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柊サナカのカメラ沼

第8話 フィルムについて

2022/05/31
柊サナカ

「デジタルカメラのこのご時世に、なぜフィルムを使うんですか」と聞かれたら、みなさんはどう答えますか。


わたしがなぜフィルムを使うのかと言うと、モノクロに関しては、暗室に入って、自分の手で引き伸ばしをしたいからです。暗室、楽しいです。うまくできたら額装もして、飾ったりするのも面白い。
じゃあカラーフィルムはなぜ、と聞かれたら、表現が難しいですね……。なんでしょう、デジタルカメラも好きだし、フィルムカメラも好きです。どちらにもどちらの良さや強みがあるというか。
フィルムもデジタルも撮る方にはわかると思うんですが、わたしがいくらデジタルのデータをいろいろいじって、粒状感を+、シャープネスを少しだけ-、と頑張っても、なんとなく全体を似せることはできますが、なぜかフィルムのような雰囲気にはならないのです。フィルムで撮った写真は、記憶の中の色やかたちに似ている、とでも言いましょうか……。
カラーは自分で現像も焼き付けもしていないのだから、フィルムと言いつつその実デジタルだし、それはただの自己満足じゃないかと言われたら、まあその通りですと言って黙り、「ハアそうすね」と曖昧に返事するくらいなのですが、とにかくフィルム自体が好きです。手持ちの大事なこのカメラ、このレンズを使いたいがための手段でもあります。

 

モノクロとカラー、フィルムバラであれこれ。


それにしても、フィルム、高くなりましたね……。
とはいえ、わたしが写真をフィルムで主に撮り始めたのは、「谷中レトロカメラ店の謎日和」を書いてからですから、2015年ごろ。その頃にはフィルムと言えば10本パックで五、六千円とか、大体それぐらいの値段でした。今や下手すると1.5倍から2倍くらいになり、この文章を書いている間にもどんどん高くなっていそうですよね。でもわたしは、まだカメラを始めたスタートが遅かったので、高くなったとはいえ、感覚的には、まだ許容範囲ではあります(痛いのは痛いですが)。
これをお読みの人の中でも、デジカメ以前のフィルムの価格が身についている、ベテラン勢の皆さんもいらっしゃることでしょう。当時は百円均一のお店でも、あたりまえに百円でフィルムが売っていたらしいですね。フィルムを湯水のように使っていたとおっしゃる方もいて、羨ましい限りです。フィルムの種類も多く、コンビニでも当たり前に写真現像の受付があって……。そのころをご存じの方にしてみれば、このフィルム高騰は、その時代を知らない人間よりも、もっと心理的に抵抗がおありだろうな、と思います。
このあたりでやめておきましょう。嘆いているばかりではいられません。 

 

ところで皆さんはどちらでフィルムをお買い求めになるのでしょう。わたしは通販だと、以下のお店をよく利用しています。
・かわうそ商店 http://kawauso.biz/
・ヨドバシカメラ https://www.yodobashi.com/
・シルバーソルト http://www.silversalt.jp/index.php?main_page=index&language=ja
・サイバーグラフィックス https://store.shopping.yahoo.co.jp/cgc-webshop/
・みらいフィルムズ http://miraifilms.jp/
・ロモグラフィー https://shop.lomography.com/jp/

 

あとはアマゾンで、安値がついたときに買う場合が多いです。たまに、どうしても必要なものの場合、eBayやB&Hなども利用して海外からも買います。(この場合は、送料を人数割りするため、共同購入のメンバーに加えてもらうことも多かったです)
わたしのフィルムの買い方は、まず、主食の米にあたる、定番フィルムをまとめ買いします。このとき、なるべく10本など、まとめてエイッと買ってしまうのがコツだと思っています。買った後、決して値段を本数で割るなどしてはいけません。わたしは(わりざんにがて……)とか言いつつ、値段をコロッと忘れて使うように心がけています。
ずっと以前は、期限切れフィルムもまとめ買いの時に積極的に使っていましたが、やはりあまり期限を超過したものは、色自体がへんなものもあります。せっかく撮って、できあがりが褪せ褪せなのも嫌じゃないですか。なので最近は手を出すことは少なくなりました。

 

