OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO・25mm(35mm判換算50mmで撮影)・絞りF6.3・1/400秒・ISO200・‐0.3EV補正
みなさんは小江戸という言葉を耳にしたことがあるだろうか? 小江戸とは江戸時代に繁栄を見た町で、今に江戸時代を感じさせてくれる町といったところであろうか。すなわち江戸の文化や景観が現代に残っているという、小さな江戸の意である。主だったところはというと、
川越(埼玉県川越市)
佐原(千葉県香取市佐原)
栃木(栃木県栃木市)
等が挙げられるであろう。
一方、同じような意味合いを持つものに小京都なる言葉がある。小京都と呼ばれる場所は、
青森県弘前市弘前(陸奥の小京都)
愛知県西尾市西尾(三河の小京都)
三重県伊賀市伊賀上野(伊賀の小京都)
広島県尾道市尾道(瀬戸内の小京都)
島根県鹿足郡津和野町(山陰の小京都)
山口県山口市山口(西の京都)
等である。面白いのは小江戸の小は「こ」、小京都は「しょう」と読ませることである。これだから、日本語はややっこしい。
今回はその中でも小江戸、川越を取り上げた。小江戸の旧き街並みに終始するわけではないのだが、軽く川越の景観のことに触れておく(①)。
①OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO・13mm(35mm判換算26mmで撮影)・絞りF6.3・1/60秒・ISO320・‐0.3EV補正
川越の観光の呼びものとして名高いのはやはり、蔵造りの町並みであろう。なぜ蔵造りの家が多いのかというと、そもそも明治26年に起こった大火がきっかけである。焼け残った建物の多くが、伝統的な工法による蔵造りの建物であったことで、それ以後防火への意識が強まり、建物そのものを防火建築にすることを考えたという。商人は争うように蔵造りによる店(たな)を建てたというが、これまでそれを維持するのには相当の修繕や修復がなされてきたと思う(②)。
②OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO・28mm(35mm判換算56mmで撮影)・絞りF5.6・1/125秒・ISO200
元来、蔵は類焼を防ぐための耐火建築で、川越は必然が先にあり発達した蔵造りの町ということになる。これが江戸の面影を後世に残すこととなり、その街並みは国の「重要伝統的建造物群保存地区」、「美しい日本の歴史的風土100選」にも選定されている(③)。
③OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO・35mm(35mm判換算70mmで撮影)・絞りF6.3・1/100秒・ISO200・‐0.3EV補正
またその中で、近代的な建物もいくつか残っている(④)。
④OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO・15mm(35mm判換算30mmで撮影)・絞りF6.3・1/2000秒・ISO200・‐0.3EV補正
今回あたしが言いたいことは景観のことも踏まえて、前述の中にある。
【これまでそれを維持するには相当の修繕や修復がなされてきたと思いますがね】と、これがそれである(⑤)。
⑤OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO・15mm(35mm判換算30mmで撮影)・絞りF5.6・1/320秒・ISO200・‐0.7EV補正
そして次の文章は『NO8 ふたつの重要文化財』にある一節に手を入れたものだが、これも読んでいただきたい。
【建物等歴史文化に保存修復工事等が入れば生き延びていくだろうが、そうでないもの、時代の経緯や文化的価値がないと踏まれたもの。そうした文化財にも指定されずになくなっていった建造物等は結構ある。もう少し頑張れば文化財になりえたかもしれないが、価値がないと烙印を押されたもの、あるいは時間の狭間で消えていったものは星の数ほどある】
以前からあたしは各所で同じようなことを言っている。つまり文化財のように成り得るもの、そこからこぼれていくものとの差がそこにある。(⑥)
⑥OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO・12mm(35mm判換算24mmで撮影)・絞りF6.3・1/250秒・ISO200・‐0.3EV補正
しかし文化財になるということは、そこにいろいろしばりが生ずるらしい。つまり我が家であっても、勝手に手を入れられないということである。現状変更等に一定の制限が課されるわけですな。歴史的な価値に現代の様式や利便性を取り入れればそうしたものにキズがつく。所構わず勝手にエアコンなど取り付けられないということであろう。
文化財補助金が交付されたり、修理等に対する国庫補助を行うなどの措置が講じられているらしい。しかし暮らしより制限を優先されれば、生活に支障が出ることは間違いない。そこで文化財の指定を断る人もいると聞く。勿体ないと思うが、こればかりは致し方ない(⑦)。
⑦OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO・13mm(35mm判換算26mmで撮影)・絞りF6.3・1/200秒・ISO200・‐0.3EV補正
大別すると文化財と指定され、それを良しとする人。そこからこぼれ消えゆく運命の建造物等。文化財の指定を拒否する人、というところであろうか(⑧)。
⑧OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO・15mm(35mm判換算30mmで撮影)・絞りF5.6・1/2000秒・ISO200・‐0.7EV補正
また川越のように貴重な建物が多く残ってそれが観光地、景勝地となれば、当然観光客が集まってくる。そうなれば平穏な日常から遠退いていってしまう。本来の姿から逸脱して観光地然となってしまう。そうした町はどこも似たり寄ったりになる運命にある。それが観光地の宿命であろうが、観光地になれば本来の町としての魅力が希薄になってしまうこともまた事実なのである。
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1952年、東京生まれ。70年、アルバム『万年床』で、フォークシンガーとしてメジャーデビュー。以後ラジオパーソナリティー、俳優、エッセイスト、タレントとして活躍。写真やカメラにも造詣が深く、写真家の顔も持っている。『町の残像』(日本カメラ社)など著書も多数ある。
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