中心に『カメラ毎日』編集者の山岸章二、奥に座るのが森山大道/IMAGE SHOP CAMPにて(写真提供:編集部/撮影者不明)
このインタビュー(前編)からしばらくたった後、私は興味深い記事を見つけた。かつて「CAMP」に参加した写真家・北島敬三が中心になって活動するphotographers' galleryが発行する『photographers' gallery press 』no.5のなかの特集「東松照明インタビューWORK SHOP 写真学校のころ」と題された記事だ。写真評論家の飯沢耕太郎と北島敬三の二人が東松にインタビューをしたものである。そのなかの「終焉、そして、その後」と小見出しに続く記事には以下の記述がある。
−I (飯沢) 2年で解散みたいな形で終わりますよね? その時、何か宣言みたいなことはしたんですか?
東松 言い出しっぺは森山で、もうやめようって。荒木はもっと続けようと言って。でも、僕は常にまとめ役だから。自分の意見は言わずにみんなの意向を聞いて。
−I 森山さんがやめたいって言われた理由ってあるんですか?
東松 CAMPみたいなことやりたい、ってことがあったんじゃないですか。
−I WORKSHOPという枠のなかではやることはやってしまったと。
東松 うん。だって、週に一回だけだもんね。
−I もっと濃密なつきあい方をしたかったと。
東松 それは本人に聞かないとわからないことだけど。
−I 東松さんとしてはまだ続けたいというところがあったんですか?
東松 いやいや、教室は挑発のメディアという捉え方をしていたので全然なかった。経験上、2年とか3年というのはひとつの区切りだというね、長く続けると学校屋になっちゃうという恐怖があったからね。だって全然写真が撮れなかったから。
(『photographers' gallery press no.5』2006年 p124)
東松にはもはや確かめようがないが、二人の認識と記憶には大きな相違点がある。
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「〈CAMP〉というのは僕がつけたんだよね、いる連中がキャンプにいる連中みたいで、おもしろかったんだよ。〈Image Shop〉というのは、要するに、あんまりサロンとか何とか、もうそういうふうにしたくなかったんだよ。みんな、結構ヤンチャな連中だし。ただ写真を飾るだけの場所じゃなくて、写真を売りたいとか、何かを作ったら売ったらいいとか、そういうふうなことを少し広く考えて、遊びの場所として。やっぱり何とかサロンとかギャラリーじゃなくて〈Image Shop〉にしようと。グッズみたいなものを置いたり、ジュークボックスを置こうとか。
実際、夜中になったらさ、新宿二丁目だから、オカマは来るわ、みんな勝手に上がってくるわ…。でも、ショップと書いてあるからさ、ギャラリーじゃないからさ、何だろうなと思う。一緒に酒を飲むし。だからクラブよ、むしろ、僕に言わせるとね。新宿二丁目のクラブだよな、放蕩クラブ」
『インディペンデント・フォトグラファーズ』には森山のメンバーへ呼びかけの言葉が書かれている。
「さあ、場所は出来た。ここからいったい何をしてゆくのか」
(『インディペンデント・フォトグラファーズ』東京書籍・1989年p127)
「いや、そのとおりだよね。場所をつくったんだから、この場所をどう使っても、好きに使ったらいいんじゃないと、それぞれがお金を出しているんだし」
やっぱり集うことがひとつの目的であり、重要なことだったのですか?
「いや、それもちょっと違うんだよね。別に、俺、あんまり、もともと集うのが好きじゃないんだけど、だけどWORKSHOP写真学校の連中が、そういうふうに集まってきて。でも、なんかやりたいと、もうちょっと。もうここで終わるのはつまらないというので、場所を持ったわけだから」
まだ、ここで終えられないみたいな感じだったのでしょうか?
「なんかここで終わるというのはさ、あまりにもさ。じゃあ、今まで何だったのという。今まで一緒に酒を飲んだり、ワァワァ言ったの、何だったの?って。やっぱり最終的には、それは写真というものがはっきりあっての集いだし、あっての遊びということだね、うん。
最初、集まったのは8名ぐらいかな。そうしたら、もう彼ら同士でミーティングして、じゃあ、次、俺は何日から展覧会をやるよ。何日からどうするよって、もう勝手に動いていた。別に僕があれこれ言うことないし」
もしも「WORKSHOP写真学校」が続いていれば、そもそもこの流れにはなっていなかったというこことですね?
「まだ続いていたら、「CAMP」はなかったかもしれない、もしかしたらね。でも、それは仮定の話だから」
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