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柊サナカのカメラ沼

第10話 デジタル以外、フィルム以外の可能性

2022/07/26
柊サナカ

フィルムが無くなる日――想像もしたくないです。でも、サブスク全盛のこの時代に、アナログレコードやカセットレコーダーを愛好する人がいるように、きっとフィルムだって、規模は小さくとも続いていくだろう、なくなることは、まさかないだろうと思っています。

 

わたしにとってフィルムとは、「ハレとケ」で言うと、まったくの「ケ」であり、日常の何気ないものを撮るツールであり、フィルムカメラはできるだけ、さりげなく日常で使っていきたいです。
「ハレとケ」で言えば、わたしはひと抱えくらいある4×5大判カメラ(intrepid camera)も持っていますが、さすがに4×5の大判カメラとなると、フィルムもハガキ大、準備物も多くかさばるので、一年のうち、気力体力とも充実、暇が充分にあり、やる気もあって、なおかつ天候の良い日のみに限って持ち出すような、特別な日のカメラとなっています。完全に「ハレ」の日のカメラ。わたしにとって大判カメラは、お祭りと同じようなものです。

 

今後、もっとフィルムが高騰して、フィルムで写真を撮ること自体が、そんな感じの非日常なものとなったら悲しいですね……。良いカメラもたくさんあるのだから、わたしはやっぱり日常でバシバシ撮りたい。

 

そこで思ったのが、(じゃあ、もしもフィルム以外で写真を撮る道があるとしたら、どんなものがあるだろうか?)ということです。果たして、フィルムの変わりとなりうるものが存在するのでしょうか。
まあおとなしくデジカメに切り替えなよ、と思われるかもしれませんが、作家なんて根っからへそまがりに生まれついているものです。ということで、デジタルカメラはデジタルカメラとして楽しみ、フィルムカメラではフィルム以外で写真を撮る道がないか、フィルム以外の可能性を探っていきたいと思います。

 

 

1 イルフォードフォト・ダイレクトポジティブペーパー

 

イルフォードフォト・ダイレクトポジティブペーパー。面白いので、夏休みの工作にいかがですか。針穴をあけた缶などに仕込んでも写真が撮れます。

 

こちらのダイレクトポジティブペーパー、もとはピンホールのキットとして付属していた、バライタタイプの印画紙です。フィルムではなくて、印画紙というところにご注目。わたしも、こちらを自作ピンホールカメラに入れて使ってみたことがあります。
普通の印画紙をピンホールカメラに入れて写すと、得られるのは、暗いところが白く、明るいところが黒く写っているネガ像です。そのままだと明るさが反転しているので、鑑賞には適しません。ですが、優れものなのがこのダイレクトポジティブペーパー、きっちりポジ像、つまりは普通のモノクロ写真と同じように撮れるのです。どういう仕組みなのでしょう。不思議ですね。
現像処理も通常のバライタ印画紙と同じような現像処理で、特別な薬品を必要としません。大きさは4×5、わたしは主に大型のピンホールカメラで使っていたので、カメラでは使用したことがありませんが、いざとなれば、4×5の大判カメラなら、そのままフィルム代わりに入れて、モノクロ写真を撮ることも可能でしょう。

 

ただ、ダイレクトポジティブペーパーは、もともとはピンホールカメラ用、ISO感度は3ほどなので、実際のカメラに入れて使うとなると、撮影条件が限られます。(試しにISO3で計測してみると、曇り空の日中、F値が4とすると4秒だったので、三脚は必須となります)
4×5の大判カメラより小さいカメラに、このダイレクトポジティブペーパーを切って中に仕込むにしても、薄い画用紙ほどの厚みがあり、フィルムのように薄くはありません。平面性を保ったままカメラに仕込むことは難しく、像もとても小さいもの(いわゆるフィルムの大きさ)となりそうです。大きく引き伸ばすことも、ちょっと難しいかな、と思います。そういう懸念はありますが、案のひとつとして覚えておきたいです。
取り扱いはカメラ系量販店など。イルフォードフォト製品を扱う、サイバーグラフィックスでも取り扱いがあります。

サイバーグラフィックスweb shopはこちら→(https://store.shopping.yahoo.co.jp/cgc-webshop/21151000.html)

 

イルフォードフォト・ダイレクトポジティブペーパーを使ってみた様子。こちらは自作ピンホールカメラで撮りました。

 

