top コラム推すぜ!ペンタックス第22回 AF一眼レフ全盛時代に突如現れたマニュアルフォーカス機、ペンタックスMZ-M

推すぜ!ペンタックス

第22回 AF一眼レフ全盛時代に突如現れたマニュアルフォーカス機、ペンタックスMZ-M

2022/04/21
赤城耕一

姿カタチはどう見てもAF一眼レフだけど、その実態はMF一眼レフでした。という人を食ったような仕様のカメラがあります。
 

かつて、ニコンですとF-601M、キヤノンだとEF-Mというカメラがありました。我らペンタックスにもこれが存在します。MZ-Mという一眼レフです。いずれのMF一眼レフも気まぐれにできたカメラではなくて、当初は輸出専用の廉価版の一眼レフだったものを、国内でも販売するようにしたということのようです。
海外では、AFを必要としない、ココロザシの高い写真家がたくさんいるのかしらと思ったら、海外営業のサイドから、とにかく一円でも安いカメラが欲しいという要望からこれらのMF一眼レフが企画されていたわけです。
 

もちろんAF機能を削ぎ落とし、内蔵ストロボも省略してしまえば、かなりコストは安くなりそうです。でも外観を見ますと新規の金型を起こしているカメラが多く、姿カタチにはそれなりの費用をかけていますし、MF一眼レフですから、マイクロスプリットなど、測距付のファインダースクリーンも新規に作らねばなりませんから簡単な話ではないようですね。
 

これらのMF一眼レフカメラを持ち写真仲間内の宴会に参加すると、一度はウケることが知られています。ある意味では、希少カメラですし、話題になることもあるのですが、多くは「こんなもの本気で買うヤツがいたのか」という嘲笑を込めて、こちらを見るわけです。ま、こちらも「こんなもの買うオレってバカでしょ」みたいな自虐ネタとして用意していることもあるのですが。もっともスペック的にネタになるところがないので、すぐに話題は他に移りますので、ウケ効果はわずかな時間しか持ちません。

 

ペンタックスMZ-M+smcペンタックスFA 77mm F1.9 Limited
塗装が似ているというだけで装着したくなるわけですね。でもなかなかよく似合います(トップ画面の姿写真では、MZ-Mに単3バッテリーグリップFG、smcペンタックスAズーム35〜80mmF4-5.6を装着)。

 

俯瞰してみてみると、ダイヤル系操作のカメラのありがたさがわかりますね。電源スイッチを入れなくても、絞りもシャッタースピードも一目でわかりますからありがたいと思うのです。

 

レンズ交換時、少し悲しい思いをするプラスチックマウント……

 

で、肝心のペンタックスMZ-Mはいかがなものでありましょうか。MZシリーズに含まれる1機種ですがMF仕様の一眼レフ。登場は1997年で、本連載でも紹介したペンタックスK1000の後継的な存在です。
個人的にはけっこう好きなデザインですね。ペンタプリズム上にストロボを内蔵していないからでしょうか、良い稜線を描いている印象ですね。カラーはシルバータイプしかないようですが、調べていません。
 

ベースカメラは、MZ-5ではなくて、MZ-3なのでしょうか。露出ブラケッティング機構は省略されているようですが、プレビューボタンとMLボタンは用意されています。このあたりニクい配慮ですね。
ただし残念ですが、マウント部分はプラスチックで少し悲しいです。金属マウントはそんなに高いんでしょうか。機能面では影響はありませんが、レンズ交換する時にプラマウントを見ると、少し悲しい思いをすることになります。

使用レンズは電子接点のあるAレンズ以降の絞り環の存在しているレンズならば、機能的にはほぼ全て使えるようです。
 

シャッタースピード優先AEはシャッタースピードダイヤルを用いて、任意の速度を選び、絞り環をAポジションに設定します。絞り優先AEはシャッタースピードダイヤルをA位置にして、絞り環を用いて、任意のF値を選択することになります。絞り環をAポジション、シャッタースピードダイヤルをA位置設定をすればプログラムAEとなります。
 

