©Terra Mater Studios GmbH 2023
わたしは最近潜っていませんが、実は海での素潜りがとても好きで、カメラも防水のNikon COOLPIX W300を、夏の海用として持っています。防水ハウジングのついた写ルンですも、よく使いました。販売終了になってからも、大切に保管しているものがひとつあります。
水中での撮影は楽しいですね。フィルムからデジタルになって、一番撮りやすくなったものって、水中写真じゃないかと思っています。

さて、このたび先月「マルティネス」を観たとき、その予告編でこの「パトリックとクジラ 6000日の絆」の映像が流れ、あまりの圧倒的な映像美に驚きました。公開されたら必ず劇場に見に行こう! と思ったのです。ドローンも含めた現代的な機材を駆使して撮られた映画、ということもさることながら、水中フォトグラファー、パトリック・ダイクストラ氏のクジラに対する情熱がすごい。
みなさんシャチのショーとかご覧になって、(かしこいな、かわいいな)と思うじゃないですか。でも海の中でシャチに会ったらわたしは震えながら泣くと思います。海の中では人間なんて、圧倒的な弱者です。蚊や小バエのようなもの。ちょっとヒレとか尾が触っただけでも、肋骨が折れるでしょうし、常に死と隣り合わせなのがおそろしい。
パトリックはシャチの群れのすぐ側でも泳ぎながら撮影していて、それだけでも(この人とんでもないな)と思うのですが、すごいのはクジラ。

クジラって、どのくらいの大きさか、ピンときますか。この映画では、海に潜るパトリックの身体と対比されて、一目で分かります。マッコウクジラが16~20メートル、体重40~60トン。大型バスがだいたい12メートルということですから、それよりずっと大きいです。マンションで言うと6階あたりを想像していただきたい。6階のマンションくらいの生物が意思を持って、泳いだり回ったり歌ったり潜ったりします。その近くで、生身で撮影してください、さあどうぞ、と言われたら(無理です)とわたしなら即座に言います。ですが、彼はクジラに魅せられたフォトグラファー、それをもう15年以上も続けているのです。
眠るクジラをご覧になったことがあるでしょうか。縦になって家族みんなで眠るのですが、六階建てのビルみたいな大きさクジラたちが、海の中で縦に並んでいる様子は、もう言葉を失うほどの荘厳さでした。そこへパトリックは素潜りで潜っていきます。

クジラという動物はとても賢く、見慣れないものを見ると、口から音を出して音波で3Dスキャンし、目の前にいるものが何かを調べます。パトリックのことも調べて(これはよくわからないけど、そう悪いものじゃないらしい)と考え、クジラの方からも何か話したりします。パトリックもカメラを叩いて音を出すと、その音を真似たりするのは驚きました。
先日、鈴木俊貴氏の、鳥の言語を解明していくドキュメンタリー番組を見て、わたしはおおいに感心し、「僕には鳥の言葉がわかる」(小学館)も買いました。近いうちにクジラの言葉もわかるようになるかもしれませんね。

こちらの映画、「パトリックとクジラ 6000日の絆」はクジラの圧倒的な大きさのスケール感を感じるために、できるだけ大きなスクリーンで見ることをおすすめします。お子さんと見るのも安心の一作、いかがでしょうか。

- ■『パトリックとクジラ 6000日の絆』
全国公開中
配給:キングレコード
公式HP:patw6000.com
監督:マーク・フレッチャー
出演:パトリック・ダイクストラ、ドローレス(マッコウクジラ)、キャンオープナーと赤ちゃんホープ(マッコウクジラ)他
2022年/オーストリア/英語/72分/カラー/ビスタ/5.1ch 原題:Patrick and the Whale
日本語字幕:金関いな 映倫:G区分
©Terra Mater Studios GmbH 2023


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