ペンタックスLXはペンタックスブランドの35mm判フィルム一眼レフではMFもAFも合わせて唯一のフラッグシップという扱いのようです。
もともとペンタックスは大衆機路線の一眼レフをウリにしていたわけですから、高性能かつ高価なフラッグシップは似つかわしくないという話も何かのコラムで読んだことがあります。なんと失礼なことを言う人がいるのでしょうか。
こうした意見が出てきてしまうのは、ボディサイズが小さいこと、すなわち小型軽量だったからではないかと思われます。ボディのみで570g(FA-1つき)と軽いですね。それまではフラッグシップ=旗艦=大艦巨砲という感じでしたから、LXはかなり華奢なカメラに見えましたね。
同時期に登場したフラッグシップがニコンF3とかキヤノンF-1みたいな質実剛健なモデルでしたからLXは女性的というか、美しいフォルムでした。ペンタックスの設計思想にはスジが通っていますが、デカくて重いのは頑丈であるというステレオタイプな神話も当時はまだまだありましたからねえ。それに依頼仕事などに小さいカメラで赴くと、どうにも信用されないということは過去何度か経験していますから、いわゆる「見せカメラ」って、三流のプロには必要なんですよ。
それに、ペンタックス自身がフラッグシップは6×7(67)であるとアナウンスしていた記憶があるので、LX登場時もその存在感が少々弱く感じたのかもしれませんねえ。
小型軽量だと、信頼性が薄いという疑惑を持たれることがありますが、うちにある2台のLXは四半世紀の間、故障はないです。
もっともそう使用頻度は多くはないし、前回述べたように、防塵防滴を信用して、カメラを濡らしながら使用したということもほとんど記憶がありませんでした。AE機は電池を抜いて、保管するべしとありますが、それでもしばらく使わずに保管していたカメラに電池を入れて、電源をオンにした途端昇天してしまったという経験もしております。これが困ります。泣いてしまいます。
でもLXでも似たような使い方をしておりますが、現時点でも問題は生じておりません。これはとても心強いけど、いっそのことLXを完全フルメカニカルにしたLX-Mとか欲しかったぜ。
小型軽量に貢献をしているのはボディ上下カバーが特殊アルミ合金であることも一因でしょうね。なんか真鍮が命って感じの当時で、カメラカバーに新しい材料を取り入れるのは、かなりの英断なんじゃないかと。でも、塗装が剝げると、ステンレスの銀色が出てくるんじゃないかなあ。それが少しイヤかなあ。そういう妄想癖を持っているものですからペンタックスLXのチタンもわりとよく使用しています。なかなか品の良いチタンカラーで、smcペンタックスFA 77mmF1.9 Limited(後継の現行品はHDペンタックスFA 77mmF1.9 Limited」になりました)のシルバータイプの鏡胴カラーとよく似合います。
実際にLXを持ってみるとボディが薄いためか少しグリップ感が不足気味という印象を持ちますが、LXには別売の純正アクセサリーとしてグリップ用意されていました。
それも、デジタル一眼レフみたいな無骨な“縦グリ” じゃないですよー。かわいいサイズでグリップAとBの2種用意されています。
「グリップA」は木製で自分で手の形に削って加工できるタイプ、「グリップB」はプラスチックタイプであらかじめ指の形状に合わせて加工されていました。器用な人はグリップAをナイフとヤスリを用い、塗装をしてボディに取り付けて、宴会の席で世界に2つとないグリップであると自慢していました。そんなことより写真を自慢して欲しいのですが。
でもこうしたグリップの加工はボディ側には影響を及ぼさない、慎ましいカスタマイズというか、良い感じじゃないのかなあ。あ、筆者はですね、不器用なのと、そんな加工なんかしている時間があったら、一杯やるか、本でも読んでいたいので自分では手をつけません。怪我とかすると不愉快だし。
でも過去からこれまでの間、中古カメラ店のジャンクボックスからは少なくない数の加工されたグリップAを発見しています。LXを売り飛ばすとき、そのまま装着して出してしまうんだろうなあ。
グリップのボディへの固定はネックストラップアイレットを使用するので、グリップを装着すると、ストラップは縦づりになりますが、グリップBは、ネックストラップアイレットをグリップに取り付ける加工を純正で受付をしていました。こういうところが泣きます。さすがです。考えた人と握手したいですね。
でも、グリップBにストラップを取り付けて、モードラや長焦点レンズをつけて持ち運ぶのは強度的には少しリスキーな感じがします。自分では怖くてやったことないです。
でもグリップを装着したLXは見た目もなかなか良い感じになります。レンズ鏡胴の短い単焦点レンズを装着して、さりげなく持ち運ぶって、学者肌の偏差値の高い人みたいな感じしませんかね?しないですね。
LXはシステム一眼レフですからファインダーも交換式ですね、前回お見せしたFA-2なんか泣けますね。いかにアクセサリーシューがカメラのデザインを見出すかという見本ですね。でもね、一週間経っても、うちにあるはずのFA-1が出てこないんですよね。どなたかお持ちになっていませんよね。今なら怒らないので返してくださいね。
ファインダースクリーンも交換できます。MXのスクリーンもファインダーが暗くなるけど使えるようです。でもLXのスクリーンはMXには使えないそうです。いじわるですね。ペンタックス最終期のシルバータイプのLX2000が登場した時にスクリーンも一新され、ナチュラルブライトマットスクリーンと呼ばれる明るくピントのヤマが掴みやすいタイプのものが出てきます。これはAF一眼レフのZ-1P用のものらしいです。
