top コラムなぎら健壱の「遠ざかる町」第31回 祭りは遠ざかるのであろうか

なぎら健壱の「遠ざかる町」

第31回 祭りは遠ざかるのであろうか

2024/09/20
なぎら健壱

OLYMPUS PEN-F・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ・17mm(35mm判換算34mm)で撮影・絞りF6.3・1/1250秒・ISO200・RAW[撮影日2024:09:15]

 

 

 

夏から秋にかけて、日本の風物詩といえば、やはり祭りであろう。日本三大祭りや東京三大祭り、はたまた東北三大祭りなどの大イベントは別にしても、町内などでのこぢんまりとした祭りも数多ある。そうした祭りは夏の時期、日本全国各地でほぼ毎日のように行われていると言っても過言ではない。

 

 

OLYMPUS PEN-F・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ・20mm(35mm判換算40mm)で撮影・絞りF6.3・1/60秒・ISO1000・RAW[撮影日2024:09:15]

 

 

OLYMPUS PEN-F・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ・33mm(35mm判換算66mm)で撮影・絞りF6.3・1/60秒・ISO250・RAW[撮影日2024:09:15]

 

 

 

その土地土地によりいろいろな祭りの形態があるに違いないが、東京の祭りと言えばやはり神輿につきる(山車の地域もあるが)。神輿の掛け声は昔から「わっしょい」と決まっていたが、70年代頃祭り離れから担ぎ手がいなくなってしまい、近隣の県から担ぎ手を雇った。その時、各地域の「そいやー」などまとまりのない掛け声が登場して、いつしかそれが定番となってしまった。どうなんですかね、昔からの決まり事など最近ではどうでもよくなってしまったんでしょうかね? 「わっしょい」は和を背負うから来ているが(諸説あり)、「そいやー」はただの掛け声。

 

神輿と言うのは神様の乗り物。神輿には神様が宿っているのだからして、神輿を上から見てはいけない。昔は神輿の前を役員が歩いて、2階などから見ている人を注意したが、今やマンションなど高層住宅から見ているもので、そうした注意もできない。神輿の担ぎ棒に土足で上がって周りを煽っている人を見かけるが、そんなバチ当たりな行為はもっての他である。まあ、祭りの形態も変わってしまっているってことなんでしょうな。

 

 

OLYMPUS PEN-F・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ・14mm(35mm判換算28mm)で撮影・絞りF6.3・1/60秒・ISO1250・RAW[撮影日2024:09:15]

 

 

 

子供の頃、住んでいた東銀座での祭りでは昭和通りの一本裏の通りを交通規制して、車をシャットアウトして行われた。金春(こんぱる)芸者の手古舞が先陣を切っていた。ちなみに手古舞とは、芸者が祭礼に男装で金棒をひき、神輿の先駆をすることである。その後を、山車が行き、神輿が練って歩いた。

道路には沢山の露店が並んだ。あまり買い食いをした記憶はないが、ハッカパイプ、ショウノウ舟、山吹鉄砲などを買ってもらった覚えがある。山椒魚釣りなどという気味の悪いものもあった。

 

 

この日射的屋で大物をゲットしている子供を発見。機関銃だかをゲット、珍しい。何年も取ることができなかったんだろう、箱がボロボロだった。

OLYMPUS PEN-F・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ・14mm(35mm判換算28mm)で撮影・絞りF6.3・1/60秒・ISO1000・RAW[撮影日2024:09:15]

 

 

 

祭りの日は朝から銭湯が開いていた。そしてタダで入れる銭湯券が配られた。神輿を担ぎ終わった者は、銭湯で汗を流して浴衣に着替えてアルコールを口にした。今のように祭りの装束そのもので、飲み屋で集うなんとことはしなかった。身を清めてからの酒であった。これも今ではでたらめである。

小学校3年の時に葛飾の新宿(にいじゅく)というところに転居した。今では葛飾も下町のようなことを言われているが、当時の葛飾新宿は東京の郊外、田舎であった。引っ越して半年後に祭りがあった。その時町内神輿を眼にして、子供ながらに愕然とした。まるで子供神輿のような大きさではないか。これって本当は子供神輿じゃないの? と見ていると大人たちが静々とそれを担いでいた――全く威勢がよくなかった。

 

 

