても見つけられなかったため、本人のわずかな行だけしか収録できなかった。他にも良い文章が単に入手不能だったものもある。(ChatGPT)

 

文体やこなれ具合には差がありますが、いずれの訳文でも大意をつかむには十分でしょう。
 

収録されているロバート・フランク本人によるテキスト「Statement」の出典は、「Statement by Robert Frank. Copyright © 1958. Reprinted by permission of the author.」となっています。別の資料を調べてみたところ、「U.S. Camera Annual 1958, U.S. Camera Publishing Corp., New York, 1957」が初出のようです。
 

 

本書では、テキストの冒頭に、簡単な人物紹介が添えられています。

 

 

Robert Frank (b. 1924), born in Switzerland, traveled across the United States on a Guggenheim fellowship in 1955 and 1956. The result was The Americans, a book strongly influ-enced by Walker Evans but imbued with more evident emo-tion (and sometimes bitterness), more social commentary, sense of tragedy, and irony. His very personal documentary style influenced many photographers in the following years;the book is often considered a major turning point in recent photography. Frank went on to make several films.

 

ロバート・フランク(1924年生)、スイスに生まれた彼は、1955年と1956年にグッゲンハイム基金の助成を受けてアメリカ全土を旅した。その成果が写真集『The Americans』である。ウォーカー・エヴァンスから強い影響を受けつつも、より露わな感情(時に苦みさえ含む)、社会的コメント、悲劇性、そしてアイロニーが染み込んだ作品となった。
彼のきわめて個人的なドキュメンタリーのスタイルは、その後多くの写真家に影響を与え、この写真集は現代写真史における大きな転換点とみなされることが多い。フランクはその後、いくつかの映画作品も制作した。(ChatGPT)

 

繰り返し語られてきたロバート・フランクの紹介とほぼ一致する内容ですが、この文章も他の紹介を参照したのか、この文章が後に参照元となったもののひとつなのか、ちょっと気になるところです。


ロバート・フランクの「Statement」の後半部分を引用しつつ、自動翻訳してみましょう。

 

 

     I have been frequently accused of deliberately twisting subject-matter to my point of view. Above all, I know that life for a photogra-pher cannot be a matter of indifference. Opinion often consists of a kind of criticism. But criticism can come out of love. It is important to see what is invisible to others—perhaps the look of hope or the look of sadness. Also, it is always the instantaneous reaction to oneself that produces a photograph.

 

 私はしばしば、意図的に主題を自分の視点に歪めていると非難されてきた。何よりも、写真家にとって人生が無関心でいられるはずがないと私は知っている。意見とは往々にして一種の批判である。しかし批判は愛から生まれることもある。他者には見えないもの——おそらく希望の表情や悲しみの表情——を見抜くことが重要だ。また、写真を生み出すのは常に自分自身への瞬間的な反応である。(DeepL)

 

     I am not a pessimist, but looking at a contemporary picture mag-azine makes it difficult for me to speak about the advancement of photography, since photography today is accepted without question, and is also presumed to be understood by all-even children. I feel that only the integrity of the individual photographer can raise its level.

 

 私は悲観主義者ではありませんが、現代の写真雑誌を見ると、写真の進歩について語るのを難しく感じます。なぜなら、今日では写真は疑問なく受け入れられ、子供でさえも理解できるとみなされているからです。写真家個人の誠実さだけが、そのレベルを高めることができると感じています。(Google翻訳)

 

     The work of two contemporary photographers, Bill Brandt of England and the American, Walker Evans, have influenced me. When I first looked at Walker Evans' photographs, I thought of something Malraux wrote: 'To transform destiny into awareness.' One is embar-rassed to want so much for oneself. But, how else are you going to justify your failure and your effort?

 

 現代の写真家の中では、イギリスのビル・ブラントとアメリカのウォーカー・エヴァンズの作品から影響を受けた。初めてウォーカー・エヴァンズの写真を見たとき、私はマルローの書いた「運命を意識へと変える」という言葉を思い出した。これほど多くを自分自身に求めることは気恥ずかしい。しかし、そうでなければ、どうやって自分の失敗や努力を正当化できるというのだろうか。(ChatGPT)

 

ChatGPTが「必要であれば、文体をより文学的にすることも、より自然な日本語に整えることもできます。」と提案してくれたので、より文学的な文体を依頼してみました。

 

 同時代の写真家のうち、イギリスのビル・ブラント、アメリカのウォーカー・エヴァンズの作品から私は影響を受けた。初めてエヴァンズの写真を見たとき、私はマルローの「運命を意識へと変える」という言葉を思い出した。自らにこれほど多くを求めることは、どこか気恥ずかしさを伴う。だが、そうでなければ、自分の失敗や努力をどうやって納得させられるというのだろう。(ChatGPT)

 

現在、ロバート・フランクをめぐるテキストは膨大にあると思いますが、1980年ころには、重要性に見合う適切なテキストが見つからなかったというのは興味深いですね。そんな状況を踏まえて読んでみると、フランク本人によるステートメントも、どこか孤独が漂っているように感じられてきます。
 

こうした発見がいろいろあるのも、いま本書を読む面白さかもしれません。

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