接点のないペンタックスM以前のレンズでもメーターが連動するのはエラいですね。撮影モードは絞り優先AEとマニュアル露出を使うことができます。ただし、ファインダー内にはF値は表示されません。ちなみに電子接点があるMFのペンタックスAレンズでも絞り環のAポジション以外ではファインダー内にはF値が表示されません。ペンタックスF、FAレンズのようなAFレンズでは絞り環がAポジション以外に位置していても、任意設定のF値がファインダー内で表示されます。
M42マウントを用いる場合はKマウントアダプターが必要です。レンズ側をマニュアル絞りに設定すれば、実絞り測光が機能します。
 

 

露光補正ダイヤルです。1/2刻みってのはちょっと粗いかなあ。このクラスのユーザーはカラーネガを使うんだからいいという割り切りか。MZ-3にあった、露出ブラケットダイヤルはないですな。

 

 

シャッタースピードダイヤルですね。最高速1/2000秒までだから、前回ご紹介したMZ-5Nと似ていますねえ。

 

MZ-Mのポテンシャルを最大限引き出すにはAFレンズが必須

 

使い勝手はどうでしょうか。とにかく小さく軽いカメラです。MF一眼レフらしく、他のMZよりもタイムラグが小さいようにも感じます。

ペンタプリズムではなくて、ペンタミラー方式のファインダーですね。ファインダー倍率は少々小さいのですが、筆者の個人的な印象ではスクリーンの切れ込みはまずまずです。フォーカシングの追い込みもさほど苦にはなりません。条件によってはスプリットマイクロプリズム距離計も積極的に利用した方がいいでしょうね。ただ、MF一眼レフなのですから、視度補正機構は内蔵したかったところですね。MZシリーズに共通して使える単三のバッテリーホルダーを使用できるのも嬉しいです。
 

MZ-MはMFにこだわる人のためのMF一眼レフというより、AFを使わなくても私はフォーカシングすることができますよと自慢するために存在するような、そんな気がしてきました。つまりファインダー内表示の有無などを含め、少し大袈裟にいえば、MZ-Mのポテンシャルを全て出し切るにはAFレンズが必要になるからです。
そこに何の意味があるのかとか考えてはいけません。あれこれいじくり回し、設定でき、そして、それらを楽しむことができることが何よりも大切なのですから。

 

 

 

 


上部がプレビューボタン。ないよりはあったほうが箔が付くわけです。筆者は使わないんだけどね、マニュアル露出に切り替えた方が早くないかと。

 

 

 

MLボタン。この位置だと、どの指で押すのかな。親指ですよね。露出をメモリーするより、AE解除した方が早くないのかと考えるのは筆者がジジイだからかな。
 

 

 


マウントは黒いプラスチック。角部分は少し白くなってきました。耐久性については十分だと考えていますが、あまり見たくないんですよね。奥のパワーフォーカス接点が化粧板で覆われています。

 

 

 

 

 

 

 

ペンタックスMZ-Mカタログより(資料提供:リコーイメージング株式会社)

 

 

 

