SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF5.6・1/200秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
前回歩いた月島(東京都・中央区)では、町のあまりの変貌ぶりに「だめだ、これ以上見当たらない(中略)こうなったら佃の方へ行ってみよう。あちらには、まだいくらかは被写体が残っているのかもしれない」という文章で締めくくった。つまり町なかの変わりように、気持ちが萎えてしまったということである。その文章に対し写真家の大西みつぐさんから【まさに「であった」ですね。佃も】というコメントをいただきました。この文章から察すると、月島同様佃も変わってしまったということなんでしょうね。大西さんも下町に造詣が深い方ですから、そのあたりはよーく知っているはず。さて、一体どうなりますやら……。
で佃に足を向けたが、月島は明治時代に埋め立てられた土地であり、一方の佃は江戸時代初期の埋め立て地である。
実は月島と佃島は佃川で分けられていたが、1964年(昭和39年)の東京オリンピックの時に佃大橋が架かり、そしてこの川は埋め立てられてしまい、月島と佃島は陸続きとなった。
その名残というか、水溜り(わんど・佃川支流)がある(①)。

① SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・18.5mm(35mm判換算50mm)で撮影・絞りF8.0・1/125秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
水溜りの先に赤い橋が見えるが、これが佃小橋である。歩いてその橋のところまで出たが、かつてはこのあたりに、何艘か小船が係留されていた。
佃島は元来漁師町である。江戸時代初期に徳川家康が本能寺の変で窮地に陥った時、摂津国(大阪)の佃村の漁師の助けで逃げ延びることが出来た。家康は1646年に佃村の漁師を江戸に呼び寄せ、その漁師が築いたのが佃島である。彼らが、漁で獲れた売り物にならない小魚を日持ちするように煮詰めたものが「佃煮」であり、家康には白魚を献上したと伝えられている。佃島には今も佃煮屋が何軒か残る――この「天安」、いい佇まいである(②)。

② SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・9.9mm(35mm判換算27mm)で撮影・絞りF5.6・1/30秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
佃島の隅田川寄りには住吉神社が建立されている。佃島は前掲のように摂津国の佃村から移住した漁師たちが築いたのだが、その人物たちが故郷の田蓑神社(旧・住吉社)から分霊を分社して、創建をした神社である(③)。

③ SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・14.1mm(35mm判換算38mm)で撮影・絞りF6.3・1/160秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
漁師町だったからなのか、この辺りの子供は粗暴だった。小学2年の時だったか、渡し船でこの佃に渡った。まだ佃大橋はなく、対岸との行き来は佃の渡し船のみであった。一日何往復したかは定かではないが、船賃はタダであった。初めてその渡し船に乗って佃に降り立ったのが小学2年の時であった。とにかく珍しい景観が眼の前にあり、キョロキョロしながら歩いていると、佃のガキが「何見てんだよ」と言いがかりを付けてきた。こちらの返答を待たず、うむを言わさず殴りつけてきた。何もしていないのに、である。そして泣いているあたしの後をずっと付けて来た。帰りの渡し船に乗ろうと船を待っている間も、薄汚いガキは、乗船所まで着いてきて小突いてきた。船が岸から離れると、そのガキに目一杯大きな声で「バカ野郎~、こっちへ来てみろ!」を浴びせてやった。そのガキは船の発着場で地団太を踏んで悔しがっていたのを覚えている。それ以来10年以上は佃に足を向けなかった。その佃の渡し船の碑がひっそりと今も残っている(④)。

④ SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・9.9mm(35mm判換算27mm)で撮影・絞りF3.2・1/40秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
そして実はこの場所、つまり佃小橋だが、あたしの最初のアルバム(1972年)のジャケット(裏面)の写真がそれである(⑤)。

⑤なぎら健壱さんのデビュー・アルバム『万年床』(1972)裏面より
で、これが今、どうです、この変わりよう(⑥)。

⑥SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF4.5・1/100秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
また反対側を見ると高層ビル群である(⑦)。

⑦SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・9.9mm(35mm判換算27mm)で撮影・絞りF8.0・1/125秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
このタワーマンションを中心とした景観は、「大川端リバーシティ21」と名付けられた湾岸再開発(ウォーターフロント)の先駆けとなった。ちなみに大川とは隅田川の別称である。
おっと歩いている内に、様子の言い旧(ふる)い民家を発見(⑧)。

