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top コラムなぎら健壱の「遠ざかる町」第39回 視点を変えた江の島

なぎら健壱の「遠ざかる町」

第39回 視点を変えた江の島

2025/06/20
なぎら健壱

RICOH GRⅢ・GR LENS 18.3mmF2.8・26.1mm(35mm判換算28mm)で撮影・絞りF5.6・1/60秒・+0.3EV補正・ISO100・RAW[撮影日 2020年12月8日]

 

 

BS12 トゥエルビで『昭和再生ファクトリー』なる番組にセミレギュラー出演している。メインパーソナリティは船越英一郎さんで、あたしの出番は2月に1回程度であろうか。コーナータイトルは「昭和探訪」である。昭和の香りが残っている町や場所を訪ねては、そのエリアの蘊蓄を傾けるという趣向である。もう何ヵ所都内を歩いただろうか? だんだん蘊蓄を傾けられる場所も少なくなってきた。

 

で、今回は江の島。あたしは江の島をそんなに知っているわけでもないので、行き当たりばったりでいいかなんて按配。なんとなく眼に入ったものを紹介すればいいか、そんな程度であった。

 

まずは江の島弁天橋である(①)。

 

①江の島弁天橋である。東京オリンピック(昭和39年)の時できた橋だが、橋のなかった江戸時代にはどうやって渡ったんでしょう? なんと干潮時に歩いて渡ったそうですよ。では質問、満潮になった帰りは、どうやって渡ったんでしょうか?

OM Digital Solutions OLYMPUS OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐45mm F4.0 PRO・12mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF5.6・1/2500秒・ISO200・RAW[撮影日 2025年6月13日]

 

この江の島、いろいろな表記が混在した。「江島」「江ノ嶋」「江の嶋」と、しかし今は「江の島」に統一されている。まずは江の島弁天橋を渡る。この時点ですれ違うのは外国のお客さんばかりである。しかし昨今観光地、どこへ行っても外国人ばかりである。欧米人は姿形で分かるが、東アジアの人間ともなると顔立ちが我々とあまり変わらないので、日本人かどうか分からない。とは言え、服装など――服装だけではなく、何かが違う。何か違うのだが、言葉には出来ない。なんだろう? しかし平日なのにえらい人出である(②)。

 

②原宿の竹下通りよりスゴイ混みようじゃないの?

OM Digital Solutions OLYMPUS OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐45mm F4.0 PRO・30mm(35mm判換算60mm)で撮影・絞りF5.6・1/400秒・ISO200・RAW[撮影日 2025年6月13日]

 

あたしは小学校五年の時、遠足でこの江の島を訪れた。その時覚えていることは、やたら土産屋さんが多く、貝殻を加工したものばかり売られているということであった――今でも変わらないが(③④)。

 

 

③④一体誰が買うんでしょうか?

OM Digital Solutions OLYMPUS OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐45mm F4.0 PRO・29mm(35mm判換算58mm)で撮影・絞りF5.6・1/50秒・ISO200・RAW[撮影日 2025年6月13日]

 

OM Digital Solutions OLYMPUS OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐45mm F4.0 PRO・14mm(35mm判換算28mm)で撮影・絞りF5.6・1/15秒・+0.3EV補正・ISO200・RAW[撮影日 2025年6月13日]

 

そしてもうひとつは手拭いなのだが、そこには決して上手いとは言えないが女性のヌードの絵が描かれていた。どこの土産屋の店頭にもそれが下がっていた。子供ながらにドキドキした覚えがある。以前江の島を訪ねたのは4年半前であるが、その時も気になった。で、今回ある土産屋さんでヌード手拭いのことを訊いてみた。「いや~もうかなり前から見ませんね~。あと、逆さにするとビキニが取れてヌードになるボールペンとか……」お~お~、そんなのモノもありましたな~。そうか、手拭いはないのか、デッドストックでもあれば、全部買い締めたのにな~。

 

さて、この江の島には観光地として、見どころが満載である。まずは江の島の観光導入部を紹介してみよう。

 

江の島は三女神(さんじょしん)を祭っており、その女神は三姉妹で、それを並べると、奥津宮の多紀理比賣命(たぎりひめのみこと)、中津宮の市寸島比賣命(いちきしまひめのみこと)、辺津宮の田寸津比賣命(たぎつひめのみこと)となるのだが、女神様には申し訳ないがそうしたことを紹介してもなんともなぎららしくない。観光案内ではないのだから、あえてそれはさけよう。しかし「遠ざかる町」らしい紹介は出来るのだろうか。

 

まず珍しいのが、昭和34年(1959年)に国内初の屋外エスカレーターとして誕生した江の島エスカー。3区間に分かれ長さは全長106mであり、乗り継ぐと約5分で江の島の頂上に辿り着く。足腰に自信のない方はいいんじゃないですか? ただし昇り専用で、下りはありませんからね。これが近い内になくなるとは思えないが、ずっとこのままの形を保つということもないだろう(⑤⑥)。

 

 

⑤江の島エスカーの乗り場です。

OM Digital Solutions OLYMPUS OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐45mm F4.0 PRO・12mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF5.6・1/125秒・ISO200・RAW[撮影日 2025年6月13日]

 

⑥写真写りは神秘的です。本物はそうでもないんですけどね(笑)。

OM Digital Solutions OLYMPUS OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐45mm F4.0 PRO・12mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF5.6・1/13秒・ISO200・RAW[撮影日 2025年6月13日]

 

しかし悲しい性なのか、廃屋やら辞めてしまった商店などが眼に付いて仕方ない(⑦⑧⑨⑩)。

 

 

⑦⑧⑨⑩なんとなくこうしたものに眼が行っちゃうんですよ。この方が『遠ざかる町』らしいってか?

