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推すぜ!ペンタックス

第9回 カメラ自動化黎明期を彩った世界初のAF一眼レフ!ペンタックスME-F

2022/01/21
赤城耕一

今回はペンタックスの時代的に考えて、ペンタックスLXにするかなあと考えていたのですが、思い直しました。時代は少し前後してしまいますが、仕事場のロッカーにペンタックスME-Fを保管していたことを思い出し、発掘に成功したので、こちらに変更しますね。ええ、ME-Fが不人気なことは存じていますが、出てきたんだから仕方ないじゃないですか。使うしかありません。
 

ME-Fって、登場は1981年です。世界初のAF一眼レフという触れ込みだったのです。本当かよと疑われてしまいそうですが本当です。本機の発表当時だったか、カメラ雑誌では、著名な写真家が「AF?ピントくらい自分の手で合わさせてくれよ」と述べていたのを読み、若輩者の私もそうだそうだと賛同しました。ME-Fはボディ単体でAFが機能するわけではなくて、ME-Fに用意されたsmcペンタックスAFズーム 35-70mmF2.8と組み合わせることでAFが機能しました。MFレンズを装着すると、フォーカスエイドは機能するんですが。AF方式はコントラストAFで、ペンタックスが名づけたのは独自でTTL-EFC方式と呼ばれるものです。
 

筆者はこういうカメラ自動化黎明期のモデルに目がなく、ME-Fくんにもお越しいただいています。ええ、好きなのは出来損ないな雰囲気が自分に似ているからですね。
 

書き忘れましたが、ME-Fのベース機になっているのは1979年に登場したMEスーパーなわけです。そう、あのマニュアル露出時に2つのプッシュボタンでファインダーを覗きながらシャッタースピードを選ぶという、なんともやりづらいカメラで、これがベース機です。最高シャッター速度はMEよりも高速の1/2000秒になりましたが、とくにエラいとは思いませんでした。ちなみに「PENTAX」銘板部分の上から「ASAHI」の文字がなくなりましたね。ボディカバーはプラ製ですが、安っぽい印象はそんなに感じないので少々救われます。
 

で、AF撮影できるんだからこいつはエラいのかと思いきや、先の著名写真家が言うとおり、ME-FのAFはかなり疲れる遅い動きをみせます。「なんかどこか調子悪いのかキミは」、みたいな動きです。
 

もちろん40年前のカメラに多くを求めようとは思いませんが、AFの挙動の最中に飽きてしまうほどです。せっかちな筆者ですから、すぐにレンズの電源をオフにして、マニュアルでフォーカシングしたくなるのです。なんか試作機をそのまま売ってしまったのかくらいの話です。まあ、AFの速度が遅いのはどうでもいいですけどね。
 

ただレンズのフォーカスリングの幅が狭く、MFのフォーカシングは最悪にやりづらいです。仕方ねえな、うるさい奴のために、リングを回すことができるようにしておいたぜという感じです。もっともペンタックスにかかわらず、黎明期のAF一眼レフ用の交換レンズのフォーカスリングの幅は狭く、心許ないものがありましたが、「どうせAFで撮るのだからフォーカスリングはイラネ」と思っていたフシがありますね。みなさん。
 

このAFを動作させるにはまず、ME-Fの本体に4個ものSRまたはLR44を入れます。そしてsmcペンタックスAFズーム 35-70mmF2.8にも単四形電池を4本入れます。レンズ内モーター方式ですが、この出っ張ったバッテリー室のためにおかしなデザインになり、中古カメラ店では「マッコウクジラ」と呼ぶところもありました。しかもズーミングは直進式で、ワイド端の時にレンズ全長が伸びるので美しくないんです。
 

カメラボディとレンズ側の電源をオンにして、レンズ鏡胴左手にある小さなボタンを押すとAFが駆動しますが、やる気のなさそうなゆっくりした動きで小さな動作音を発しつつフォーカスリングが一定間隔で回転して、合焦点を行ったり来たりして最良の位置を確かめながら、緑ランプが点灯してピピッという通知音が鳴ると合焦で、通知音もします。このあたりコントラストAFをしているね、キミは。という確証が持てます。
 

ただ合焦音はあまり聞きたくない感じです。合焦表示確認のシグナルは意外に大きくファインダー下部にありますが、視野の中に出っ張る感じで、少々邪魔くさいですねえ。
 

しかし、AFのベースボディをMEスーパーにしてしまうところに大胆さがありますよね。でも今回ワインダーME IIとも組みあわせて見ましたが、全体で1キロ超えそうです。危険水域ギリな感じでした。なんだか今回文句が多くなり「ならば使うな」と言われそうですが、AF一眼レフ黎明期の開発エンジニアの知恵を知るには、一度くらいは触れていてもいいんじゃないかと思ったわけです。
 

もちろん正しい良い子の写真表現者にはおすすめはしません。忍耐力を養う修行だと思えばいいんですが、人間そこまでガマンできないんじゃないかなあ。つまり、このガマンできない見本が筆者というわけです。

 

 

ペンタックスME-F+SMC PENTAX AF ZOOM 35-70mm F2.8

ベース機のMEは小さいのに、ここにAF対応のデバイスを入れようとしたエンジニアの心意気を感じるわけです。でもAFズームレンズがデカいからバランスは悪いですね。

 

シャッターボタン周りも賑やかですね。このボタン方式のシャッタースピード可変方法は、その当時のテレビゲームの影響だと言っている人がいた記憶ありますね。ボディ外観にはディスプレイ窓がないから、マニュアル露出時はファインダーを覗かないと、シャッタースピードはわからないですね。

 

ボディ軍艦部の左にある、フォーカスエイドの切り替えF値レバーですね。下のスライドスイッチのOFF時は合焦しても消音になります。

 

