top コラム推すぜ!ペンタックス第16回 SPFの血脈を受け継いだロングセラー機、ペンタックスK1000

推すぜ!ペンタックス

第16回 SPFの血脈を受け継いだロングセラー機、ペンタックスK1000

2022/03/10
赤城耕一

当初は輸出専用機だったK1000

 

ペンタックス一眼レフがスクリューマウントからKマウントに変更をしたのは1975年で、KM、KX、K2の3機種が登場したことはすでにお話をしましたけど、1976年にはK1000というモデルが登場しています。K1000は輸出専用機で1986年まで国内では正式には発売されていませんでした。
 

仕様は簡単にいうとKシリーズ3機種の最もスタンダードな廉価機KMから、プレビュー機構とか、セルフタイマーを省略したものになります。フラッシュコネクターもFPは省略、Xのみになりました。これは逆に間違いがなくていいですよね。もっともコネクターがなくてもホットシューを装備していますからアダプターを使ったりワイヤレスで発光させればそれで大丈夫なわけですが、変なところは実直です。
 

その他の機構はKMとほとんど同じです。TTLメーターはCdsでレンズから光が入ればメーターが起動するというフォトスイッチを採用しています。KMの元祖はスクリューマウント時代のTTL開放測光方式を採用したSPFですから、K1000はSPFからの血脈を受け継いでいると考えるのが正しいのかもしれないですね。

 

当初はK1000もKMと同じ真鍮製のカバーでしたが、最終的にはプラスチックになっています。コストを下げるためでしょうが、真鍮製のカバーが作りづらくなったということもあるのでしょう。K1000の製造は1997年まで続いたとありますが、これはプラスチックのカバーを採用しなければここまでのロングセラーにはならなかったということでしょう。
 

海外では一円でもお安くしたモデルが欲しいというリクエストがあると聞きます。このため、国内ではほとんど知られていない輸出専用の一眼レフって、ペンタックスに限らずけっこう存在するわけですから、コレクションとしては面白いかも。まあ、これを後で国内で売るっていう戦略も、商売のためには少々なりふり構わずやります的な印象を受けてしまうことがあるのですが。
 

個人的な疑問としてはK1000にはブラックボディはあったのか否かということです。どうなんですか?マニアの皆さま。もしあれば欲しいですねえ。そういえば似たような話はSPIIのところでしましたね。

 

ペンタックスK1000+smcペンタックス マクロ 50mm F4

何も語るところがないけど、あれこれ言葉を探して話をしたくなるカメラでもあります。筆者の感覚だと、こういうカメラにニコマートFTNとかヤシカFFTがあります。クラスでもまったく印象に残らなかった人みたいな。いつか仲間を集めて、まとめて話をしますか。

 

 

ストイックさが沁みる、依頼仕事におけるバックアップカメラ

 

K1000のもう一つの魅力は時代に迎合しなかったことですね。MEとかMXなどの小型軽量路線とか、AE化とか、AFの時代にも関係なく、孤高の存在の一眼レフという存在でした。これはこれで、別の意味で面白く感じます。とくにセルフタイマーを省略したところなどは、ストイックな感じさえします。プロフェッショナルのKMみたいじゃないですか。そうでもないか。ライカM2のセルフなしみたいな。しません?しませんね。
 

海外仕様のカメラが時を経て、国内で売られるのは珍しいことではないのですが、国内ではカメラの価値は最新の仕様がすべてみたいなところがあるので、なかなか人気にはならないものですが、輸出専用時代から数えると20年間現役で存在していたわけですから、これはロングセラーになったフラッグシップLXと比肩できるわけです。知られてはいないけど大変なことですよね。
 

K1000が世の中にあまり広く知られていないのは、天体望遠鏡専用カメラのような役割を担っていたからかもしれません。つまりバッテリーなしでバルブ撮影ができる利点が注目されたからでしょう。天体撮影に使われることが多いのなら、天体望遠鏡に着きっぱなしだし、セルフタイマーも使わないんだから取ってしまえ、ということもあったのでしょうか。プレビューも天体望遠鏡なら要らないし、ということですかねえ。
 

こんなネタにならないカメラもここで紹介するんですかとか言わないようにしてください。K1000はフィルムカメラ時代、依頼仕事でペンタックスを使う場合は携行していました。主にバックアップの役割なんですが、軽量ボディなので負担が小さく、移動中にも神経を使うことなく気軽に撮影できたこともあります。MXもあるだろと言わないでください。MXは趣味性が強いのでカメラと戯れてしまいそうになるので、これはよろしくありません。
 

また、廉価な機種、最新機能を使わずとも平気で良い写真撮れちゃうよオレみたいな感で受け取っていただいてもいいかもしれません。はい、ご想像通りかなりムリしていますけどね(笑)

 


フィルム室なんか見せてもらっても仕方ないと思われるでしょうが、はい何もありません。でもビギナーの方はちゃんとフィルム装填してください。横走りのフォーカルプレーンシャッターの動作音はいまの時代に聴くと耳に優しい。 

 

 

この個体は「組み立ては中国」だそうです。パーツはどうなんだというツッコミはヤメてください。ペンタックスはベトナムにも工場ありましたよね?

