私のカメラ趣味も、もう7年目くらいに入ります。カメラにはまる前には知らなかったのが、カメラ趣味には修理がつきものだということです。
ここでわたしのライカM4をご覧下さい。巻き上げが何かおかしいぞ? と思って見てみたら、これです。シャッター幕がどうやら切れてしまったよう。(これは、持病のようなものだそうですね……)
見てください中を! なんということでしょう……。シャッター幕が切れています。
「谷中レトロカメラ店の謎日和」シリーズは、カメラ店の話でもあり、カメラの修理士のお話でもあります。
わたしは、カメラだけでなく、その後、時計・銃・電化製品・(着物も?)など、何かを修理する話が好きになり、いろいろ書いたくらい、修理にはロマンを感じています。壊れたものが元通りに修復されたりすると、よかったなあと心から思うのです。きょうびは買い換えておしまい、壊れたものは即廃棄、ということも多いかも知れませんが、大事なものを直し直し、愛着を持って使うのは、素敵なことだと思います。
修理、カメラ店の本を書いているうちに、自分でもできたらなあと思っていた時期がありました。カニ目やレンズオープナーなどの道具を揃えて、綺麗に直せたら、言うことないじゃないですか。取材と称してジャンクを買ってきて、使えるようにできたら楽しいだろうし。
日本カメラ博物館では、かつて夏休みに、カメラ分解教室というワークショップが行われていました(こちらのページをご参考に。コロナ禍なので、開催されなかった年もあります。
→https://www.jcii-cameramuseum.jp/kids/2019/06/14/20642/
こちら、修理ではなく、カメラを分解して中の仕組みを知ろうという、大変興味深い内容です。夏休みの親子連れに混じってわたしも参加しましたが、カメラにはこんなにいろんな種類のネジがあるのかということと、しかもネジが小さく、どこに何があったか、どんな仕組みだったか、写真を撮りながらでもすぐに忘れてしまい、不器用なものですから、ネジをピン! と二回も跳ばしてしまって、磁石を持って床を探し回ったり、すぐに(あっ、わたしこの精密作業、向いてないな……)と実感しました。
ワークショップでは、希望者はカメラの分解だけじゃなくて、組み立てもできます。当然わたしも組み立てに挑戦しましたが、謎のネジが余ったり、どうしても組み上げられないところが出てきたり、最後の一人になるまで居残りしても、結局組み上げることはできませんでした。あれだけ細かくデジカメで記録をしていたのにもかかわらず。
コロナ禍があけたら、日本カメラ博物館で、またこのワークショップ、カメラ分解教室は開催されると思いますので、読者の皆様もお子さんと共に参加、ぜひかっこいいところを見せてやってください。
日本カメラ博物館でのワークショップ、カメラ分解教室での一幕。
カメラの分解・組み立ては、思っていたのより25倍くらい難しかったです。
冒頭の、シャッター幕が壊れたわたしのM4に話は戻りますが、故障したのは旅行に帰った後でした。旅行中に、きちんと写真が撮れたのは不幸中の幸い。
ライカのシャッター幕故障。これは、もうプロの修理士へ修理に出さないと、どうにもなりません。なんとなく、布だし、瞬間接着剤とかで貼り直して、自分で直せないのかな……、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、カメラには、ボンドの種類でも安易に使ってはいけないものはたくさんあるそうです。貼り革なども剥がれてきたときに、瞬間接着剤を使ってしまうと、剥離剤を使っても跡が汚くなり、後から大変なことになってしまうのだとか。修理代をケチるとろくなことになりません。
谷中レトロカメラ店の謎日和の中の話でも、”一番困るのが、修理の素人が分解してしまったカメラ”だと、書いたことがあります。もしカメラ修理士の人が周りに居たら、聞いてみて下さい、中が油でベットベトだったり、ダメなところが削れていたり、あるはずの部品が入っていなかったり、そもそも精度がまるで出ていなかったり、素人修理について半分キレながら話してくれることだろうと思います。オークションやフリマサイトの中には、そんな大ハズレもあります。(わたしもオークションサイトでハズレを数回引きました! 海をはるばる渡ってきたハズレもあります!)
ハズレとまではいかずとも、カメラは製造から年月が経っているため、専門店で買ったときにも不具合が出ることがあります。フィルムカメラだと現像して初めて不具合がわかるということもあるので、お店ではそこまで把握するのは難しいのかもしれません。
今までにわたしもいろいろカメラを買ってきましたが、保証期間に直して貰ったりということが、3回くらいありました。ライカⅢfのシャッター幕に光線漏れ、ロシア系カメラに謎の光が入る、ライカのビゾフレックスの鏡が下りない等々です。どのお店でも気持ちよく直して下さったので、買い物は保証期間のある専門店がやはり安心です。
カメラの修理名人がいる、あるカメラの名店では、修理士募集の際に、カメラ一台をぽんと渡して、分解、また組み上げて持ってくることを条件としたと言います。一見簡単そうに見えるこの条件、どこに何があるかをきちんと記録し、壊さないように、傷を付けないように、気を遣いながら工具でバラしていき、外した部品はきちんと並べ、仕組みを考えながらまた順番通りに組み直していくのは、適性がない人には、絶対無理だろうと思います。(そう思えば、適性を見るには、良い入店テストですよね)
たまに、カメラ修理・簡単作業で高収入! をうたう宣伝を見かけますが、(果たしてそうなのかなあ?)と思ってしまいます。修理士でプロとして長く活躍している人を見ていると、「簡単作業」とは絶対に言えません。適性を要する、特殊技能の最たるものだと思います。
わたしが自分で修理したと言えるのは、Aki-Asahi さんで買った、貼り革交換・一部のモルト交換くらいです。(こちらは、あらかじめ、モルトも型にそってカットされているので安心です。不器用なわたしでもなんとかできました)
→http://aki-asahi.shop-pro.jp/
このコンタックス139クォーツに関しては、自分で色も選んで可愛らしくできたので、気に入って愛用しています。モルトも無事(?)交換できました。
Aki-Asahiの革を使って、自分で好きな色に革を変えたコンタックス139クォーツ。
ボロボロになっていたのを貼り換えた、内部のモルト。(これもプロが見るとツッコミどころが満載だと思います。難しいですね)
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