top コラム書棚の片隅から25 『写楽祭』1号

書棚の片隅から

25 『写楽祭』1号

2024/02/12
上野修

ここ6、7回、ポケットサイズの本を紹介してきました。もうちょっとないかと書棚をゴソゴソ探ってみたところ、ありました。連載初回に紹介した『写楽祭グラフィック』の元のシリーズ『写楽祭』です。Photofile(Photo Poche)シリーズと並べてみると、ほとんど同じサイズです。今回はその創刊号を紹介してみましょう。

 

巻頭言には、こう記されています。

 

「写楽祭」このタイトルは
どのように解釈するも自由であることは
憲法が保証している
写真を写すなんてシャラクサイでもOK——
写楽の作品は日本美術史の中で最高の
リアリズムであり今日彼が生きていたら
恐らく世界の一流水準を示す
写真家であったにちがいない
その写楽センセのお祭りでもOK——
写真を大いに楽しむお祭り雑誌でもOK——
あるいは写楽祭(ウツランサ)でもOK——
いずれにしてもこのMAGAZINEは
人生の未現像ネガが巻き込んである

 

 

『写楽祭グラフィック』の紹介のときにも書きましたが、このようなユーモアは、同時代の有名なサントリーのPR誌『洋酒天国』の影響でしょう。目次を見てみると、バラエティに富んだ内容がうかがわれます。

 

あ・記録魔 4 井上洋介
サンデー・キッチン・カルカチュア 6 松田静夫
世に美人多し 8 今井田勲
眺め撮り食う 9 佐伯義勝
思い出の街ローマ 10 小野 喬
西部劇の周辺 12 淀川長治
くたばれ○○ 18 みむらきさく
うれしいオトコ 20 勅使河原蒼風
モデル
色の道教えます 21 ゲオルグ・ライスドルフ
ヌード・ランドスケープ 24 中村正也 林 るみ
小さな野蛮人 28 永六輔
張込み 30 清宮由美子
モデルもそれを知らなかった 32 上林三郎
あなたも名カメラマンになれる 34 稲村隆正
ギフトガイド 36
マスク ・ 市川染五郎 38 土門拳
フォトよろず相談 40 いとう・いっぺい
黒いアポロ 42 富田英三
アルバムは心のふるさと 44 重森弘庵
カメラマン日記 46
諷刺昼夢 47
表紙デザイン 草刈順・野本喜三郎・今井滋・カット トシコ・ムトー・宮野力哉

 

こうした冊子を見ていると、当時の写真の楽しみ方が浮かび上がってくるのが興味深いです。たとえば、オリンピック体操選手の小野喬は、次のような旅行記を書いています。

 

ところで僕は今度、随分写真を撮りました。欧州の夏は湿気が少いのか、是色が大変美しい。これなら僕でも、と愛用のライカ、ミノックスを駆使して、盛んにパチパチやりました。フジカラーで15本ばかし、ワイフは専ら8ミリを廻してました。では、お目にかかるまでお元気で。

 

 

高級な使用カメラから推察するに、15本というのは、節約せずにかなり撮りまくった数なのでしょう。そして、この時代、8mmを観光に持参することがあったこともわかります。ページを捲っていると、ほかにも8mm映画についての記述が多いことに気づきました。

 

スチルカメラでは、カラー撮影をするのが大変めんどう臭いと思っていたのに、8ミリでは、いとも簡単にカラー撮影が楽しめる。アメリカでは、8ミリといえばカラーにかぎられているように聞いたけれど、コダックという大会社が、コダクロームという、優秀なカラーフィルムを発売していて、どんな素人が撮影しても、美しい色彩のカラー映画が出来るのだから、8ミリはカラーにかぎる。という事になるのも、うなずける事である。
 
(中略)
 
今度出た、フジカラーニュータイプ8ミリフィルムは、色といい、解像力といい、コダクロームに優るとも劣らない傑作である。これはPRではなく、本当の話。うそだと思ったら使って御覧なさい。
 
日本製なら現像は早く返って来るし、具合が悪ければ、日本語で文句を付けに行けるから便利である、これがどんどん売れ出すと、コダクロームの売上げが減って来て、コダックの本社あたりでは、
 
くたばれ フジ なんて言うのが出て来るかも知れない。

 

 

PRではないと書いてありますが、かなり宣伝っぽいですね(笑)
 

『写楽祭』創刊号は、1960年12月の発行です。富士フイルムの新システム「シングル-8」が登場するのは1965年ですから、まだまだ先のことです。

 


 

富士フイルム公式サイト*には、「わが国でも、戦前からの8mm映画愛好家は、戦争による中断の後、1950年代に入ってから再び愛機を使って自作映画の製作にいそしみはじめ」と記されているので、需要は高まっていたのでしょう。「1957年(昭和32年)3月には“フジカラー8mmフィルム”(外型反転方式、感度ASA10)を発売した」とありますが、このあたりから、コダクロームと勝負できるようなフィルムになっていったということでしょうか。1960年11月に、待望の8mmカメラ「フジカ8T3」が発売されているので、『写楽祭』の記事は、このあたりにタイミングを合わせたのかもしれません。
 

ちょっと話が8mmに脱線しましたが、脱線がメインのような冊子なので、ご容赦を。脱線ついでに、次回も『写楽祭』の別の号に掲載されている8mmの記事を見てみようと思います。

 

*富士フイルムのあゆみ - “フジカシングル-8”の開発
https://www.fujifilm.co.jp/corporate/aboutus/history/ayumi/dai3-06.html

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する