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柊サナカのカメラ沼

第49話 夏こそ!赤外線フィルム

2025/09/09
柊サナカ

NEEWERの赤外線フィルター、IR720をつけた愛機Nikon F3。F3での撮影は失敗知らずで、とても助かります。フィルムはローライ・インフラレッド。

 

こんな暑い日が続いていて、カメラも熱くなってしまうし、写真を撮る気が減退してしまう……という夏ですが、夏にこそ、うまく撮れる写真があります。
 

それは、赤外線写真です。
 

夏の雲って、もくもくとして、陰影も綺麗で、見事な入道雲を見られた日なんて、何か得をした気分になりませんか。そういった見るからに“夏”の風景を、より際立たせることができるのが、赤外線写真ではないかと思うのです。 
 

一度、デジタルでも挑戦したことがありますが→https://photoandculture-tokyo.com/contents.php?i=2226)、ここは原点に立ち返って、赤外線撮影用のIRフィルム+IRフィルター+フィルムカメラで、夏ならではのモノクロ赤外線風景を撮ってきました。

 

赤外線フィルター、IR720の濃さ。このとおり、何も見えません。 

 

まず赤外線撮影用のIRフィルムは、ローライのインフラレッド400を使いました。こちらのフィルム、装填の時に光が当たると、とてもかぶりやすいとのことで、室内での装填がおすすめだそうです。ISO感度は400です。IRフィルターを使えば赤外線写真に、使わなければ普通のモノクロ写真となります。
 

こちらがモノクロ写真の一枚。普通のモノクロです。

 

フィルターを外した一枚。(Nikon F3・Nikkor 50mm・絞りF8・1/2000秒・rollei Infrared400)

 

こちらが赤外線フィルターを使った一枚です。

NEEWERの赤外線フィルター、IR720を使用しての一枚。(NikonF3・Nikkor 50mm・絞りF8・1/250秒・rollei Infrared400) 

 

次に、レンズにIRフィルターをつけます。わたしはNEEWERの赤外線フィルターをセット買いし、その中で赤外線撮影に最もお勧めされている、IR 720のものを使いました。このフィルターは、日蝕観察の時にのぞく眼鏡のような濃い赤で、目の前にかざすと、肉眼ではほとんど何も見えなくなります。構図とかにこだわりたい方は、一眼レフだと構図が見えなくなるので、二眼レフ及びレンジファインダー機がおすすめです。とはいえ、一眼レフでも、カメラを三脚に据え、構図を決めてからフィルターをつけるというやり方もできます。かなり濃いフィルターですので、露光はフィルター無しのときよりも、3段明るくすることが推奨されています。

 

フィルターを外した一枚。(Nikon F3・Nikkor 50mm・絞りF8・1/2000秒・rollei Infrared400)

 

赤外線写真。道の色は黒く、葉っぱの色は雪のように写ります。(NikonF3・Nikkor 50mm・絞りF8・1/250秒・rollei Infrared400)

 

フィルターを外した一枚。(Nikon F3・Nikkor 50mm・絞りF8・1/2000秒・rollei Infrared400) 

 

わたしは、赤外線撮影の時にはニコンF3を使うようにしています。一眼レフなので、IRフィルターを付けると、ファインダーの画面がほとんど見えなくなるのは多少不便ですが、そこはフィルターを付けたり外したりして対応しています。IRフィルターは、光があまり入らないような、とても暗いフィルターなので、そのままでは暗すぎて何も写りません。カメラ側で調節して、3段分明るくしなければならないのです。絞り値で考えるなら、秒数は、
 

1/2000・1/1000・1/500・1/250・1/125・1/60・1/30・1/15・1/8・1/4……
 

と、一段ごとに数値が約半分ずつ減る(正確には1/√2)と覚えています。(シャッタースピードは1/2ずつ)なので、秋など、光の弱いときにはシャッタースピードが1/30秒や1/8秒になってしまい、手持ちではさすがにブレそう。夏以外は三脚必須となります。ところが、夏のさんさんとした太陽の下だと、3段明るくしたとしても、手持ちで十分いける1/125秒だったりするので、その点からも赤外線フィルムを試しやすいのではないかと思います。
 

赤外線写真の場合、仕上がりは目に見えない赤外線に左右されます。そのため、同じ写真を何枚も、明るさを変えて段階的に露光したりもするので、露出補正つまみがある機種が撮りやすいです。ですので、わたしはいつも赤外線写真の撮影には絞り優先のNikon F3を使います。Nikon F3では左側に露出補正ダイヤルがあり、+2から-2まであるので、小刻みに露出を変えながら試せます。実際に、ダイヤルで露出を変えながら撮ってみました。お好みの濃さはどのくらいでしょう。

 

赤外線写真。うすめ。(Nikon F3・Nikkor 50mm・絞りF8・1/500秒・rollei Infrared400)

 

赤外線写真。中間。(Nikon F3・Nikkor 50mm・絞りF8・1/125秒・rollei Infrared400)

 

赤外線写真。濃いめ。(Nikon F3・Nikkor 50mm・絞りF8・1/60秒・rollei Infrared400)

 

撮影したのは、気温が40度に近かった真夏の昼下がり、F8に絞ってもシャッタースピードは1/2000、まさに灼熱の炎天下なのですが、いい入道雲が出ていました。これなら三脚いらず、の絶好の赤外線写真日和です。

 

赤外線写真は雲がよく写ります。(Nikon F3・Nikkor 50mm・絞りF8・1/125秒・rollei Infrared400)

 

赤外線写真では、青空の部分は黒く写り、雲は陰影が豊かに写ります。緑は葉緑素に赤外線が反応するので、白く雪景色のように写ります。赤外線フィルムとはいえ、フィルターを取ると、普通のモノクロ写真が撮れますので、モノクロ写真の延長で赤外線写真に挑戦するのも面白いのではないでしょうか。
 

風景の陰影がどこか異世界のようにも見えてくる赤外線写真、真夏のお楽しみとしていかがでしょう。
 

おまけ。赤外線写真を撮るときに、遠景だとそれほど気になりませんが、赤外線撮影ではピントの位置がずれるので、レンズに赤外線指標があるときにはそれに合わせます。これはピンボケの例。肉眼ではきっちりピントが合っていました。

 

こちらが赤外線指標をあわせた時。(Nikon F3・Nikkor 50mm・絞りF8・1/125秒・rollei Infrared400)

 

ニッコールレンズの赤外線指標。矢印の先の、小さい、赤い点がそうです。(ピントを合わせてから、この分ずらします)

 

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