RICOH GRⅢ・GR LENS 18.3mmF2.8・26.1mm(35mm判換算28mm)で撮影・絞りF2.8・1/400秒・+0.3EV補正・ISO100・RAW[撮影日 2020年12月8日]

 

 

RICOH GRⅢ・GR LENS 18.3mmF2.8・26.1mm(35mm判換算28mm)で撮影・絞りF2.8・1/80秒・+0.3EV補正・ISO100・RAW[撮影日 2020年12月8日]

 

 

⑨OM Digital Solutions OLYMPUS OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐45mm F4.0 PRO・16mm(35mm判換算32mm)で撮影・絞りF4.0・1/160秒・+0.3EV補正・ISO200・RAW[撮影日 2025年6月13日]

 

 

OLYMPUS PEN-F・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐40mm F2.8 PRO・17mm(35mm判換算34mm)で撮影・絞りF5.6・1/320秒・ISO200・RAW[撮影日 2020年12月8日]

 

やっぱりこういうのが気になるし、好きなんでしょうな。

そして江の島のランドマークといえば展望灯台のシーキャンドル(⑪⑫)。

 

⑪実はシーキャンドルが灯台でもあるというのは、今回知りました。

OLYMPUS PEN-F・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐40mm F2.8 PRO・12mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF7.1・1/800秒・ISO200・RAW[撮影日 2020年12月8日]

 

⑫こうした写真が後年、「そうだ、あの頃は電線がまだあったよな」なんて貴重な写真になったりするのよ。

OM Digital Solutions OLYMPUS OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐45mm F4.0 PRO・23mm(35mm判換算46mm)で撮影・絞りF5.6・1/800秒・ISO200・RAW[撮影日 2025年6月13日]

 

 

平成15年(2003年)にリニューアルされ、高さ41、75mのところにガラス張りの展望フロアがある(有料)。さらにその上には屋外展望台があり、富士山や丹沢などが360度の大パノラマで楽しめる。

 

シーキャンドルから江の島弁天橋を俯瞰で臨めるが、このコンクリート製の橋は、昭和39年の東京オリンピックに併せて、2年前に架けられたものである。

 

そしてこの江の島は、オリンピックのヨット競技の会場であった。大橋の右方向に見えるのがそれである(⑬)。

 

⑬この俯瞰の写真。シーキャンドルから写したものです。

OM Digital Solutions OLYMPUS OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐45mm F4.0 PRO・12mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF8.0・1/200秒・-0.3EV補正・ISO200・RAW[撮影日 2025年6月13日]

 

ヨット競技開催のために、江の島の東側をかなりの範囲で埋め立てて、なんと江の島を1.5倍の広さにしたのである。それによって、千五百年以上の歴史がある霊場や景観が損なわれてしまった。この開発を地元住民の間では「江ノ島の悲劇」と呼んだという(⑭)。

 

 

⑭これがヨットハーバーである。2020年の東京オリンピックでも使われた。

OLYMPUS PEN-F・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐40mm F2.8 PRO・19mm(35mm判換算38mm)で撮影・絞りF7.1・1/500秒・ISO200・RAW[撮影日 2020年12月8日]

 

 

最後は『魚見亭』という昔ながらの食堂でラーメンとビールをやった。ここのラーメン、なんとも懐かしい味だったな~。

足早に江の島を紹介したが、と言うか、かなり間引いての紹介であったが、興味ある方は是非一度足を向けてみるといいでしょう。ただしあたしのような見方をしていると面白くはありませんよ。いや、そうした見方をしたいんだという酔狂な方がいれば、返す言葉もありませんし、なんだかありがたいですな。

 

※ 写真①の答え。専門の渡し人足が居て、おぶって渡ったそうです。

 

 

 

 

 

◉今回のお供は…… 

OM Digital Solutions OLYMPUS OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12‐45mm F4.0 PRO

撮影日は、2025年6月13日でした。

 

 

 

 

Profile

なぎら健壱

1952年、東京生まれ。70年、アルバム『万年床』で、フォークシンガーとしてメジャーデビュー。以後ラジオパーソナリティー、俳優、エッセイスト、タレントとして活躍。写真やカメラにも造詣が深く、写真家の顔も持っている。『町の残像』(日本カメラ社)など著書も多数ある。

 

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