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カメラ的本棚

第25話 「26歳会社員、絵画を買ってみた」監修:銀座ギャラリーズ・漫画:もなか(WAVE出版)

2023/10/24
柊サナカ

写真系のギャラリーの展示に行くようになって数年経ちます。展示のお知らせをもらったら、葉書を壁にマグネットで留め、どこに行こうか計画を立てるのも好きです。それでも、知らないギャラリーに行くときは、やはり今でも少し緊張します。

 

今回ご紹介するのは、「26歳会社員、絵画を買ってみた」監修:銀座ギャラリーズ、漫画:もなか(WAVE出版)です。帯には、「アートを身近に感じたいあなたへ/行ったことがなくても大丈夫/画廊のめぐり方と作品の買い方が漫画で楽しく学べる!」とあり、面白そうだなと思って手に取りました。


こちらの本では主に絵画作品を取り扱っていますが、読みやすくて面白かったので、これはいいなと。絵画も写真も、ジャンルは違えど同じアート。第一章は”画廊へ行ってみよう”、第二章は”アートのある生活を楽しむ”、第三章は”作品を購入してみよう”、第四章が”もっと画廊や作品を楽しもう”と、作品を鑑賞することから購入、家での楽しみ方まで至れり尽くせりの内容です。

 

裏表紙。

 

最初は、主人公の千絵の日常から。最近、生活がマンネリ化してきて、(最近なんかぱっとしないというか……)ともやもやした気持ちを抱えています。友人の家に行ったら、リビングに素敵な絵がかかっています。「これ、どうしたの?」となり、友人が最近、画廊に行き出したことを知ります。ひろがる新しい世界!

 

ほんとうに初心者に寄り添ってくれるのだな、と思ったのは、どんな服装で行ったらいいの? みたいな本当の第一歩にも触れているところ。そうですよね、心配になりますよね……。芳名帳に名前を書こう、などのマナー的なことも、とても丁寧に書かれています。「美術館だけでなく、画廊も巡ろう」というコラムもあり、「画廊は世に初めて出た作品に立ち会える場所でもあります」「画廊は新しい作品との出会いの場」とあって、なるほどなと思いました。

 

こちらの本では、作家側、画廊側(ギャラリスト)の立場からの思いも知ることができるのもいいなと。主人公は、ギャラリーに(入ったら買わないと申し訳ない)(押し売りされちゃったらどうしよう……)と心配しますが、そんなことはないと断言してくれています。「まずは気軽に見に行こう」と、この本は背中を押してくれるのです。


わたしもギャラリーによく行きますが、行くとは言っても決まったところしか行かないので、この本にあるように、いろいろな展示を巡ったり、作品の理解を深めたりして、自分の視野をもっと広げていきたいですね。まだ行ったことのないギャラリーにもどんどん行ってみたくなりました。

 

作品の購入についても詳しく書かれていて親切です。印象的だったのが「初めて買った作品を今も飾っているのだけれど、三十年経っても未だに新しいことに気づいたりするの」という台詞です。お気に入りの作品と暮らして、一緒に年をとっていく生活も素敵だなと思います。一度作品を購入すると、その作家の創作活動を見続けたり、同年代、同ジャンルの作家にも興味を持つようになって、不思議なくらい世界が広がるとコラムにありました。素敵です。

 

以前SNSで、写真を専門に取り扱うギャラリーのことについて、ある写真研究家の方が、(もっと日本でも写真を買う人が増えたらいいですよね)と、前向きな発言をされていたのを見たのですが、その方が若い女性だったからか、異様に激しい口調でつっかかっていく古株のお客さん(どうやらギャラリー常連のお客さん?)がいました。端で見ていて、たいそう怖かったです。「作品を買いもしない若造が何を言うか」みたいな、叱りつけるようなきつい論調だったので驚きました。その研究家の方は、過激な問題提起をしたわけでもなく、もちろんご自身でも作品をいくつも購入しているのにもかかわらずです。(ギャラリーの客、怖っ)と思うと同時に、そういう古株のお客さんにしか、画廊やギャラリーについて何も発言してはいけないような空気があるのは、なんだかなあと思っていました。

 

でも、この本によって、監修の銀座ギャラリーズという団体が「画廊の活動を知っていただき、気軽に足を運んでもらえるように」という目的で結成されたものであり、画廊(ギャラリー)は、アートに関心のある人みんなに開かれた場所なんだなと思えるようになりました。


画廊(ギャラリー)巡りに関心がある方には、ぜひおすすめしたい一冊です。新しい扉がひらきそうでワクワクしますね。


自分でも「これぞ!」と惚れ込んだ作品を購入してみたくなります。

 

中身を少しだけ。コミック部分は読みやすく、コラム部分ではいろいろ勉強になります。

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