いい光景だな。お面は1,000円でした。

OLYMPUS PEN-F・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ・18mm(35mm判換算36mm)で撮影・絞りF3.9・1/200秒・ISO200・RAW[撮影日2024:09:15]

 

 

 

地元に露店が出ていた記憶はない。神輿の後ろを着いて歩いて町内を回ると各神酒所で梨がもらえた。夕方ともなると袋一杯の梨を抱えて家路を急いだ。それだけがやけに懐かしい。

今年は9月の15日、碑文谷八幡祭り(目黒区碑文谷3丁目)に足を向けた。碑文谷八幡様は参道も結構な長さがあり、境内も広い。そこに露店が並ぶ。これだけ多くの露店が並ぶ光景も最近ではなかなか目にしない(他をあまり知りませんがね)。

 

 

懐かし~い。スマートボール? いえ違います。スマートボールは玉がジャラジャラ出てくるやつ。これはラッキーボルといいます。

OLYMPUS PEN-F・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ・17mm(35mm判換算34mm)で撮影・絞りF3.8・1/60秒・ISO500・RAW[撮影日2024:09:15]

 

 

 

 

そう言えばかなり前の話だが、この碑文谷八幡様の境内にお化け屋敷が設えられたことがあった。考えてみればお化け屋敷や見世物小屋なんてのは、とんと見なくなってしまった。もっと広い空間があればオートバイの曲乗り(オートバイサーカス・木製の大きな樽の内部の直立した壁面で、オートバイなどを走らせるスタント)なども見ることができた――子供の頃靖国神社で見た記憶がある。

 

 

お面も昔と変わったな~。今はキツネのお面が主流なのかね? それともここだけ?

OLYMPUS PEN-F・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ・14mm(35mm判換算28mm)で撮影・絞りF6.3・1/60秒・ISO640・RAW[撮影日2024:09:15]

 

 

 

 

祭礼そのものもそれに付随するものも、だんだん変わってきている。しかしいつの時代になっても、祭りそのものがなくなることはないであろう――信仰心は希薄になっているが、祭りはそうしたものとは無縁に存在していくのであろう。神輿に乗っているのは神様と言うこともいずれ分からなくなってしまうのではなかろうか。現在、すでにその次元であるのかもしれない。祭りは神事とかけ離れて、イベントとして残ってはいくことであろう。祭りが、ただのお祭り騒ぎになってもらいたくはありませんがね。

 

 

 

なんと一番人が並んでいる店がビールを打っている屋台。秋なのに、残暑厳しい日だったからな~!

OLYMPUS PEN-F・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ・14mm(35mm判換算28mm)で撮影・絞りF6.3・1/60秒・ISO800・RAW[撮影日2024:09:15]

 

 

 

  • ●CD発売情報
  • なぎら健壱 CD ALBUM
  • 「あれからずっと…」ROOTS-015
    「ぐるり万年床~あれから50執念~」 ROOTS-016
    全国CDショップにて発売中!& デジタル音源配信中!
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  • ●なぎら健壱 写真集発売中
  • タイトル : 「Tokyo In a Moment」
  • 価格 : ¥2,200 (税込)
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  1. ●LIVE SCHEDULE
  2. 9/21 (土) 群馬県安中市 サウンドタム
  3. 10/6 (日) 渋谷7th FLOOR (with若旦那)
  4. 10/12(土) goodstock Tokyo (フォーク講座&ミニライブ)
  5. 10/13(日) 埼玉県上尾市 ECHOS CAFÉ STUDIO
  6. 10/26(日) マンダラ2
  7. 11/2(土) カメリアホール コンサート
  8. 11/15 (金) 京都磔磔
  9. 11/16 (土) 松阪M’AXA
  10. 11/17 (日) 名古屋TOKUZO
  11. 12/14 (土) 横浜サムズアップ
  12.  
  13. TOTAL INFO : http://roots-rec.s2.weblife.me/index.html

 

Profile

なぎら健壱

1952年、東京生まれ。70年、アルバム『万年床』で、フォークシンガーとしてメジャーデビュー。以後ラジオパーソナリティー、俳優、エッセイスト、タレントとして活躍。写真やカメラにも造詣が深く、写真家の顔も持っている。『町の残像』(日本カメラ社)など著書も多数ある。

 

 

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