この連載の第2回で、1959年発行の『アサヒカメラ教室』を紹介しましたが、今回は、1970年発行の『アサヒカメラ教室』から第3巻の「スナップ写真」を紹介しようと思います。
第2回のときに、この『アサヒカメラ教室』シリーズを、「手にとってみるまでわからない本」と書きましたが、今回の「スナップ写真」も、まさにそうした巻だと思います。
この巻はけっこう気に入っていて、古書店で見かけて何度か購入してしまった記憶があります。いま手元に残っているのは、出版だより(1970年6月)が挟まっていて、帯もついているものです。
まず、出版だよりに書いてある本巻の案内を見てみましょう。
カラー時代のアサヒカメラ教室(全七巻)
スナップ写真 第三回配本
第三巻
明るいレンズや高感度フィルムの出現によって、写真の表現テクニックは動かないものを写す写真から、スナップ・ショットを主体とするものに大きく変化し、いまやスナップ・ショットはあらゆる写真表現の基盤となっています。スナップ写真のすべてを、第一線のカメラマンが豊富な作例を使って平易に解説します。
帯には、こう記されています。
カラー時代のカメラ・ファン必携書!
一瞬のシャッターチャンスで決る「スナップ写真」の上手なねらい方を、家庭写真から高度の応用技術まで、すべてにわたって解説。付全国主要行事一覧
カラー時代が強調されていますね。そして、明るいレンズ、高感度フィルムといった機材、感材の進化と、スナップ・ショットによる表現が結びつけられています。ここから想像すると、「一瞬のシャッターチャンス」をモノにする、カラーの決定的瞬間スナップ・ショット術が学べる一冊になっていそうです。
ところがじっさいにページを捲っていくと、「特別の出来事や瞬間などは取り上げない」傾向があるコンポラ写真を大辻清司が紹介しているなど、真逆のテキストがあるのが本巻の面白いところです。
1970年という時代は、スナップショットという技法のなかで新旧の写真表現が交錯している、混沌とした時代だといえるでしょう。目次には、そのことがよくあらわれているように思えます。
スナップ写真とは 長野重一
都会スナップ 富山治夫
ローカル・スナップ 薗部澄
祭と民俗芸能スナップ 芳賀日出男
ニュース写真 大木栄一
ルポルタージュ・フォト 英伸三
主観的スナップ 森山大道
コンポラ写真 大辻清司
年代を記録する 影山光洋
スポーツ写真 槇野尚一
海外旅行スナップ 中谷吉隆
組写真から群写真へ 東松照明
私のスナップ写真・その1 金坂健二
私のスナップ写真・その2 伊藤則美
私のスナップ写真・その3 桑原史成
私のスナップ写真・その4 小川隆之
私のスナップ写真・その5 渡部雄吉
全国主要行事一覧 加藤悦二
こうしたテキストが掲載されている本文ページは、すべて白黒です。とはいえ、巻頭の口絵は、一応カラーがメインになっているので、看板に偽りあり、というわけでもありません。
このカラー口絵、じつは今回はじめてきちんと見たのですが、中平卓馬と三木淳が対向ページに掲載されているなど、なかなか興味深いですね。
「スナップ——早撮り写真とは、光のありようによって千変万化する物体の瞬間の像をフィルム上に定着することであるが、スナップは、光そのものに偶然形を与えることがある。」という東松照明のキャプションがカッコいい、などといった発見もあります。
今回は、この口絵をいくつかお見せして、次回、内容に入っていきましょう。
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