 

弱点はプリズム腐食が激しい個体が多いこと??

 

K1000は繰り返しますがKMのさらなる廉価版ということで機能面で特筆すべきところはないのですね。そういえば筆者は他のメカニカルのペンタックス一眼レフ同様にK1000にもバッテリーを入れた記憶がありません。フルメカニカルカメラとして使用してますね。つらつらと書いてきたフォトスイッチがどうだということも本当は関係ありませんでしたね、すみません。
 

ただ、非常に困ることがひとつ。それはうちにあるK1000のプリズム腐食がかなりひどいことです。もう火事場から発掘した鏡みたいにシミが広がっています。同じ場所に保管しているK2をはじめとするKシリーズはペンタプリズムの腐食が見られないのに、どうしたことでしょうか。
 

腐食はフィルムに写りはしないんですが、ご存知のようにファインダー内では目障りで、使用時のモチベーションが著しく低下してしまいます。コストの関係でプリズムを抑えるモルトプレーンの質があまりよろしくないのでしょうか。これは理由は分かりません。だからこそ、いま程度の良いK1000を密かに探している筆者なのであります。
 

「なくても問題なかろう?」ですか。はい、そのとおり問題なんかありませんよ。でも、だからこそ欲しいわけです。このままではココロにシミができたままで暮らすようでツラくなるんですよね。わかりますかこの気持ち?(笑)

 

 

 

ベース機のペンタックスKM(右)と比べてみます。フォルムは同じです。当たり前だけど、兄弟機です。だからどうしたということですが、セルフなしのカメラってカッコよくないですか?

 

 

巻き戻しノブの部分です。ノブの基部にフィルムの覚書みたいなダイヤルがKMにはありますが。でもあってもこんなもの見てないですね。

 

 

右手軍艦部ですね。パーツとかは共通ですがK1000は安いぜ、って感触です。でもうちにあるKMよりフィルム巻き上げレバーのトルク感はいいんですよね。困るよね。

 

シンクロターミナルはXのみになりました。だからどうしたということですけど、今まで二つあったものが一つになるのも寂しいじゃないですか、FPのターミナルなんか死んでも使わないけどね。

 

 

 

 

ペンタックスK1000(後期型)のカタログより抜粋(資料提供:リコーイメージング株式会社)

 

 

 

  • 【PENTAX K1000 性能表】
  •  
  • 型式=手動調節TTL露出計内蔵メカニカルシャッター使用の35mm一眼レフカメラ
  • 使用フィルム=35mmフィルム(JIS135パトローネ入り)
  • 画面サイズ=24×36mm
  • 標準レンズ=SMCペンタックス55mmF2(5群6枚構成)。自動絞り、直進ヘリコイド、最小絞りF22、フィルターサイズ52mm
  • 距離目盛=∞〜45cm(1.5フィート)
  • シャッター=横走りゴム布幕シャッター。B、1〜1/1000秒
  • シンクロ=ホットシュー(X接点)、Xシンクロは1/60秒
  • ファインダー=ペンタプリズム式ファインダー。クロスマイクロプリズム式。像倍率55mmレンズで等倍、視度−1.0ディオプトリー
  • ピント合わせ=ピントリングを回して、ピントグラス上の映像を接眼レンズで拡大して見る。
  • ミラー=クリックリターンミラー
  • 巻上げ=レバーによる、巻上げ角160度、予備角10度、多回巻き可能、巻上げ表示窓
  • 枚数盤=自動復元順算式
  • 巻戻し=クランクによる、巻戻し完了表示
  • レンズマウント=ペンタックス・バヨネットマウント
  • 露出計=平均測光式。受光体CdS、定点式自動調節。測光範囲は55mm F2レンズの場合、ASA100のときEV3〜18。ASA目盛20〜3200
  • 電源=1.5ボルト銀電池1個(エバレディーS76E、またはマロリーMS76H)
  • 露出計スイッチ=フォトスイッチ
  • バッテリーチェッカー=なし(ファインダー内指針の作動状態で検知できる)
  • 大きさ=55mm F2付で、143(幅)×91.4(高さ)×94(厚さ)mm
  • 重量=ボディのみ610g、55mm F2付で837g
  • 発売時期=海外向け:1976(昭和51)年8月、国内向け:1986(昭和61)年6月
  • 価格=40,000円(本体のみ

 

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する