美しいライカA型。
今年はライカ百周年ということもあって、どんどんライカを使っていこうと思っています。最近では、去年の年末に直してもらったライカA型を、毎日持ち出しています。(詳しい修理の様子はこちらのコラムをどうぞ→https://photoandculture-tokyo.com/contents.php?i=4794)
どんなものでも、初期型というのは扱いにくかったりするものなので、ライカA型もおっかなびっくり使い始めました。使ってみると(すごいカメラだ……)と感心することも多く、また日常で撮るにもいいことがたくさんあったので、みなさまにもお伝えしたく思います。
上から見たライカA型。経年の味が好きです。
後ろから。シンプルです。
まず、A型のフィルム装填なのですが、わたしがⅢfで良くやる、レンズを外してシャッターをTに合わせ、幕をどけておいて、指でフィルムを支えながら装填するというやり方(詳しくはこちらのコラムを→https://photoandculture-tokyo.com/contents.php?i=4433)、これはA型ではできません。なぜならレンズが外れない仕様だからです。内部の部品に引っかからないように、フィルムをカットする必要があります。
フィルムは、うまくカットしないと切れ端が中に入って故障するという噂を聞いていましたので、元来、手先が不器用なわたしは(カットするの嫌だな……)と思っていました。専用の器具で挟んで、その形通りにカットすればいいのですが、それも面倒だし、金属の板を二枚くっつけたものとはいえ、純正の ABLONはけっこうな値段がします。(今、中古価格を調べたら、34,800円とあって、ヒイッと声が出ました)
フィルムの、赤のラインの部分が引っかかってしまうので、カットするか、カードを使うかして、うまくフィルムを中に入れ込まなければなりません。
フィルムのカットのやり方を、A型をよく使っているベテランから教えてもらいました。
まず、フィルムの細くなっている、ベロの部分を目印にします。フィルムを実際に巻くくらいに伸ばします。そこからカーブを伸ばしていって、フィルムのベロの部分に合わせます。(カーブしてカットするとき、できるだけパーフォレーションのところが太くなるようにします)。この通り切れば、特にフィルムカッターがなくともうまく切れます。やる前は、切るなんて難しそうと思っていましたが、意外に簡単です。
指で押さえているためちょっと曲がって見えるのですが、カーブはもとのベロのカーブと幅に合わせています。
フィルム装填が終わったら、撮影なのですが、A型は昔のカメラだけあって、シャッタースピードは最高から1/500, 1/200, 1/100 ,1/60, 1/40, 1/30 ,1/20, Z,というようになっています。わたしの常用フィルムはコダックゴールド200ですが、晴れの日は大体1/500秒で絞りをF9くらいにしています。
ファインダーは、中を掃除してもらったこともあってとても見やすいです。Ⅲfならピント合わせができますが、A型はピント合わせが目測です。レンズのところに距離が書いてあり、それに従って合わせます。(フィート表示のものもあると思うのですが、メートル表記で助かりました……)
∞は、カチッとロックされるので、手探りでも撮影できます。そこから、20m, 10m, 7m, 5m, 4m, 3m, 1.75m, 1.5m, 1.25m,で、最短は1mです。すっきり4,3、2、1、とかじゃなくてこの1.75mとかの半端な数字はいったい何なんだろうと思いますが、光学の世界ではキリがいいということなのでしょう。
そんな1.5mや1.25mの差をわたしがどのように計って写しているかというと、1.5mはわたくし一人分と数え、今のところ勘頼りです。なもので、背後の縁もゆかりもない自転車の人にピントがばっちり当たったりして、謎な感じで撮れている写真も多数あります。これはちゃんとした距離計を買いたいところです。
距離計といえば、ライカには純正の距離計があります。バルナックとも合う、かっこいい縦型に心惹かれます。細い煙突のように垂直に立っているアレです。おしゃれ!
J-カメラで(FODIS)で検索してみてください。街角で小粋に距離を合わせてみたくなりますね。横型も素敵なのですが、色が違うのです……。ベテランの方にはレーザーで計れる距離計もおすすめしていただきました。
(→なんと昨日、運命の出会いがあって買いました、FODIS! 詳細は後ほどお伝えします。)
思いがけず買えた距離計!うれしい!
距離計をつけたところ。煙突みたいですよね。
後ろから下の穴の部分をのぞきます。
わたしが(A型すばらしいな)と思っているのは、そのコンパクトさです。わたしの持っているスマホ(iPhoneSE)よりも縦横の幅が小さいのです。レンズも沈胴するので薄く、小さな鞄にもすっと入ります。ストラップはつける金具がないので、革のカバーを購入する必要がありますが、わたしはこのA型を保護カバーに入れて鞄に入れておき、さっと取り出して使うやり方がとても気に入っています。気合いを入れて使う、大きなカメラも好きですが、やはりコンパクトなカメラの方が、わたしの日常には馴染む気がしています。
保護インナーケースに入れたところ。コンパクトです。
あのキャパも駆け出しの頃(→参照https://photoandculture-tokyo.com/contents.php?i=3104)A型を使っていたらしいのですが、当時はA型で報道の写真などを撮っていたプロの方もたくさんいたに違いなく、改めてすごいカメラだなと思います。初めてカメラを使うよ! と言う方にはおすすめしませんが、ある程度、中古カメラを触ってきた方には本当におすすめできる使い心地です。
ライカA型が発売されたという1925年と言えば大正14年、文学で言うと細井和喜蔵『女工哀史』や梶井基次郎「檸檬」の時代です。それでも歴史の遺物ではなく、今なお現役のカメラとして使用できることに感心します。
長い年月が経ってから2024年に再び蘇り、わりにピントを外しがちの小説家に年始から使われるとは、よもやこのA型も思っていなかったことでしょう。大事に使います!
信号機。(LeicaA, elmar50, F9, 1/500秒, Kodakgold200)
写りのシャープさに驚いた道。(LeicaA, elmar50, F9, 1/500秒, Kodakgold200)
光を撮るときの雰囲気も好きです。(LeicaA, elmar50, F3.5, 1/60秒, Kodakgold200)
階段。(LeicaA, elmar50, F3.5, 1/500秒, Kodakgold200)
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。