わたしの主食・米である定番フィルムは、ずっとフジフィルムのフジC200(フジカラーC200 36枚撮り)でした。(でした……。)フジC200は米にふさわしい風格で、飽きず使えて色味もニュートラルで優しく、いいフィルムだったのですが、今やもう生産終了。あるものをできるだけストックしています。
その次に、コダックゴールド200。こちらも多少色味がこっくりしており、使いやすくていいですね。今もストックしています。

 

フジC200の写真。

 

コダックゴールド200の写真。

 

次に、米に対して、おかずの具となるフィルムを準備します。
これは見たことのない新しいフィルムであったり、ロモのエフェクトフィルムなど、一本ずつ、お試しで買っています。もししっくり来るものがあれば、主食にしようと狙いつつ、いろいろ試していきます。
その中で、ロモのメトロポリスは、色味がクールなのですが、都会の無機質なものを撮ると、しっくりはまってよかったです。
たまにロモクロームパープルのような、色味が変わったエフェクトフィルムを使います。主食ではないのですが、なかなか面白い。
たまにはクロスプロセスを試したりもします。
あと、比較的高価なポートラやエクターも、たまに買って試しています。

 

ロモグラフィーのメトロポリス。クールな色です。

 

クロスプロセス(ポジフィルムをネガ現像する)すると、何気ない風景でも面白く写ります。

 

ロモクロームパープルで、世界が紫色に。

 

エクタ―100。色味が好きです。 

 

わたしは毎日カメラを数台持ち歩いているし、必ず一日一枚はフィルム写真をSNSに掲載しており、自分でもわりに写真を撮る方じゃないかな、と思っていますが、撮ったとしても毎日数枚で、一日にフィルムを10本くらい使うような豪快な撮り方はあまりしません。 


先日、一年間でどのくらいカラー現像をしたのか数えてみたら、コロナ禍ということもありますが、お店に現像に出したフィルムは36本でした。だいたい月に3本、フィルムを現像に出している計算です。休みの時など多く撮影するとき、冬など少なく撮影するときと差がありますが、だいたいいつもそんな感じです。(モノクロは自分で現像するので含みません。この本数はカラーのみです)
この話をSNSでしたとき、「少ないですね」と言われたのですが、たぶんベテランの方はもっと一度に使う本数も多く、また重点的に撮るのでしょう。フィルムが安いころの感覚を身をもってご存じの方は、フィルムに対するスタンスも違うのだろうなと思います。このあたりは世代によりけりですね。

 

次に、モノクロフィルムです。モノクロは主に長巻と呼ばれる30.5メートルのフィルムを使っています。長巻は自分でパトローネにつめる必要があるのですが、なにせ30.5メートル。何も気にせずたくさん撮れるので大好きです。長巻はカラーに比べて、ずっと安く楽しめる上に、自家現像してスキャンすれば、値段はより抑えられます。
縁起でもない話ですが、もしもカラーフィルムがこの世から全部絶えたとしても、モノクロに関してはイルフォードもORWOも、インドネシアやウクライナ、その他のインディーズフィルムが次々出てきているので、今後もなくならないのではないか、という希望を持っています。フィルムの劣化もカラーほど厳しくないと思うので、まだわたしはフィルムカメラを手放しません。
気分によってフィルムを変えたいので、長巻を入れるフィルムローダーも三台活用しています。今日はこれにしようかな、などと言いつつ、そのつど詰めるのが楽しいです。

 

長巻を入れる器具、フィルムローダー。三台併用しています。

 

モノクロの米である長巻の主食フィルムは、愛用していたシルバーマックスがなくなっていまい、現在、イルフォードデルタ100です。定番にふさわしい、くせのなさが好きです。
かつて定番として使っていたOWROもざらざら感が楽しいです。

 

わたしがフィルムをやめる日が来るとしたら、全くフィルムと同型のデジタル記憶装置・各フィルムを完璧に再現でき、カラーとモノクロ切り替え可能、wifi接続も可能、値段が一万円くらいの素晴らしいひみつ道具が出た時です。そういう製品は出そうで出ないですね。今のテクノロジーでどうにかなりそうなのですが、ならない。わたしのフィルムカメラ趣味もまだまだ続きそうです。

 

 

今の定番、イルフォードデルタ100の写真。

 

大好きだったシルバーマックス。無機質なものによく合いました。

 

長巻で使っていたOWRO UN 54。これもざらっとしてよかったです。

 

夢のメカ。実現はいつでしょうか。

 

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