⑧SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF5.6・1/30秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
こりゃ~建てた当初は相当なお金かかったんじゃありませんか? 2階のガラス戸の格子も当時のままと思われるが、これってガラス戸を開けても手も顔も出せないってことですかね? あたしはこのような格子を他で見たことがない。銅の樋(とい)も凝っていて、かなりのお金かかっておりますぞ(⑨)。

⑨SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・21.6mm(35mm判換算59mm)で撮影・絞りF3.2・1/250秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
町歩きというのは、ただボ~ッと歩いていちゃダメ、上下左右に気を配っていなければ、見落とすものが多いですからね。気を張っていれば必ず普段眼にしないものを発見できるはずです。
発見といえばブラブラ歩いていて、なんと懐かしい手押しポンプ(井戸用ポンプ)を発見した――しかも3カ所で見かけた(⑩⑪⑫)。

⑩SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・14.1mm(35mm判換算38mm)で撮影・絞りF5.0・1/40秒・ISO400・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

⑪SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・14.1mm(35mm判換算38mm)で撮影・絞りF4.0・1/40秒・ISO500・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

⑫SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・21.6mm(35mm判換算59mm)で撮影・絞りF3.2・1/400秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
そして戦時中の置き土産だと思われる防火用水も発見(⑬)。

⑬SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・21.2mm(35mm判換算58mm)で撮影・絞りF3.2・1/100秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
以前書いた、使い道のなくなった火鉢を植木鉢に利用しているというやつも眼に入った(⑭)。

⑭SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF4.5・1/30秒・ISO320・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
そしてこの路地に佃天台地蔵尊がある(⑮⑯)。

⑮SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF4.5・1/30秒・ISO160・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

⑯SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF4.5・1/30秒・ISO320・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
地の利の悪い人はほとんど見過ごしてしまうだろう。路地を入ると(⑰)

⑰SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF4.5・1/30秒・ISO1250・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
中ほどにお地蔵様が鎮座されている(⑱)。

⑱SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF4.5・1/30秒・ISO3200・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
最後に佃大橋から遠目で見た佃島(⑲)。

⑲SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF8.0・1/320秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
左下に見える赤い鳥居は、住吉神社から隅田川に向かう赤い鳥居(⑳)。

⑳SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF8.0・1/320秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
昔は堤防(塀)もなく祭りの時、神輿を担いで隅田川に入って神輿を揉んでいた(今はそれも叶わないが)。右手下には佃煮屋さんが並んでいる(㉑)。

㉑SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF8.0・1/320秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]
で、「大川端リバーシティ21」以外は際立った高い建物がないのがお分かりですかな。つまりこれが出来て、町は変わってしまったってことですね。
この佃、まだまだあなどれませんな。しかし月島も佃もだんだん古(いにしえ)の時から遠ざかっている。今度足を向けたとき、どうなっているのでしょうか……。大西さん、佃島にはまだ少し昭和が残っていましたよ。

◉今回のお供は……
SONY Cyber-shot RX100Ⅲ
撮影日は、2026年2月12日
- ●CD発売情報
- なぎら健壱 NEW ALBUM
- 「下町ブギウギ」ROOTS-017 発売中!
- ●なぎら健壱 写真集発売中
- 「Tokyo In a Moment」
- 価格 : ¥2,200 (税込)
- ※ライブ会場にて発売中!
- ●2026年 LIVE SCHEDULE
- 3/28(土) 吉祥寺マンダラ2
- 4/10(金) 静岡 風の街
- 4/12(日) 岐阜市 円徳寺会館(円徳寺境内)
- 4/25(土) 吉祥寺マンダラ2
- 5/16(土) 大岡山 Goodstock Tokyo
- ※TOTAL INFO : http://roots-rec.s2.weblife.me/index.html

1952年、東京生まれ。70年、アルバム『万年床』で、フォークシンガーとしてメジャーデビュー。以後ラジオパーソナリティー、俳優、エッセイスト、タレントとして活躍。写真やカメラにも造詣が深く、写真家の顔も持っている。『町の残像』(日本カメラ社)など著書も多数ある。


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