OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II・17mm(35mm判換算34mm)で撮影・絞りF5.6・1/500秒・‐0.3EV補正・ISO200・RAW[撮影日 2025年1月15日]
都会はその顔つきをどんどん変えている――町の景観は記憶から遠ざかっていく。まだ年月に十分耐えうると思われる剛健な建造物なども容赦なく取り壊され、そこに新たなビルが出現する。そうした都会にあって、この場所はそう簡単には変わらないだろうと思われる場所がある。都会のオアシスと呼ばれる場所、つまり公園である。公園は変わりようがないだろう、と思っていた。ところがどっこい、公園も変わっているのである。
その日あたしは日比谷公園の中を歩いていた。野外音楽堂――正式には日比谷公園大音楽堂というらしいのだが、我々には日比谷の野音という名前の方が通りがいい。
その野音が今年の秋から再整備のため使用されなくなるという。4年後には使用を再開したいとしているが、現時点で再開時期は未定だと聞いた。建物は40年前に改修されたのだが、更に老朽化が進み、都は建て替えることを決断した。
野音の入り口まで行ってみたのだが、イベントも何も行われておらず、当然のごとく中には入れない。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II・14mm(35mm判換算28mm)で撮影・絞りF6.3・1/60秒・‐0.3EV補正・ISO320・RAW[撮影日 2025年1月15日]
最近はとんと無沙汰であったが、かつてはよくフォークやロックのコンサートを観に足を運んだ。1975年、『キャロル』の解散コンサートで舞台が炎上した時も会場に居た。いや、何回も観に来ただけではなく、何回も出演したこともある。
野音の中を写せないもどかしさに、裏手へ回ってみた。「おお~、懐かしい」楽屋口が眼に入った。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II・12mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF5.6・1/100秒・‐0.3EV補正・ISO200・RAW[撮影日 2025年1月15日]
慣れ親しんだ楽屋口なのだが、久しく足を向けていなかった――中はどんなだっけ?
この大音楽堂は1923年(大正12年)年に開設されたのだが、現在の音楽堂は三代目である。戦後はGHQに接収されていたが、1954年(昭和29年)に改築して二代目として再開。さらに老朽化から全面改築工事が行われたのが、1983年(昭和58年)のことで、それが三代目の野音となる。
大音楽堂があるのだから小音楽堂もあるの? と聞かれれば「ある」と答えましょう。
公園の中ほどに位置をしているのが、「日比谷公園 小音楽堂」であり、ちょっと見は音楽堂と分からないかもしれないが、こちらの建物も三代目となる。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II・31mm(35mm判換算62mm)で撮影・絞りF7.1・1/125秒・ISO200・RAW[撮影日 2025年1月15日]
日比谷図書文化館(元日比谷図書館)の前を行き過ぎると、日比谷公会堂が目に入る。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II・17mm(35mm判換算34mm)で撮影・絞りF6.3・1/200秒・‐0.3EV補正・ISO200・RAW[撮影日 2025年1月15日]
ここも誰だったっけか、外タレを観に来たことがあったよな~。眺める外装も古色蒼然としているが、建物内もなかなかに末枯れていていい。つまり日比谷公園内には音楽堂、図書館、公会堂などが整備され、文化の拠点ともなったというわけである。しかしこの公会堂も改築が計画されているという。この建物、とり壊すの勿体ないよな~。
聞くところによると日比谷公園、オープン時はまだあまり庶民に馴染みのない「洋」を広めようとしたという。洋楽、洋花、洋食という三つの洋風を紹介したかったというわけである。近代的洋風公園の先駆けとして1903(明治36年)に東京市が軍から払下げを受け開園した都立公園である。その時正式に日比谷公園と命名された。
つまり洋風の公園を作るということに関しては、初めての試みだったのである。上野公園や芝公園などは寺社敷地内に作られたもので、和風ということになろう。
で、先ほどの「洋」だが、洋楽は2か所の音楽堂があり、洋花は第一花壇と第二花壇がある。
第一花壇 OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II・16mm(35mm判換算32mm)で撮影・絞りF2.8・1/2000秒・‐0.3EV補正・ISO200・RAW [撮影日 2025年1月15日]
第二花壇 OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II・22mm(35mm判換算44mm)で撮影・絞りF5.6・1/400秒・ISO200・RAW[撮影日 2025年1月15日]
第一花壇の隅にはペリカンの噴水がある。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II・40mm(35mm判換算80mm)で撮影・絞りF5.6・1/640秒・‐0.3EV補正・ISO200・RAW [撮影日 2025年1月15日]
これはあたしが子供の頃からあって、日比谷公園というとあたしの残像にはこの噴水が浮かぶのである。調べたらこの噴水、「明治36年の開園当時からある公園のシンボル的存在で」とあった。しかし、他の文章には「昭和28年(1953年)に寄贈されたもの」とある。だが、ペリカンの背面には「1971」とある。どれが本当なんだろう?
