top コラムなぎら健壱の「遠ざかる町」第21回 少しずつ変わっている

なぎら健壱の「遠ざかる町」

第21回 少しずつ変わっている

2023/11/20
なぎら健壱

Panasonic LUMIX S5・LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6・26mmで撮影・絞りF5.6・1/60秒・ISO250

 

実は写真のお宅、3度目の登場である。かつて『日本カメラ』誌に連載をしていた「帰ってきた町の残像」に、①の写真を載せた。

 


①Panasonic LUMIX S5・LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6・26mmで撮影・絞りF5.6・1/60秒・ISO250

 

庭に設置された1メートルはあろうかという2つのミラー、一体なんのためのミラーなのか? 当然、自動車用のカーブミラーでもないし、家人に対し車両等に対する注意をうながすものでもないだろう。防犯とも考えられないし、明かり取りしては位置がおかしい。よもや姿見や鏡台の代わりではあるまいし。
 

そのようなことを書いたのだが、次に登場したのが、この連載『遠ざかる町』のNo.18での『これって、なんでしょう?』の②である。

 


②OM SYSTEM OM-1・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO・20mmで撮影・絞りF6.3・1/60秒・ISO200・−0.3EV補正

 

ミラーが消滅しているし、隣にあった木まで伐られてしまっている。よって景観が変わってしまっていた。結局あのミラーはなんのためにあったのか、分らずじまいであった。
 

そして今回、そのお宅の前を通って「ありゃりゃ!」と一瞬同じ家だよなと、あたりを見渡した。どうしちゃったんでしょう? 蔦がなくなってしまっている。ボサボサ頭が、理容店で一挙に丸刈りにされた案配である。
 

そして今回①と②の写真を見比べて分ったのは、俄然①より②の方の蔦が増えているということである。以前掲載した時はまるで気がつかなかったのだが、今回③の写真を撮って見比べてそれが分った。この変わり様は、これ以上蔦が増えるのを嫌ったんでしょうか? そんなことを言っては余計なお世話だと怒られそうですが、蔦が這っていたほうがなんとなく趣を感じるんですがね。わずか3年の間にこれだけ変貌するのも珍しいと思うんですがね? このお宅、また登場するかも知れませんな。

 


③RICOH GR Ⅲ・絞りF2.8・1/125秒・ISO100

 

そこでふと思った、『遠ざかる町』のNo.5の時の道路工事はどのぐらい進んでいるのだろうか、ということを。そこで早速その場所に向かった。
 

この道路を東京都市計画道路事情補助線街路第二十六号線と、随分大仰な名前だと以前書いた。この大仰な名前、実はてっきり、目黒区の駒沢通りの五本木から、目黒通りの目黒郵便局前に抜ける750mの間であるとばかり思っていたのだが、インターネットで調べると、品川区東大井一丁目地内を起点に、目黒区、世田谷区、中野区、豊島区を経由し、板橋区氷川町を終点とする延長約22㎞の都市計画道路だということが分った。そこで考えてみると、そうか〇〇あたりで新しい道路が出来ているし、××近辺で工事が進んでいるけど、あれが全部繋がることになるんだ、こりゃ一大プロジェクトだぞ、などと感心してしまった。
 

ただあたしの関心のあるのは、五本木から、目黒郵便局前に抜ける750mの間だけであり、それが5回目で紹介した場所である。
 

まず④は五本木側である。撮影が2022年の7月7日なので、夏らしい空と雲の様子である。さて1年と4ヶ月経った今の景観はというと、⑤の写真がそれである。あれ、まるで変わっていない。

 

④RICOH GR Ⅲx・絞り7.1・1/500秒・ISO200


⑤RICOH GR Ⅲx・絞り6.3・1/250秒・ISO200

 

そこで⑥の定点場所⑦へ行ってみた。こちらもまるで変わっていない。いや、注意して見ると地面がキレイになっている。しかし右手の柵のあたりに雑草が生えている。これを抜くのにも金がかかることだろう。『ビック・モーター』に頼めばいいか。
 

⑥RICOH GR Ⅲx・絞り5.6・1/1600秒・ISO200

⑦RICOH GR Ⅲx・絞り6.3・1/400秒・ISO100

 

そして⑧の場所の定点を探そうと思うのだが、見当たらないのである。左手の屋根の色(カラーだと分りやすいのだが)、その先の建物、右手の家屋や電線。簡単に定点が判別すると思いきや、分らないのである。遠くに見える高い建物からすると、逆向きの風景ではない。一年で周りの建物全部が建て替えられた、などとは到底考えられない。5、6回往復してキョロキョロするのだが、どうしても分らないのである――日を改めて見ても分らなかった。大体このあたりかなと⑨の写真を撮っておいた。しかしこんなことはまずない。以前向島の風景でも同じようなことが起こったが、それも解決できなかったが、今回はさらに注意深く、改めてまた解決に向けて捜してみよう。

 


⑧RICOH GR Ⅲx・絞り7.1・1/640秒・ISO200

⑨RICOH GR Ⅲx・絞り3.5・1/400秒・ISO100

 

⑩、⑪はほぼ変わっていない、真ん中あたりにある看板が増えているだけである。この時、撮影しているうしろ側にある交番のお巡りさんが声をかけてきた。いろいろ話をして「工事進んでいないようですね」と言うと「長い間やっていますよ。多分私がこの交番に勤務している間には出来ないでしょう」と返ってきた。

 


⑩RICOH GR Ⅲx・絞り7.1・1/320秒・ISO100

⑪RICOH GR Ⅲx・絞り6.3・1/640秒・ISO100

 

この都市計画の駒沢通り目黒通り間は、道がなかった場所に新たに道路を作る工事である。地権者が多いことやマンションなど権利者が多い場所の工事であり、いろいろ苦慮する部分も会ったことであろう。道路一本作るにしても、野っ原に道路を通すのとわけが違い大変なんですな。⑫と⑬の写真を比べてみて下さい。ちょっとは工事進んでいるでしょ? ちょっとは……。

 

⑫RICOH GR Ⅲx・絞り6.3・1/250秒・ISO100

⑬RICOH GR Ⅲx・絞り6.3・1/250秒・ISO200

 

追記

定点の分らなかった⑧の写真。どうにも釈然としないものがあるし、納得できない。データを入稿した2日後、絶対捜し当ててみせると、現場に再々度おもむいた。過去の⑧の写真を手に、このあたりとおぼしき場所を行ったり来たりするのだが、分らない。よ~し、最初の場所からやり直そうと、歩き始めると、あっさり見つかった。ここは絶対違う、と踏んでいた場所である。人間の記憶なんて曖昧なものなんですね。それが⑭の写真ですが、以前となんら変わっていない。しかしこれでどうにか気が晴れた。

 

⑭RICOH GR Ⅲx・絞り5.6・1/500秒・ISO200

 

●CD発売情報
なぎら健壱 レコードデビュー50執念記念ALBUM
「ぐるり万年床~あれから50執念~」 ROOTS-016
全国CDショップにて発売中!& デジタル音源配信中!
 
●書籍発売情報
『アロハで酒場へ ~なぎら式70歳から始める「年不相応」生活のススメ~』
判型四六判・1,815円(税込)・双葉社
 
●LIVE SCHEDULE
・11/25(土) 吉祥寺マンダラ2
・12/9(土) 横浜サムズアップ
・12/23(土) 大岡山Goodstock Tokyo
・12/30(土) 吉祥寺マンダラ2

※「なぎらチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCFCz3lDO-hXCb1NnVwTsgpA

※TOTAL INFO : http://roots-rec.s2.weblife.me/index.html
 

 

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する