ボディ底部には、SR(LR)44電池を4つ入れます。よくぞこんなスペースが取れたなあと思います。蓋の質感とかも心もとないんですけどねえ。

 

SMC ペンタックスAFズーム 35-70mm F2.8の電源部です。単四形電池を4本入れます。これだけでも重たいですね。バッテリー室のためにコブができたようになり、「マッコウクジラ」と呼ばれたりします。

 

ワイド端の時に鏡胴はもっとも長くなります。最近はあまりみる機会が少ない直進式ズームレンズですから、暫くぶりに使用すると少し戸惑います。本気撮りの時はマニュアルで使います。往時としては開放F2.8通しのショートズームはけっこう希少な存在で注目されたのです。

 

鏡胴の左手側2ヵ所のみにフォーカシングの起動ボタンがあります。本体のシャッターボタンはAF連動するようにできていないわけです。へー、という感じですね。最初機のAF一眼レフにしてはよく考えられていると思います。

 

レンズのメインスイッチはレンズ前面下部にあります。ON・OFF 状態は確認色でもわかりますが、なぜここにスイッチをつけたんだろうか謎ですねえ。切り忘れを防ぐためかなあ。

 

ワインダーMEIIを装着してみました。かなり重たいです。MEシリーズのコンセプトはワインダーを装着したこの時点でおしまいでしょうかね。もっともAF撮影する場合はワインダーないとツラいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペンタックスME-Fカタログより抜粋(提供:リコーイメージング株式会社)

 

 

【PENTAX ME-F 性能表】

 

型式=TTL電子合焦装置、TTL自動露出電子シャッター内蔵35mm一眼レフカメラ

使用フィルムと画面サイズ=35mmフィルム・24×36mm

レンズマウント=ペンタックスKfマウント(マウント部にAFレンズ用電気接点付)

シャッター=縦走りメタルフォーカルプレーン(セイコーMFC-E2シャッター)・オート電気シャッター(シャッターダイヤルAUTOで1/2000~4秒連続無段階)・マニュアルシャッター(電子制御式:シャッターダイヤルMで1/2000~4秒[プッシュボタンによる])、機械制御式:シャッターダイヤル125X=1/125秒、B=バルブ(無電源)、シャッターボタンロック付

シンクロ=ホットシュー(X接点・感電防止付)、Xシンクロは1/125秒、Xターミナル(JIS-B型、抜け止めネジ付)、専用ストロボ充電により1/125秒にオートセット

巻上げ=巻上げ角135度、予備角30度、巻上げ完了表示・フィルムおくり確認付、ワインダー装置で自動巻上げ可能

電源=SR44型(LR44型)銀電池 4個

セルフタイマー=作動秒時約4~10秒、始動はセルフタイマーレバーの復元操作による

ファインダー=ペンタプリズム式(銀コート)、スプリットマイクロマット式、クリアーブライトマットスクリーン使用、像倍率0.87倍(50mmレンズ・∞)

ファインダー(合焦表示)=合焦時:ファインダー下部中央の合焦表示緑LED点燈・非合焦時:方向表示三角形赤LEDの一方が点燈し、前ピン、後ピン表示・NG時(検出不可能):方向表示三角形赤LED2個同時点燈

ファインダー(露出表示)=シャッター速度表示:1/2000~1/60秒は緑LED、1/30~4秒は黄LED2個・AUTOの時:適正シャッター速度LED点燈、OVER、UNDER非連動警告赤LED点滅・MANUALの時:M 緑LED点燈、OVER、UNDER赤LED消燈で適正露出・1/125X、Bの時:表示なし

ファインダー(ストロボ充電完了表示)=専用ストロボ充電完了と同時にM緑LED点滅、125緑LED点燈

合焦表示音=ファインダー内合焦緑LED点燈時、電子音発生(消音スイッチ付)

FI使用範囲=ASA100、35~70/2.8(EV5.5~17.5)または50/1.4のとき(EV4~16)

ミラー=スイング上昇式多層コート、クイックリターンミラーおよび第2ミラー付

露出計=TTL中央重点開放測光、GPD受光体使用、自動露出は絞り優先式、測光範囲はEV1~19(ASA100・50/1.4レンズ)、スイッチはシャッターボタン半押しでON、電子タイマーホールド(スイッチOFF後約10秒)

露出補正=露出倍数切換えダイヤル4×、2×、1×、1/2×、1/4×(1×以外のときファインダー内EF赤LED点滅警告)

電池消耗警告=(合焦装置)合焦表示用LED消燈後、露出表示LEDが点滅し、さらに消燈して警告

大きさ・重さ=幅132×高さ87.5×厚さ49.5mm・490g(電池付)

発売時期=1981年11月21日

発売時価格=ボディのみ 75,000円、ME-F+標準レンズF1.7付 94,500円、SMCペンタックス AFズーム35-70mm F2.8 89,500円、ME-F+SMCペンタックス AFズーム35-70mm F2.8 164,500円

 

 

 

【SMC PENTAX AF ZOOM 35~70mm F2.8 性能表】

 

型式=TTL-EFCシステム専用オートフォーカスズームレンズ

マウント=ペンタックスKfマウント

焦点調節=ME-F装着時、オートフォーカス使用可能、マニュアルフォーカスは前玉回転式

レンズ構成=7群7枚

絞り方式=自動絞り

最小絞り=F22

測光方式=開放測光

最短撮影距離=1.2m

ズーム方式=直進ズーム

画角=63~34.5度

コーティング=SMCコーティング

フィルター径=ネジ込み式58mm

フード=カブセ式ゴムフード

キャップ=スプリング式58mm

電源=単4形電池 4本

大きさ・重さ=幅73×長さ76.5×高さ87mm・580g(電池別)

 

 

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