少年の目にペンタックスは、当時のニコンFやF2とかキヤノンF-1よりも少しレトロな感じがしましたねえ。とはいえ「PENTAX」のロゴがその当時であっても古臭さを感じたり。それに「AOCO」マークがあるんで、これがまた強調される感じです。マークの由来は、社名「旭光学」の英文字表記「Asahi Optical Corporation」の頭文字ということですね。
1950年代前半に登場した国産初の一眼レフ「アサヒフレックス」は、すべての機種に大きめなAOCOマークが刻印されてましたね。このAOCOマークがついていたカメラって、ペンタックスMEやMXあたりまでなのかなあ。あまり意識して見ていませんでしたが、限定モデルのK-1 MarkⅡをベースにしたJ limited 01の交換式トップカバーの一つにAOCOマークが付いているのがありますねえ。少し欲しいぞ(嘘)
1971年にペンタックスESが登場します。今からちょうど半世紀前ですねえ。世界で初めてM42マウントで絞り優先AEを実現するというエポックメイキングなカメラだと記憶しています。
エンジニアが一生懸命に知恵を絞った感があります。いや、エンジニアは常に知恵を絞っていますね、すみません…。その知恵とはM42マウントの基本規格を変えないまま、開放測光対応が行われたことですね。
ただ、レンズ側にも開放測光用のカムがあるものでないと開放測光は機能しません。当時の富士フイルムのフジカST801やオリンパスFTLなども、開放測光対応のためにM42マウントを定位置で止めるピンとか入れてましたしね。だんだんユニバーサル性が薄れてゆくのかという状況でした。
開放測光対応のM42マウントのタクマーレンズは基本的に「SMCタクマー」と呼びますが、SMCって「スーパーマルチコーティング」の意味だろ?って、少々混乱しましたけどね。コーティングの先進性と新機能の追加を同時に行ったということを知らしめたかったのかしら。それとも他の意味があるんですか?なんかわかりづらくないすか。研究不足なので、どなたか解説をお願いします。
ペンタックスESはバッテリー室の位置がキライですね。従来セルフタイマーの位置にあったところにバッテリー室がデベソみたいに突き出ています。なんだか開発中の試作機みたいじゃないですか。言い過ぎか。それにいま、正常稼働している個体は少ないんじゃないかなあ。中古カメラ屋さんでもあまり見たことないよね。だから筆者もESの使用経験ないです。正直なところあまり欲しくないし。
1973年にはESの記憶回路をICにしたESⅡが登場します。これは好きなカメラですね。うちのはとりあえず生きています。素晴らしいことです。最近活躍してないけどESよりも少しだけ洗練された感じがするのは確かです。
けれど、やはりバッテリー室とか開けづらくないですか?どうも不器用なんで、こういう電池蓋ひとつとっても気に食わないと個人的に点数が下がります。ちなみにES IIと同時に、マニュアル機のSPを開放測光にしたSPFが登場します。待ってました!
ES IIではバッテリー室をボディマウントエプロン部の下に置き、デベソをなくしてセルフタイマーを復活させました。SPFが先のESと同時に登場しなかったことは個人的には謎ですね。普通はメカニカルカメラの絞り込み測光から開放測光への改良の方をまず行っておいて、そこからAE機に進むのが手順だと思いますけど。ま、AE化を急いで、ペンタックスには先端を走る技術があることを世間に知らしめようと考えたのかもしれないですね。
もしかすると開放測光であることを強くアピールしてしまうと旧来のSPユーザーには刺激が強いのではないかと考えたのかもしれないですね。「ESをご覧になればわかるように、将来的には開放測光になりますよ」みたいに時間をかけて刷り込みを狙ったとか。これは筆者の想像ですけど。ただ、メーターが絞り込み測光から開放測光になったということが、天地をひっくり返すほどの改善点になったかどうかというと、開放測光がTTL一眼レフの基本になりつつありましたし、そうでもないみたいですね。
ちなみにキヤノンがFTからF-1、FTbへと進化した時の方が、開放測光の夢みたいな感じがしたわけですわ。カメラ雑誌では「開放測光と絞り込み測光、どちらが優れてるか?」みたいな論議してたしね。絞りこみ測光派は実絞りで測光してるんだから正確だろうって言ってましたけど。悔しかったんじゃないですかねえ。でも絞りこみ測光はアイピースからの逆入光の影響が大きいとか、カメラ雑誌に書かれてました。メーター使わないから知らないんだけど。
それでも当時のペンタックスは絞りこみ測光に固執したのかどうか知りませんが、1974年にSPIIという絞りこみ測光のモデルが出てきます。SPのスピンオフ企画みたいな。
