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top コラムなぎら健壱の「遠ざかる町」第47回 犬も歩けば被写体に……④

なぎら健壱の「遠ざかる町」

第47回 犬も歩けば被写体に……④

2026/02/18
なぎら健壱

西中通地域安全センター。 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF5.6・1/200秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

 

月島を歩いている。この月島は中央区にあって最も下町の雰囲気を残しているエリアである。町をジグザグに歩いているのだが、そうした景観が見事に失われつつあるのが眼に入る。ということは「下町の風情を残しているエリアである」ではなく、「エリアであった」と過去形に変わってしまったということだ。しかしそれは昨日今日に始まったことではなく、足を向けるたびに顕著に感じてはいた。今回、まだそうした景観等を垣間見ることが出来るのであろうか? そんな思いを抱いて歩みを進めてみた。

 

かつての月島では多くの長屋形式の住宅を眼にすることが出来た――東京でも珍しいエリアであった(①)。

 

 

①まだ長屋を眼にすることが出来る。 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF6.3・1/30秒・ISO320・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

それが今では当時と比べ80パーセントぐらい失ってしまったのではなかろうか。長屋は消え、その場所には高層ビルが建った(②③)。

 

 

②こうした緑の多い路地もある。 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF5.6・1/30秒・ISO320・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

③ところが見上げれば、高層ビルが目に飛び込んでくる。 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF7.1・1/80秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

今もそうした高層住宅の工事が着々と進んでいる(④)。

 

 

④のべつ幕無しに高層ビルが建ってきている。 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF6.3・1/125秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

長屋形式の家は、例えば三軒長屋だとすると、その内の二軒が改築をしたいと提案しても、残る一軒が首を縦に振らなければそれはかなわない。三軒が同時に合意に達さなければ、取り壊しも改装も、新築も出来ないという状態である。

 

「それではみなさん、取り壊すことに意義はありませんね? ではその方向で進めてまいりましょう」と結託をしなければ、それは現実とはならないのである。月島ではそうした合意が様々なところで行われたのだろう。長屋形式の住宅はひとつひとつと消えて、高層ビルがそびえる。それは一棟の長屋だけにあらず、高層ビルの建つエリア全体の住民がそれに承諾をしなくてはかなわないことで、それが現実としてあったということであろう。高層住宅が建ち、長屋住まいだった人たちが取り決めでそこに移り住むこともあっただろうし、違う地に転移ということもあったことだろう。そうしてこの町は変わりつつある、いや変わってしまった(⑤)。

 

 

⑤中には、こうした歴史のある住宅も残ってはいるが……。 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF6.3・1/60秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

話は変わるが、月島がもんじゃの町として名を馳せていることは周知のことであろう。月島がそうしたもんじゃの町になってしまったのは、いつ頃からであろうか? あれは70年代の初めの頃だったか、その頃、この町のお好み焼き屋ののれんをくぐったことがあったが、町にはお好み焼き屋が2、3軒ぐらいしかなかったと記憶する――もっともその頃はもんじゃ屋ではなく、お好み焼き屋であった。

 

現在、数十軒のもんじゃ屋が軒を連ねるメインストリートではあるが、本来は月島西仲通り商店街なる名称である。それがいつの間にか、もんじゃストリートと呼ばれるようになり、メインストリートばかりではなく、横道や裏通りももんじゃ屋一色になってしまった。昨日まで違う商売をしていた商店が、ある日突然もんじゃ屋に変身する。もっともそれが観光客を呼び寄せたとともに、町が違った顔つきを見せるようになってしまったのである(⑥)。

 

 

⑥もんじゃストリートの案内地図。拡大して見てみると、もんじゃ屋だらけである。 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF5.6・1/30秒・ISO160・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

街を歩いていて、かつて撮った写真があるが、その定点すら分からない(⑦⑧)。

 

 

⑦かつて、こんな素敵な路地があった。

[撮影日 2026年2月17日]

 

 

⑧今では、その定点すら分からない。 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF6.3・1/80秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

そうそう、この商店街はアーケードのある歩道が続くが、その上部(2階部分?)を見ると、過去の店の屋号の書かれというのが残っていた。その屋号と階下の店舗は違う名前であった。果たして商売替えをしたのか、代が変わってしまったかは知るところではないが、かつての商店街の面影が垣間見られた(⑨)。

 

 

⑨なんとなくこうした景観を眼にすると、嬉しくなってしまうんです。 

Nikon D3・28mmF2.8・28mmで撮影・絞りF8.0・1/200秒・ISO200・AWB・RAW[撮影日 2008年2月24日]

 

 

今回カメラを片手に、まだあるのかなと見上げると、もうなくなっていた(⑩)。

 

 

⑩これもまた定点すら分からない。 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF5.6・1/100秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

たったそれだけのことなのだが、「あぁ~月島は変わってしまったなぁ」と思うのである。ちょっと離れたところにこれを発見(⑪)。

 

 

 

 

⑪ちょっと離れた場所に、これを発見した。 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・8.8mm(35mm判換算24mm)で撮影・絞りF6.3・1/160秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

月島西仲通り商店街の中ほどに交番がある。今は交番ではなく、西中通地域安全センターとなっているが、警視庁管内最古(1926年・大正15年)の建造物だという。なかなかに趣のある建物で、これはなくしてもらいたくないなぁと切に願うのである(⑫)。

 

 

⑫現存する都内最古の交番である。 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・17.5mm(35mm判換算48mm)で撮影・絞りF6.3・1/60秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

この月島は戦災を受けなかったため、銅板で囲われた家屋が至る所で見受けられた。前回書いたように関東大震災の時、その轍を二度と踏まないようにと、つまり火の粉から家を守るために外壁を銅板で囲ったのである。月島で多く見られたそうした家屋だが、それが今回全くと言っていいほど眼にしなかったのである。つまり消えてしまったわけである。注意して見てみると、商店街のある2階の部分にその名残を発見した(⑬⑭)。

 

 

⑬ほんの一部だが、よくぞ残ってくれておりました。 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・25.7mm(35mm判換算70mm)で撮影・絞りF6.3・1/80秒・ISO160・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

⑭ 

SONY Cyber-shot RX100Ⅲ・ZEISS バリオ・ゾナーT*8.8-25.7mmF1.8-2.8・17.5mm(35mm判換算48mm)で撮影・絞りF6.3・1/60秒・ISO125・AWB・RAW[撮影日 2026年2月12日]

 

 

もう少しくまなく歩けば名残をいくつか発見できたのかもしれないが、道程では眼には止まらなかった――あんなにあったのにな~。

 

だめだ、これ以上見当たらない――遠ざかっていくものが見当たらないんですよ。こうなったら佃の方へ行ってみよう。あちらには、まだいくらかは被写体が残っているのかもしれない。

(続く)

 

 

 

◉今回のお供は……SONY Cyber-shot RX100Ⅲ   撮影日は、2026年2月12日

 

 

 

 

Profile

なぎら健壱

1952年、東京生まれ。70年、アルバム『万年床』で、フォークシンガーとしてメジャーデビュー。以後ラジオパーソナリティー、俳優、エッセイスト、タレントとして活躍。写真やカメラにも造詣が深く、写真家の顔も持っている。『町の残像』(日本カメラ社)など著書も多数ある。

 

 

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