新しいレンズではありませんが、ペンタックスユーザーの間では本レンズの評価は悪くないようです。このレンズどうすか?と尋ねると開放から使えますよ、ってコメントが必ず返ってきます。筆者も同じ印象です。
ただし開放絞りではボケ味は最高にいいですが、ピントの芯が少しだけ曖昧になることが多くなるような印象です。これを軟らかいと表現するのかどうかはまた別の話になります。
筆者の場合はおまじない的に1/3絞りほど絞るのもいいかなと考えます。ボケの大きさはほぼ同じまま像が締まるからです。何がなんでも絞り開放でっていうのは表現の上ではどうなんでしょうね。ならば開放値F1.8とかF2とかの85mmレンズでいいじゃないとか言われちゃいそうだけど、ここで指摘しているのはF1.4だからこそ設定できるF1.6とかF1.8の絞り値の描写なわけです。
背景はグリーンカーテンですが、良い感じにボケました。宿命的に周囲に口径食の影響はありますが、まったく問題にはなりません。被写体の輪郭には部分的に色収差の影響が若干ありますが、この条件ではあまり気にならないですね。
ペンタックスK-1 MarkⅡ・smcペンタックス FA★85mmF1.4 [IF]・絞りF1.6・1/400秒・+0.3EV補正・ISO100・WBオート・RAW(モデル:ひぃな)
ポートレート用として決定的な焦点距離だし、使いやすいのですが、EDレンズ入っているけど、倍率色収差は残存しております。明暗差の大きい条件でのフリンジを感じることが多いですね。
フィルム時代ではさほど気になることはなかったのですが、デジタルではわかりますね。なぜか人物以外の被写体だとさほど気にならないのですが、このあたりに時代を感じてしまいます。気になる場合は後処理で軽く補正しちゃいましょうか。
本レンズの大きな評価はボケ味感でしょうか。クセがまったくありません。硬さもまったくありません。合焦点から外れたところから少しずつふんわりとボケていきます。
僅かなフレアはF1.8くらいまで残るようですが、これはポートレートだと良い感じに作用します。年寄りにはなかなか使いづらい言葉ですが、全体に優しい印象を持つレンズなんですよね。
開放時には少し周辺光量が落ちますが、主力イメージを注視させることに役立ちます。二段ほど絞ればこれも問題ありません。
0.85mの至近距離撮影で、合焦点とボケのバランスを見てみます。少し絞ると合焦点はキリキリとする描写をしますがボケにはまったくクセがありません。
ペンタックスK-1 MarkⅡ・smcペンタックス FA★85mmF1.4 [IF]・絞りF1.8・1/640秒・-1EV補正・ISO100・WBオート・RAW
窓式の距離指標ですね。AF/MFの切り替えはクラッチ式です。FA★レンズに共通しています。フォーカスリングの幅は広めにとられており、MFの操作感も上々です。
うちにある個体は、同じくうちにあるK-1(II)くん(※)とのフォーカスの相性が今ひとつな感じでした。
したがって、開放絞り近辺にて撮影をする場合は潔くライビューに切り替えて、コントラストAF、顔認識AFを使用した方がはるかに合焦精度が高くなりました。ライブビュー時のAFはカメラが原因かレンズが原因かわかりませんが、スピードは遅めで迷いやすいタイプで、もうちょっとなんとかならんのかとも思うのですが、なんとしてもキメたいという場合にはMFでのフォーカスの追い込みよりも安定感や歩留まりは上がりますね。
位相差AFでの撮影だと、画像をチョイスする場合は合焦したコマをまず探して粗選びして、そこから好きなコマを探すような印象になります。これは仕方ないですねえ。ペンタックスが今後も「一眼レフでゆく宣言」には共感いたしますが、場合によっては利便性がありがたいという場合もあるのでライブビュー時には像面位相差AFができるようにしていただけると助かります。
フォーカスはライブビューでの顔認識AFを使用していますが、捕捉能力は現代のミラーレス機よりは劣りますし、動きがあると測距不能になることもありますが、位相差AFよりも高精度です。大口径レンズを使用する場合は積極的に利用した方がいいかと。
ペンタックスK-1 MarkⅡ・smcペンタックス FA★85mmF1.4 [IF]・絞りF1.6・1/1600秒・+0.3EV補正・ISO100・WBオート・RAW(モデル:ひぃな)
デザイン的にはデカいお椀みたいなフードも高級感ありますし、好みです。フォーカスのスピード、力強い動きも悪くないですね。フォーカスクラッチによるMF切り替えも簡単で素早く行えます。でも正確にMFで合焦させるにはそれなりの鍛錬は必要になってくるでしょう。
本レンズの後継である現行レンズのHD PENTAX-D FA★85mm F1.4 ED SDM AWの超絶優秀な描写性能は筆者も伝え聞いておりますが、ポートレートに徹底してこだわる人以外は少々持て余しそうな感じもあります。いや、繰り返しますが、筆者には絞り環を必要としているカメラたちがあるからです。嘘です。貧しいので導入することができないのです。
※筆者のPENTAX K-1はアップグレードサービスでMarkⅡ化済み
手前のオレンジ色のボケは百合でこれを撮影しようとしていました。散歩中の老人が通りかかったのでフォーカスをそちらに移動させてみました。前ボケもいい感じですし、合焦点のシャープネスも見事です。
ペンタックスK-1 MarkⅡ・smcペンタックス FA★85mmF1.4 [IF]・絞りF1.8・1/500秒・-1EV補正・ISO100・WBオート・RAW
レンズ構成図入りのエンブレムであります。これ見てはじめてわかったんですが、構成図の配置の仕方が通常とは左右逆ですね。
ペンタックスレンズ総合カタログ【35mm一眼レフ用・1994年版】
(資料提供:リコーイメージング株式会社)
smcペンタックスFA★85mm F1.4 [IF]
- smcペンタックス FA★85mmF1.4[IF]SPECS
◉マウント=ペンタックスKAF2マウント
◉レンズ構成=7群8枚
◉画角=28.5°
◉絞り方式=完全自動絞り
◉最小絞り=F22
◉測光方式=開放測光- ◉焦点調節=インナーフォーカス、AF/MF切替え可能
◉フィルター径=67mm
◉最短撮影距離=0.85m- ◉最大撮影倍率=0.11倍
◉フード=専用フード(MH-RBD67)付
◉大きさ=79.0(最大径)✕70.0(全長)mm
◉重量=550g
◉発売日=1992年(平成4年)7月
◉価格=98,000円(ケース・フード付・税別)
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