top コラム書棚の片隅から12 『FOCUS』1981年10月30日号 創刊号

書棚の片隅から

12 『FOCUS』1981年10月30日号 創刊号

2023/01/09
上野修

かつて、スキャンダルやゴシップの写真を中心とした誌面で注目を集めた、写真週刊誌と呼ばれる雑誌がありました。1981年の新潮社『FOCUS』を皮切りに、84年に講談社『FRIDAY』、85年に文藝春秋『Emma』、86年に小学館『TOUCH』、光文社『FLASH』といった雑誌が続々と創刊され、ブームを巻き起こしました。今回は、このブームに先鞭をつけた『FOCUS』の創刊号を紹介してみましょう。

 


ページを捲ってみても、新雑誌の出版についての、創刊の辞のようなものはとくにありません。けれども、目次を見てみると、『FOCUS』という雑誌が目指したものがうかがわれるのではないでしょうか。

 

outlaw 手入れされた沖縄麻薬コネクション 大石芳野
scene 交通事故の力学—「名神玉突き」から街角の衝突まで 福田文昭
dropout 裸のオープニング・セレモニー—後楽園ストリーキングは減点4 清水寛
family 孫を抱く 「伊藤律」—帰国1年〝老革命家〟の日日好日 斎藤康一
hero ホントの沢村賞は?—人間の〝心情〟に勝てない江川クン
off limits ラオス反政府ゲリラの素顔—後メコン川を越えた〝潜入ルポ〟 郡山貴三
open 季節はずれの羅漢ねぷた—利息で永代供養「霊廟」の経営方針 東誠子
discover 夢と驚異の世界—〈その1〉シャルトルの「陶片の城」 川田喜久治
FOCUS1 最後の政商「豪邸」の日々—「小佐野賢治」偽証判決直前の告白 渡部雄吉
erotica 恋愛の秋—中村正也の京都快感グラフィティ〈その1〉
ZOOM 「気になる女」〈その1〉小林麻美 稲越功一・撮
FOCUS 2 東京漂流 連載01 偽作 深川通り魔殺人事件 藤原新也
history 大竹省二の戦後史—〈その1〉天皇とオナガザル
party 政界「三婆」そろい踏み—「池田」「佐藤」「大平」元総理夫人の祝杯 土田ヒロミ
judgement 禁じられた絵—池田満寿夫展出品作選びの基準
peep 自分で自分を覗くとき—ある自販機カメラマンの実験 石垣章
for sale 「世界のシェフ」のお惣菜—舌鼓を打ったり、舌を噛んだりのア・ラ・カルト 吉川譲
deluxe プレゼントにロボットはいかが?—全米—面白デパートの愉快な商法
health 「脳の輪切り」の効用—脳卒中死減少の新兵器 CTスキャナー 木村恵一
event 刑務所から再び浮かぶ—花柳幻舟復帰公演の気炎 松浦秀介
game 遅れてきた青年の「まさか」—英才・中島に勝った変則・中尾のフォーム
flash 突然のノーベル化学賞—しかし「意外ではなかった」福井謙一教授 井上隆雄
parody 狂告の時代1 マッド・アマノ

 

まず、目に付くのは、目次に撮影者の名前が記されていることです。写真をメインにした雑誌ですから、ある意味で当然ですが、署名付きで作家として登場しているわけです。じっさい、写真界の錚々たる顔ぶれが名を連ねています。週刊誌における撮影者はカメラマンと呼ばれていた時代だったので、作家的な扱いは画期的ともいえるでしょう。

 

ちなみに各ページでは、「PHOTO & REPORT」「PHOTO & ESSAY」といった表記になっています。けれども、「気になる女」のページだけは、なぜか「稲越功一・撮」という表記で、文中では、「(写真家と被写体の対話)」という表現のすぐあとに、「(カメラマンと私の)」という表現が出てきたりもしています。撮影者の呼び方に無頓着だった時代といった方がいいのかもしれません。
 

いずれにせよ、創刊時の『FOCUS』は、けっしてスキャンダルやゴシップだけを中心とした雑誌ではありませんでした。その後、編集方針が変化し、雑誌自身もさまざまなスキャンダルを起こしながら、大きな注目を集めるようになっていったのです。そのことを含め、なぜこの時代に写真週刊誌のブームが到来したのかということも、とても興味深いのではないでしょうか。

 

 

さて、そのような時代とは、どんな時代だったのでしょう。掲載されている広告には、この時代のフィーリングがよく浮かび上がっているように思えます。オーディオ、男性用化粧品、カメラ、クルマ、時計、銀行。いかにも男性誌なラインナップですね。

 

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