写真家・大西みつぐ(1952-年東京都江東区深川生まれ。1974年東京綜合写真専門学校卒業)はプリズムのメンバーではなかったものの、数回の展示に参加するかたちでプリズムの活動に深く関わっている(グループ展「SENSEITIONAL PRISE SUPER-PHOTOGRAPHY SPECTACL SHOW」・76年7月28日〜8月6日 /個展 大西みつぐワンダーランド「写真趣味」展・同年10月20日〜10月25 など)。なお、大西はプリズム以外にも、別の自主ギャラリー、写真運動(活動)にも関わっていた。このワンダーランド「写真趣味」展はいわゆる「プリズム」調とはかなり趣が違う(この理由はのちに触れたい)。
「僕はメンバーではないですが、当初の12人のメンバーのメンツを見ると、日吉(東京綜合写真専門学校)で言えば学年が前後しているのと、日吉の学生とは限らない人たちも入っているんですよ。僕の2つ上、3つ上ぐらいの人たちは学園紛争で学校はロックアウトされている時期があったから、学年が前後している。でも、全然、顔がわからない人たちもいますけども、半分以上は知っています」
大西の言葉通り、「プリズム」には東京綜合写真専門学校の研究生、卒業生が設立に深く関わっていたことは資料などから知ることができる。『インディペンデント・フォトグラファーズ』にも「日吉にある東京綜合写真専門学校の、重森弘淹、石黒健治、土田ヒロミなどのゼミをとっていた研究科の学生が中心となり始められた」という記述がある。
メンバーはあらためて次の通りである。谷口雅、桑原敏郎、住友博、平木収、小部俊裕、阿部棟也、守屋裕司、吉村礼仁、牧田アダン、重松一穂、野村三郎、棟近好一。
ギャラリーの設立は東京綜合写真専門学校の学生たちのあいだでどのように生まれたのでしょうか?
「日吉の場合は、本科よりも、むしろ研究科という卒業してからの上のクラスに対して、(校長・写真評論家である)重森弘淹先生が作家活動を推奨、旺盛にしていました。研究科がそういう状況(ギャラリー設立)を、いい意味で用意したのかなという気はしています。ただ基本的に言うと、やっぱり『写真批評』から来ているんですよ」
『写真批評』(※)とはかつて東京綜合写真専門学校の出版局が発行していた雑誌だ。意外な発言だった。
『写真批評』隔月刊・第1号(東京綜合写真専門学校出版局・1973年4月)
「『写真批評』は最初、隔月で出していたのかな。それが季刊誌になって。編集長が当時、桑原甲子雄さんで、発行人が重森弘淹だったんですね。で、谷口(雅)さんなんかは、もっぱらここの編集も含めて、さまざまな部分(研究科で講師をしていた)に関わっていたと思います。研究科を切り回す一方、この雑誌の重要な人物だった」
『写真批評』季刊・第5号(東京綜合写真専門学校出版局・1974年2月)
「プリズムの最初の展覧会は桑原甲子雄さんでした。最後の展示は大辻さんですけども、その辺の流れというのは、もう非常に自然で。大辻清司さんも日吉で紛争前までは教えていたことがあるわけです。だから桑原甲子雄さん、大辻さん、重森弘淹、『写真批評』も含めた陣営としての枠組みがありますよね。
だから僕から言うと、3つぐらい上の先輩で、学園紛争を経験して、なおかつその研究科で、結構難しい写真を論じたり、撮ったり、語ったりしている人たちで、その人たちが新大久保の駅前にギャラリーをつくった。そんな自然な流れとしては見ていましたね。あ、当然、そうなるだろうなと思って。
具体的な場として、集まれる場所が研究科という授業形態の中でも良かったんでしょうけども、外にこういう拠点を持つということが、たぶん当時の70年代の学園紛争後の一つの、なにか課題だったような気がするんですよね。ただ、紛争でロックアウトしたりなんかして、それがどういうふうな形で学校再開と関わっていったかというのは、僕なんか、まったくわからないところで、その渦中にいた人たちが、どういうふうにそこを整理していったのかなという。その形がひょっとしたら、その写真としての拠点を持つことじゃなかったかなとは、当時、僕は思っていたんですね」
ちなみに、なぜ、新大久保だったのか?
「知らない。どうしてだろうなぁとは、僕も思っているんだけども」
※『写真批評』とは東京綜合写真専門学校が1973年4月から翌74年8月にかけて7冊が刊行された批評誌。発行元は大西が語るとおり東京綜合写真専門学校の出版局になる。写真に関する批評、作品、対談などが掲載された読み物中心の硬派なつくりだ。かつての雑誌の奥付を確認すると、確かに発行人に重森弘淹(写真評論家)、編集長に桑原甲子雄の名前がある。定価400円。2022年秋に50年の時を経て復刊を予定している。
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