単純にいえば廉価にするための輸出専用機を国内でも売りますか、みたいな考え方かもしれないです。でもこれ、好きなんですよ。のちにペンタックスMZ-Mなんてカメラもあったし、あ、知らなくていいです。そこのあなた、検索とかやめてください。ちなみにSPⅡはM42マウントのペンタックスでは国内では最終機になるみたいですが、海外ではもっと早く売られていたという話もあります。こうなってくるとカルトなクイズとかに使えそうなカメラですね。
ミラーレス機にアダプターを介してM42タクマーレンズつけて、「お古レンズの味」なんてお遊びをやっていると、往時のエンジニアが知恵を絞ったカメラメカニズムの話は完全に忘れているわけですわ。こういうのは本当によくないですね。
PENTAX ES II
全体の印象としてはSPのそれとさほど変わらないのが好印象ですが、細部を見てゆくと色々と楽しめます。ボディの下の厚みが、ライカR7みたいで良くないですか?絞り優先AEが使えるというのがいいみたいだけど、モノクロフィルムしか入れたことないですね。マニュアルでのシャッター速度は1/60秒以下では設定できません。低照度のAEの精度に自信があったんですかねえ。それはたぶんないよね。遊ぶにはバッテリー入れないと面白くないです。この一年くらい使ってないなあ。大丈夫かな。
PENTAX SPF
SPOTMATIC Fって袖に書いてありますけどね。こだわりますよね、この表記に。その理由を誰か説明してください。平均測光に近くないですかねえ、それで開放測光という。メーターのスイッチがなくキャップを外すと電源オンになるということです。いちいちキャップなんかしないですね。私はバッテリーも入れたことないし。やはり減りは早いんですか?ユーザーさん。
PENTAX SPII
SPIIのブラックですね。公式には日本で売られていなかったようです。なら珍品か!みたいな感じにならずに廉価設定なのがペンタックスのいいところです。SPFとトップカバーの金型が同じなんじゃねえのか的な疑惑もあります。同じでいいですけど。ただ、海外では日本より早い発売だったという話がありますね。SPと違いホットシューついています。ストロボ使わないけどね。
わかりづらいんですが、SPIIのブラックの巻き戻しノブの下のダイヤルにSHOE CONTACTと書いてありますね。真ん中に「X」の表記されていますがこれ「FP」にも切り替え可能です(写真上・中)。おそらくホットシューをストロボ用とフラッシュバルブ(誰も知らないか)で切り替える必要があったのかなあと。通常のクロームのSPIIにはこれがなくて、フィルムの枚数の覚え書き窓みたいになっています(写真下)。とくに世紀の大発見でもないのですが、ご存じの方お知らせください。
【ASAHI PENTAX SPⅡ 性能表】
型式=TTL露出計内蔵35mm一眼レフカメラ
使用フィルム=35mmフィルム
画面サイズ=24×36mm
レンズマウント=ペンタックス スクリューマウント(径42mm、ピッチ=1mm)
シャッター=フォーカルプレンシャッター、B、1~1/1000秒、フィルム感度(ASA)表示窓付、セルフタイマー内蔵(6~13秒)
ファインダー=ペンタプリズム式ファインダー、フレネルレンズ・クロスマイクロプリズム付き、像倍率 50mmで0.89倍、55mmで等倍、視野率約93%、視度-1.0ディオプトリー
ピント調整=距離環を回して、ピントグラスの映像をルーペで拡大透視
ミラー=クイックリターン式
巻き上げ=レバー式(160度、分割巻き上げ可能、予備角10度)、巻き上げ完了表示装置付き
フィルムカウンター=自動復元順算式
巻き戻し=クランク式、巻き戻し完了表示装置付き
シンクロ=FPおよびX(JIS-B型ターミナル)、X=1/60秒
露出計=平均測光式・TTL露出計(CdS)、ファインダー内定点合わせ式 ASA20~1600、EV1~18(ASA100フィルム、F1.4 ~16レンズ使用時)、メータースイッチ、連動範囲指標付き
電源=1.3V水銀電池1個(H-B型)
バッテリーチェッカー=ファインダー内に表示
フィルムインジケーター=黒白フィルム、昼光用カラーフィルム、電燈光用カラーフィルム、フィルムが入っていないとき
標準レンズ=SMCタクマー50mmF1.4(6群7枚)および55mmF1.8(5群6枚)、自動絞り付き直進ヘリコイド、フィルターサイズ49mm
距離目盛り=∞~0.45m(∞~1.5フィート)
大きさ=50mmF1.4付き 横幅143×高さ92×奥行き91mm、55mmF1.8付き 横幅143×高さ92×奥行き87mm
重さ=50mmF1.4付き 877グラム、55mmF1.8付き 826グラム(ボディのみ623グラム)
付属品=レンズキャップ、バッテリー、ショルダー、三角金具、肩あて
発売年=1974年10月
発売当時の価格=32,000円(ボディのみ)
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。