セコニック・ツインメイト。ストラップはサクラスリングのハンドストラップ。
拙著「谷中レトロカメラ店の謎日和」は、ありがたいことに、いろいろな年齢層の読者の方に手に取っていただけました。執筆時は編集部もわたしも、20代30代の女性が読者層になるだろうと予測していましたが、その年齢層の女性だけでなく、カメラ好きの読者の方々にも幅広く読まれたのは嬉しいことでした。
読者の方はカメラ歴何十年のベテランも多く、その中でもカメラ愛が高じて、同人誌を作るまでになる方達もいます。カメラ同人誌は、カメラが好きという気持ちと熱意があふれたものばかりで、それぞれに特色があってとても面白いです。カメラ同人誌を買うために、大晦日にコミケへ行くことが、わたしの年末の楽しみのひとつとなりました。
サークル直進ヘリコイド・PAICAL氏執筆の「NeXT STeP #3」
ここで一冊の本を紹介したいと思います。サークル直進ヘリコイド・PAICAL氏執筆の「NeXT STeP #3」。この号は、露出計の名機であるセコニック、L-398スタジオデラックス100パーセントの本です。読んでいくうちに、わたしも露出計というものに興味を持つように。
それまではどうしていたのかというと、デジタルカメラはそのまま撮影し、フィルムカメラはカメラに付属している露出計、なければだいたいの勘か、スマホの露出計を使っていました。ところが、フィルムカメラは製造されてから何十年もたっているものも多く、露出計がないものや、あっても精度があまり良くないものもあります。
スマホの露出計アプリも、手軽に使えて良いものだと思いますが、あっ何か撮りたいなと思う→そうだ露出を計ろうとスマホを出す→何か通知があるのを見る→ツイッターを見たりメールを見たりのんびり→そうだヤフオク今どうなっているだろう→また高値更新されてる→あれ何を撮ろうと思ったんだっけ、となったりします。もはやなんでもできるスマホですが、なんでもできるがゆえに、写真を撮りたい時に、かえって集中が削がれることも。
道具を買いそろえ、モノクロ自家現像をはじめたことも、露出計購入に至った大きな要因でした。カラーフィルムをラボに出すときには、現像、データ化までお願いしています。少々露出が下手でも、データ化されたものは、お店である程度補整済みのものなので、そこまで自分が露出下手だとは気付いていませんでした。でもモノクロ自家現像だと、自分で現像してスキャンもするので、結果が自分で丸わかりとなります。真っ黒のネガ真っ白のネガ、最初から最後まで、露出を全部失敗していたことも。
逆光の中で窓際に立っている人の顔を真っ黒にしてしまったり、雪の日で大失敗してどう見ても雪に見えなかったり、昼間なのに夜みたいに撮ってしまったり……。
愛機のセコニック・スタジオデラックス。ストラップは卉奏(旧Acru)のものを使っています。
写真をきちんと撮るためには、やっぱり単体の露出計が必要だなと、つくづく思ったのです。
最初に買ったのは、上記の同人誌「NeXT STeP #3」で読んだ、セコニック・スタジオデラックスでした。スタジオデラックスは、シンプルな操作でわかりやすく、いかにも計器という感じがします。特に良いのはf値とシャッタースピードの組み合わせが全部わかるところ。(f2.8と1/500、f4と1/250、f5.6と1/125、というように)使っているうちに、自分の中で露出の感覚が少しずつ身につくような気もします。
セコニックは70周年、スタジオデラックスもロングセラー商品ですから、使っていると、年配の方からも「いい買い物をしたね」とよく褒めてもらえます。入射光露出計ということで、スタジオデラックス自体を、計りたいところの近くまで持っていき、白い光球をカメラの方に向けて光を計ると、その部分の露出をしっかり計ることができるという仕組みです。(アタッチメントを付けて、反射光でも計測できます)針が左右に振れたりして、表示のアナログ感が素敵です。電池いらずでずっと動くというのもいい。このスタジオデラックス、何十年にわたって愛用し続けている人も多いようです。
ただ、スタジオデラックスはやや大きめで、カメラ自体にはとり付けることができません。もうちょっとコンパクトなものも欲しいと思い、次に買ったのはコシナのVC-MeterⅡです。こちらは、適正露出かどうか、三角のライトが教えてくれるというシンプルな仕様となっています。どんなカメラに付けても違和感がなく、ストラップも付けることができますので、首から提げたりして携帯しています。こちらも使いやすいです。
そして最後に手に入れた、セコニック、ツインメイト。こちらはボタン電池を使いますがとても軽い。そしてコンパクト。針の部分もカラーリングがとてもおしゃれ。さっそく愛用したいと思います。
巾着にいれて持ち歩いているVC-MeterⅡ。コンパクトでいいです。
わたしは「谷中レトロカメラ店の謎日和」の中でも、作中のヒロインが露出計を使うところを書きこみました。
小説に写真を撮るシーンが出てくるとき、通常であれば本筋には関係のないところなので、カメラの機種すらぼかして書かないことがほとんどですし、撮影シーン自体「~は写真を撮った」とさらりと流して、お話の筋に戻ることがほとんどではないかと思います。
それでもわたしは、自分でもセコニックのスタジオデラックスを買い、露出計を使って撮るようになったこともあって、登場人物が、きちんと露出計を取り出して露出を計る描写を入れました。読んでいて100人中、98人くらいは気付かない所かも知れませんが、のこりの2人が、この登場人物は露出計をきちんと使って撮ってるんだな、きっちりした丁寧な性格なんだな、ということに気付いてくれたら、もうそれで作者としては本望です。あまり長々と機材のことばかり書いてしまうのはいけませんが、”美は細部に宿る”のは本当だと思っています。要所要所で、作者こだわりの箇所はしっかり書き込みたいものです。
わたしにとって露出計とは、丁寧に写真を撮ることの象徴でもあります。その割にはまだまだ失敗も多いのですが、これからも露出計を使いつつ、写真を撮っていきたいです。
「谷中レトロカメラ店の謎日和」本文。露出計の箇所がどこにあるか探してみてください。
「谷中レトロカメラ店の謎日和」シリーズ。カメラ好きの方にぜひ。宝島社から好評発売中です。
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。