  • 【PENTAX MZ-M 性能表】

  • ◉型式=マルチモードTTL自動露出・35mm一眼レフカメラ
  • ◉使用フイルム=135フイルム
  • ◉画面サイズ=24×36mm
  • ◉レンズマウント=ペンタックスKA2マウント〔KAF2, KAF, KA, Kマウントレンズ使用可能〕
  • ◉シャッター
  • ・型式=縦走行フォーカルプレーンシャッター
  • ・速度=プログラム、絞り優先:1/2000~30秒〔無段階〕、シャッター速度優先、マニュアル:1/2000~2秒、バルブ〔1EVステップ〕、Xシンクロ:1/100秒以下
  • ◉セルフタイマー
  • ・方式=電子制御式
  • ・作動時間=約12秒
  • ・作動確認表示=PCV音
  • ◉露出制御
  • ・測光方式=TTL開放分割測光〔2分割測光〕
  • ・測光輝度範囲=EV1~21〔ISO100・F1.4レンズ使用時〕
  • ・測光モード=自動切替え、[1] 2分割測光〔FA、F、Aレンズ装着時〕、[2] 中央重点測光〔FA、F、A以外のレンズ装着時〕
  • ・露出モード 
  • 「レンズAポジション」
  • ①プログラム自動露出、シャッターダイヤルをAにセット〔外部液晶にPマーク表示〕、②シャッター速度優先自動露出、シャッターダイヤルでシャッター速度をセット〔外部液晶にTvマーク表示〕
  • 「レンズAv値」
  • ①絞り優先自動露出、シャッターダイヤルをAにセット〔外部液晶にAvマーク表示〕、②マニュアル露出、レンズの絞りとシャッター速度を任意にセット〔外部液晶にMマーク、ファインダー内にバーグラフ表示〕、③バルブ露出、シャッターダイヤルをBにセット〔外部液晶にMマーク、ファインダー内にbu表示〕
  • ・露出補正=±3EV〔1/2ステップ、露出補正ダイヤルでセット〕
  • ・メモリーロック=あり〔MLボタン押しによる〕
  • ・フィルム感度設定=DX:ISO25~5000〔1/3 ステップ〕、マニュアル:ISO6~6400〔1/3ステップ〕
  • ◉ファインダー
  • ・型式=ペンタミラー式
  • ・視野率=92%
  • ・倍率=0.77倍〔50mmF1.4・ -1Dptr.・撮影距離∞の時〕
  • ・視度=-1Dptr.(ディオプトリー)
  • ・スクリーン=スプリットマイクロ、ナチュラルブライトマットフォーカシングスクリーン〔固定式〕
  • ・プレビュー=電子式〔全露出モード、プレビューボタン押しによる〕
  • ・ファインダー内表示=TV値・AV値、マニュアル露出時または露出補正時バーグラフ、露出補正マーク、メモリーロック〔ML〕マーク、 ストロボ情報  ※常時照明付
  • ◉ミラー=クイックリターンミラー
  • ◉ストロボシンクロ
  • ・方式=外部調光方式
  • ・接点=ホットシュー〔専用ストロボ接点付〕
    ・シンクロ速度=1/100秒
  • ◉フィルム給送
  • ・フィルム装填=オートローディング
  • ・巻上げ、巻戻し=自動巻上げ〔連続撮影可能〕、フィルム終了時自動巻戻し
  • ・巻上げ時間=約2コマ/秒
  • ・途中巻戻し=途中巻戻しボタン押しによる
  • ・巻戻し時間=約13秒〔24枚撮りフィルム〕
  • ◉液晶パネル表示=フィルム有無、フィルム装填エラー、撮影枚数、巻上げ・巻戻し、巻戻し終了、プログラム、絞り優先、シャッター速度優先、マニュアル、フィルム感度、バッテリー警告
  • ◉電源
  • ・使用電池=リチウム電池CR2 2本
  • ・撮影可能本数=約120本〔24枚撮りフィルム〕、バルブ露出の継続時間 約8時間 ※20℃において、使用条件は当社試験条件による
  • ・バッテリーチェック=警告:表示パネルの電池マーク点灯、消耗表示:電池マーク点滅、ファインダー表示全消灯、レリーズロック
  • ◉デート機構=なし
  • ◉大きさ=135〔幅〕×90.5〔高〕×55〔厚〕mm
  • ◉重さ=305g〔デートなし、電池別〕
  • ◉主なアクセサリー=ソフトケースFG(S):5,500円、ストロボ AF200SA(ケース付き):15,000円、単3バッテリーグリップFG:10,000円(すべて税別)
  • ◉発売時期=1997(平成9)年11月22日
  • ◉価格=40,000円(税別・ボディのみ)、63,000円(税別・smcペンタックスAズーム35〜80mmF4-5.6付き)
  • ◉生産数=3,000台/当初月産

 

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する