はっきり言って廃屋である。時に廃屋に見えて人が住んでいることがあり、心の中で「すみません。あたしの早とちりでした」などとつぶやき、頭を下げることもあったりする。どう考えてもすがれていて、まさかここに人は住んでいないだろうと思うと、あにはからんや隣接するスペースに車が停まっていたりして、人が住んでいることが分る。
しかし写真の家屋は間違いなく廃屋である。もしここに人が住んでいたら驚きである。ここの前を通るたびにいつも気にはなっていたが、もう何年もこの状態である。というか、年を経ていくほど見事にうらぶれていく。今や、蔦が家の中にまで入って茂っている。持ち主はどうして今まで――というか、こうなるまで放っておいただろうか? 蔵まであるから、なかなかのお宅だったのだろう。
持ち主は放っておいているのだろうか、それとも他の理由があるのではなかろうか。
最近テレビのニュース番組等の中でもこうした廃屋を取り上げている。人口減少や高齢化等の社会情勢の変化に伴って、住む人間のいない家屋が表面化している。ここ何年か、所有者不明土地がかなり増えて、この問題は都市部に限らず、全国的に重要な課題のひとつとされているとのことである。
たとえば「不動産登記簿や公簿、等を頼りに調査しても、まるで所有者が判明しない、または判明しても連絡がつかない」こうした事例を所有者不明土地と呼ぶらしい。
理由としてはいろいろ考えられる。子どもなどの相続人がいない場合や、相続人が決まらなかった場合。相続人が登記簿の名義を変更していない場合等々考えられる。またマンションなどの大きな物件になると、所有者が何人かいる場合もあって、その中のひとりが欠けても、取り壊しなどが出来ないと聞いたこともある。
なんにしても近所の人には、迷惑ってなことになるんでしょうな。新築して、あるいは改装して「どうだこの立派な我が家は、さっそく知り合いを呼んでパーティってなことをやろうじゃないの」。
二世帯住宅ならぬ、見せたい住宅である。ところが招待された人は、見せたい住宅より、まずこのお隣の廃屋が眼に入る。いろいろ自慢したい主人も皆の視線を追って、「さあさ、さあさ、入って下さい」と自慢の家にいざなう。
前述のように、こうした物件がどんどん増えているという。しかし法律があるからどうにもできない、その法律をどうにかしなくちゃ――現行でどうにかしているのかな?
RICOH GRⅢx(35mm判換算40mm)・絞りF4.5・1/160秒 ・ISO200
RICOH GRⅢ(35mm判換算28mm)・絞りF5.6・1/640秒・ー0.3EV補正・ISO200
RICOH GRⅢ(35mm判換算28mm)・絞りF5.6・ 1/250秒・ISO200・−0.3EV補正
RICOH GRⅢ(35mm判換算28mm)・絞りF5.6・1/400秒・ISO200
1952年、東京生まれ。70年、アルバム『万年床』で、フォークシンガーとしてメジャーデビュー。以後ラジオパーソナリティー、俳優、エッセイスト、タレントとして活躍。写真やカメラにも造詣が深く、写真家の顔も持っている。『町の残像』(日本カメラ社)など著書も多数ある。
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