この時期に新しいスクリーンを開発してくるところなんかは落涙ものですね。通常のLXでも、ナチュラルブライトマットスクリーンに交換することもできました。MFのフォーカシングの感想って、本当に人それぞれなんですが、LXの最終タイプのナチュラルブライトマットスクリーンは評価高いですね。でも前のものでも実用上はそんなに問題ないと思いますけどねえ。あれば欲しいですよね。
測光はIDM(ダイレクト)測光だからファインダースクリーンの種類が変わっても露出ファクターの問題はないわけですね。
この測光方式はフィルム面の光を測りますので、カメラにフィルムを入れないでAEの設定で空シャッターを切りますと想定よりも遅いシャッタースピードで走行することが知られています。フィルム圧板を測光するのだから当然です。
ペンタックスLXチタン+smcペンタックスFA 77mm F1.8 Limited
チタンカラーバージョンにLimitedレンズが似合うんですよね。こうなると43mmもシルバー買っておけばよかったとなるんだよね。
LXチタンシャッターダイヤル周り。文字が立派に浮き上がっています。指で触れただけで、設定シャッタースピードがわかります。
左からグリップA、グリップAの加工品、グリップB。グリップAはこのままの状態で売られていたので可哀想になって入手。
グリップAを装着。右手での保持が楽になったため、手ブレのリスクは軽減します。手袋の使用とか大きめのレンズ付けてからもいいかも。
グリップAをつけると本来は横位置でカメラのネックストラップアイレットがかからない理屈である。ただ、グリップAは少しスリムに量を削った方がいいよね。このままだとボディ下に飛び出してしまう。ワインダーをつけてごまかそうとしたら、ワインダー本体が邪魔をして装着できず。
グリップAの加工品だと思われます。なかなか美しい仕上げで、販売品レベルですね。ネックストラップアイレットつき。ストラップ側のナスカンに当たる部品は特別なものですので紛失注意です。
ストラップつけるとこんな感じに。横位置で吊り上げることが可能です。ただ、過度の荷重を与えると不安になりますね。
ペンタックスLXチタンのカタログより抜粋(資料提供:リコーイメージング株式会社)
- 【PENTAX LX チタン 性能表】
- 型式=TTL自動露出式35ミリ一眼レフカメラ
- レンズマウント=ペンタックスKマウント
- シャッター=チタン幕フォーカルプレーンシャッター ●オート:無段階1/2000~125秒(ASA100、常温・常湿) ●マニュアル:機械式1/2000秒~X(1/75秒)・B、電子式1/60~4秒
- シンクロ=FP、Xソケット(専用ストロボ用接点付)
- ホットシュー=アイレベルファインダーFA-・FA-1Wにあり
- セルフタイマー=機械式約4~12秒、チャージ後の解除可能、(始動はシャッターボタン)
- ファンダー=ファインダーおよびフォーカシングスクリーン交換式、視野率:縦98%、横95%、倍率:0.9倍(ファインダーFA-1、レンズ50mm、無限遠)
- ファインダー内表示:①シャッタースピード ●オート:1/2000~1/30秒は(緑)LED、1/15秒~1/4秒は(黄)LED、オーバー・長時間(LT)・およびB・ストロボ充電完了・調光確認表示は(赤)LED ②絞り 交換ファインダーFA-1、FA-1W、(FB-1+FC-1)(FB-1+FD-1)により可能(直読式) ③露出倍数警告 1×以外は赤色指標
- ミラー・絞り機構=スイングバック式多層コート大型クイックリターンミラー ミラーアップ、プレビュー機構付 測光ミラー付
- フィルム装填=マジックニードル式クイックシュアローディング
- 巻上げ=レバー式巻上げ角120度、予備角25度、分割巻上げ可能、巻上げ表示付、モータードライブLX、ワインダーLXで自動巻上げ可能
- フィルムカウンター=自動復元順算式(赤表示:20、24、36)、巻戻しに連動
- 巻戻し=クランク式、巻戻しボタン自動復元、モータードライブLX、ワインダーLXによる巻戻し可能
- 多重露出=巻戻しボタンで多重露出機構切換え 巻戻し連動カウンターを併用して任意コマへの多重露出可能
- 露出計=IDMシステムTTL中央重点全面測光 ●マニュアル測光範囲:EV1~19(F1.4レンズ、ASA/ISO100) ●オート測光範囲:ASA/ISO100でF1.2・125秒~F22・1/2000秒(EV-6.5~20常温・常湿) ●受光素子:SPDセル1個 絞り込み・ミラーアップ時も自動露出可能
- フィルム感度目盛=ASA/ISO6~3200(露出倍数1×の時)
- 露出補正=露出補正ダイヤル 4×・・2×・・1×・・1/2・・1/4(1/3ステップダイヤル式)1×でダイヤルロック付、補正警告ファインダー内表示
- 露出計スイッチ=ON:シャッターボタンまたは補正ダイヤルロックボタン、OFF:タイマースイッチ(約25秒でOFF)
- 電源=JIS-LR44型アルカリマンガン電池、またはSR44型銀電池2個使用
- 電池消耗警告=電圧低下により表示用LEDが点滅、さらに低下すると消灯。別にシャッターもストップする警告装置あり(オート、マニュアル電子式の場合)
- 裏ぶた=交換式(長尺マガジンLX、ダイヤルデータLX、データLX装着可能)メモホルダー付
- 大きさ・重さ=144.5(幅)×90.5(高さ)×50(厚さ)mm・565g(FA-1付 LXボディ)
- 発売時期=1994年6月、期間限定受注生産(1000台)
- 価格=LXチタン 280,000円(アイレベルファインダーFA-1Wチタン、特製本革ストラップ付・税別)
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