第二花壇は公会堂の前にあり、関東大震災の時は避難してきた人たちがここにバラックを建てたという。小音楽堂と第二花壇の真ん中には大噴水がある。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II・30mm(35mm判換算60mm)で撮影・絞りF7.1・1/100秒・ISO200・RAW[撮影日 2025年1月15日]
こちらも近々老朽化に伴い、撤去工事が行われるという。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II・23mm(35mm判換算46mm)で撮影・絞りF7.1・1/100秒・ISO200・RAW[撮影日 2025年1月15日]
あれであたしが幼稚園の頃だったか、この噴水の淵を歩いていて母親に「そんなところ歩いていると落ちるからね!」と注意をされた。あたしは聞く耳を持たずペタペタと淵を歩いていると、絵に描いたようにツルッと滑って池にドボーン! ビショビショのまま母親に手を引かれ、銀座の街を泣きながら帰って行ったのをおぼろげに覚えている(当時は東銀座に住んでいた)。
そして「洋食」と言えば、やはり園内にある老舗のグリル『松本楼』であろう。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II・17mm(35mm判換算34mm)で撮影・絞りF6.3・1/200秒・‐0.3EV補正・ISO200・RAW[撮影日 2025年1月15日]
日比谷公園と時を同じくしてオープンした。
1971年に放火により炎上したこの松本楼だが、全国からの応援にこたえ、1973年9月25日に再開して、チャリティで「10円カレー」を提供している。そのことはご存じの方が多いと思う。
その建物のすぐ前に大きなイチョウの木がある。これを首かけイチョウと言う。
OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II・19mm(35mm判換算38mm)で撮影・絞りF5.6・1/125秒・+0.3EV補正・ISO200・RAW[撮影日 2025年1月15日]
樹齢は推定で400年以上とされ、かつてこの巨木は日比谷交差点付近に植えられていた。1901年(明治34年)、日比谷通りの拡幅工事に伴って伐採されようとしていたこの木を、日比谷公園の設計者のひとりである本多静六が「私の首をかけても守ってやる」と訴えた。現在の地に移植されて、やがて首かけイチョウの名前が残った。
とまあ、足早に日比谷公園内を紹介してきたが、まだまだこの公園には見どころがある。見どころというか、遠ざかっていくものがある。ということで、続きは次回に譲ろう。
◉今回の日比谷公園へのお供は……
OM Digital Solutions OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
撮影日は、2025年1月15日でした。
- ●CD発売情報
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- 「あれからずっと…」ROOTS-015
「ぐるり万年床~あれから50執念~」 ROOTS-016
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- 1/25 (土) 吉祥寺マンダラ2
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- 2/22 (土) 吉祥寺マンダラ2
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1952年、東京生まれ。70年、アルバム『万年床』で、フォークシンガーとしてメジャーデビュー。以後ラジオパーソナリティー、俳優、エッセイスト、タレントとして活躍。写真やカメラにも造詣が深く、写真家の顔も持っている。『町の残像』(日本カメラ社)など著書も多数ある。
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