わたしはホラー映画が好きで、こちらのコラムでも「ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス」を紹介していたりしますが、写真とホラーって、相性が良いように思いませんか。なぜかデジタルの写真はあんまり怖くないのでダメで、ホラーに出るのはやはり、フィルムカメラかポラロイドであってほしいな思っています。
デジタルカメラの普及で無くなったものが、心霊写真ではないでしょうか。昔は夏休みなんかに、お昼の番組でもよく心霊写真コーナーがあったりして、物陰に隠れて震えながら見たりしていました。カメラに多少詳しくなってからは(あっそれ光もれ)(フラッシュの反射)(二重写し)などとわかったりするので、怖さはそれなりに半減しましたが、中にはどうやっても加工ができないような、まがまがしいものもあったりして、心霊写真はいまだに怖いです。
今回紹介する映画はその「心霊写真」です。わたしはホラー映画全般好きですが、特にアジアンホラーに最近はまっています。欧米ホラーが(まあそうは言っても遠い国の話だし)と、どこか他人事で観られるのに対し、アジアンホラーは本当に怖さが地続きというか、湿度や怖さの質も肌に合っているのではないかと思います。「呪詛」「哭声 コクソン」も面白かったですが「女神の継承」も面白く観ました。この「女神の継承」を撮ったのがパンジョン・ピサンタナクーン監督、不穏で嫌な感じがすごく上手い監督なので、2004年に撮られた「心霊写真」もきっと面白いだろうと。
この「心霊写真」はまず暗室のシーンから始まります。暗室のシーンと言えば、少し前の大河ドラマでも暗室シーンが出ていて、暗室にまったくなじみの無い若い世代の人は(何これ? 急に謎の儀式が始まった……?)と暗室シーンをおびえながら観たという投稿を見かけました。確かに暗室は光も赤くてあやしいし、赤い光の中で紙をゆらゆらさせたりするのも意味不明な呪いの儀式っぽく見える……のでしょうか。世代を感じますね。
主人公タンはカメラマン、友達も多く、恋人であるジェーンとの仲も順調で幸せそう。ところが車での帰り道、ジェーンが脇見をしていて、夜道で女性をはねてしまうのです。女性は血を流して道に倒れています。助けなきゃ、と降りようとするジェーンを押しとどめ、タンは「逃げよう」と言いはります。とりあえずタンの言葉通り、救護措置をせず、その場から逃げてしまうのですが……ここから物語は急展開に。
事故後、タンはカメラマンなのに、撮る写真に奇妙な影が写るようになってしまいました。ある写真には、決定的な「何か」が写っていました。
ちなみにタンのカメラはキヤノンEOS-1N(スタジオではマミヤRB67)です。他にもいろんなフィルムカメラやポラロイドが画面に出るので、懐かしいなと感じる人もいるでしょう。タイの写真店にもしっかり富士フイルムの看板があります。普通、日本の写真店ではショーケースの中は七五三や成人式の写真であることが多いですが、タイの写真店では、ショーケースの中が全部国王陛下や王族の写真なのも、タイらしくて良いです。
タンは家に暗室を作っており、その暗室風景もなかなか趣深い。
さて、車ではねてしまった女の人は生きているのか亡くなったのか、二人の調査により、だんだんといろいろなことがわかってくるのです。単純な話と思われたものが、意外にも二転三転します。わたしはびっくりして数回ピョン! とその場から跳ねるくらいでした。この映画、面白いのでハリウッドでもリメイクされたようですね。そちらは「シャッター」、今度こちらも観てみます。(なんと奥菜恵が出るそう!)
この「心霊写真」、最後の謝辞までしっかり怖いので、蒸し暑い夏に観るにはもってこいの写真ホラーです。ぜひ!
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