 

2 インスタントカメラ、チェキフィルムを入れてみる。

 

一家に一台。おなじみ、フジフイルムのチェキ。

 

みなさまチェキはお使いですか。わたしは旧型の、ごくふつうのチェキを長年使っています。今まではチェキフィルム、ちょっと高いな……と思っていましたが、ネット量販店Aでは、20枚入りが1,373円(2022年6月現在)でした。ということは一枚がだいたい70円ほど。このご時世、現像代、プリント代込みで70円は、(フィルム高騰に対して、相対的に)そう高く思えなくなってきました。あちこちで買いやすいのも嬉しいところ。

 

そんなことを思っていると、先の「4×4Photography」展 vol.6で、ベスト判の二眼レフカメラ、ローライフレックス4×4(ベビーローライ)に、チェキフィルムを入れて撮っていらっしゃる、成田正延氏の作品を見ました。
ネット上ではたまに見ていましたが、ベビーローライでチェキフィルムを撮影した、実物の作品を見たのは初めてでした。チェキフィルムがカメラに入るんだなあ、という新鮮な驚きと、しっかり解像している驚きと。平日でしたので、ご本人とは会えずでしたが、もしお会いできたら、いろいろやり方を聞いてみたかったです。
そうなんです、ベスト判のカメラと、チェキフィルムは、幅がほぼ同じ。入れようと思えば入るのです。最初にそのことを思いついた方の発想のやわらかさ、すばらしいですね。調べてみると、二眼レフにも入れられるとのこと。今回は二眼レフのAIGLONに、チェキフィルムを入れてみます。

 

こちらのフィルムを今回、中判二眼レフのAIGLONに仕込んでみます。

 

手順は、まず暗室の中(もしくはダークバッグの中)で、チェキフィルムのカートリッジからフィルムを一枚抜き出し、カメラの中にセット。露光したら、それを暗室の中でカメラから取り出す。全部撮り終われば、それをまたカートリッジの中に詰め直し、その状態でチェキのシャッターを押す(暗い中で、もしくはレンズを覆った状態で)。これは、チェキのフィルムは薬品が入って少し膨らんだ部分があり、それがチェキ本体のローラーで押されることによって薬品が均一に伸び、写真となるという仕組みだからです。なので、チェキで写さなくても、フィルムはチェキに一度通す必要があります。
やってみたのがこちらです。

 


完成したフィルム。よくわからない、謎の模様が写りました……。 

 

像は出ましたが、何を間違えたのか、なかなか成功とは行かず、他のも真っ白になってしまったりと、まだまだ試行錯誤がいりそうです。
こちらのチェキフィルムは、形状にもよりますが、アトム判・ベスト判・中判のカメラに入れることができます。3Dプリンターで、裏蓋のところに付けて使えるような、ポラロイドバックを自分で作れたらいいなあと思っていますが、なかなか道のりは険しそうですね。

 


3 (番外編)感熱紙でプリントしてみる

 


ケンコー・トキナーの、モノクロインスタントカメラKC-TY01。子供が大喜びですが大人も楽しい。


そのままフィルムの代わりになるわけではありませんが、感熱紙でプリントできる、ケンコー・トキナーの、モノクロインスタントカメラ KC-TY01も、楽しいカメラですので、この場で紹介いたします。
こちらは撮って見せるなり、小学生の娘が大喜びして、部屋に写真館を作り、遊びに来た友達の写真を撮ったり、色を塗ってデコレーションしたりと、とにかく大ウケでした。感熱紙なので、何枚でも気軽にあげられますし、思う存分写真を撮ることができます。いわゆるレジに使うような感熱紙を、そのまま入れられるので、何枚撮ろうと涼しい顔です。今日も公園に持ち出したりして楽しんでいます。フィルムが感熱紙くらい安かったらなあ……などと思いつつ、これで子どもたちがプリントの楽しさを知り、最終的にカメラに興味を持つようになったらいいなと思います。

 

舌を出すみたいに感熱紙が出てきます。

 

こちらがフィルム代わりの感熱紙。お値段5巻パックで1,153円でした。お安い。フィルムもこれくらい安ければいいのに……。

 

感熱紙プリントのコーヒーカップ。

 

こども私設モノクロ写真館。お友達の写真を撮るのだそうです。

 

 

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