3回目の『私のカメラ初体験』に続き、朝日ソノラマから出版されていた「現代カメラ新書」シリーズから2冊目の紹介です。
廣田尚敬『鉄道写真撮影ガイド』は、No.24として出版された「被写体ガイド編」の一冊。裏表紙には次のように概要が記されています。
SL以後、新たにブームを型成しつつある鉄道写真には、SL写真とはまた違った幅広いテーマがある。全国を網羅する鉄道網は多くの機会を与えてくれる。本書は、これから鉄道写真を始める人にとって、また、SL以後の鉄道写真に取り組むベテランにとっても、適切な指導書で、少年時代から鉄道写真を撮り続けるベテラン写真家が、その魅力のすべてと、撮影技法の全容を、あますところなく説きあかした“これからの鉄道写真”の決定版。珍らしい作例も豊富に掲載。
1970年代には消えゆくSL(蒸気機関車)を追うブームが起こりました。本書が出版された1976年はSLが全廃された年であり、それゆえ本書は「SL以後の鉄道写真」をめぐる新時代のガイドとなっているわけです。目次を参照してみましょう。
第1章・鉄道写真の魅力
1・仲間は増加している
2・鉄道写真の魅力はどこに
3・SL写真とどこがちがう
第2章・鉄道の基本を知る
1・鉄道の種類
2・車両の分類
3・形式のよみ方
4・長さを知る
5・列車ダイヤ
6・情報の集め方
第3章・撮影上の注意
1・撮影で注意すること
2・許可のとり方
第4章・撮影行のアドバイス
1・沿線を歩く
2・地図の利用
3・天気について
4・太陽の位置を知る
第5章・フィルムと交換レンズ
1・フィルム考
2・交換レンズと鉄道写真
第6章 鉄道写真とシャッタースピード
1・流しどり
2・シャッタースピードと鉄道写真
第7章 状況別の写し方
1・トンネル
2・峠
3・丘
4・原野
5・谷
6・里
7・海辺
8・橋
「本書で私が特に力を入れた点は、シャッタースピードと、流し撮りの問題について、理論的に解説を試みたことである」と、著者は述べています。じっさいに第6章を見てみると、計算式が並んでいるのに驚きます。
「カメラをパニングする動作は一定速度にはならないわけで、常にサイン・カーブを頭に描いて、正確に列車に密着するように動かす必要がある」という理論と同時に、「回転は手先でなく、腰のひねりを使うと安定する」という実践法が書かれているのがさすがです。
ここから生み出されている表現が、とてもクリエイティブなブレボケ表現なので、説得力も抜群です。鉄道愛好家以外の方が今日読み返してみても、示唆に富む一冊であるように思います。
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。