やや、スピンオフ疲れも出て参りましたが、今週もリコー一眼レフ行きます。ペンタックス好きにはそろそろ怒られちゃいますかねえ。でも、筆者はペンタックスとリコーはずいぶん前から相性は悪くないのではないかと考えていたので、読者の皆さまもご不満は多々おありでしょうけど、このあたりは寛容にお願いしたいです。
リコーの35mm一眼レフのほとんどは海外販売を主に、ということもあったのでしょうが1995年という、AFでなければ一眼レフカメラにあらずというときに、このMF一眼レフのリコーXR-10PFは登場しました。冒険ですよねえ。
でもまあ、ペンタックスだって、前に紹介したMZ-MもあるしニコンだってF-601Mもあるし、キヤノンもEF-Mっていう、AF一眼レフを母体としたMF一眼レフを作っていたわけだから、全くこの種のカメラの需要がないわけではなく。
ところがですね、本機の姿とカタチをご覧くださいませ。どこからどう見てもEOSですよ、これは。T90でもいいのか、MFだし。
AF一眼レフへのコンプレックスというよりもEOSと似ているから間違って買っちゃうんじゃないかみたいな、思惑がリコーにあったのかどうかは知りません。ないと思いますが、この「溶けたチョコレートが冷えて固まった」みたいなデザインは好みが分かれるところだけど、これこそが未来志向であると考えたのかもしれないですね。中身はMFのマルチモード一眼レフですしね。
ボディ外装はプラスチックです。同じプラボディだったEOSに比べてもチープな質感です。おそらく使う込むとさらに安っぽくなるかと思います。もっとも本機を本気で使い込む人がどのくらいいたかわかりませんが。
もっとも本機のデザイン、筆者はそんなに嫌いじゃないんですね。人間がチープなのでチープなカメラが好きです。EOSのパクり、いや参考にした部分も感じるけど、この容姿でMF一眼レフだから、キヤノンは気にしていないだろうし。
スペックではAF一眼レフに完全に乗り遅れてるけど、MF一眼レフで撮るのは楽しいんですよー、って訴えている感じがしますね。そこに無理強いを感じさせないところがいいわけです。こんなん出来ましたけど、使ってみておくれやす。みたいな。
心を広く持って、カメラに接することのできる人にはおすすめカメラかもしれませんが、もちろん無理して探し出してまで必要とするカメラではないと思います。苦情は受け付けておりません。
リコーXR-10PF+リケノン Pズーム 28-70mmF3.5-4.8 i Macro
お、意外とキミ、イケるかもね、とEOSと勘違いしそうなルックスですね。でもまあ、すぐにMF一眼レフであるという正体はバレてしまうか。底の浅さが見えてしまいますが、ま、硬いこと言いなさんなという感じで付き合うといい仕事するかもしれません。
いちおう機能面でもお話をしておきましょうか。本機はマルチモードAE一眼レフなんですぜ。プログラムAE・絞り優先AE・シャッター優先AE、マニュアル測光の何かを選択でき、測光は平均・スポット切り替えを可能にしています。ただ、マルチモードを全て生かすには、絞り環にPポジションのあるリケノンPレンズを使わねばなりません。これは仕方ないですね。とにかく謎のインターフェースなんですが、このクラスのカメラのユーザーでこまめに撮影モード切り替えていた人いたのかしら。
ペンタプリズムにはストロボを内蔵しておりますが、これもTTL制御されますね。驚いたのは、フォーカシングスクリーンも交換式であることです。マウントから交換するやつです。ところがその交換スクリーンそのものを筆者は見たことがありません。これは見つけたら珍品じゃないのかなあ。誰も知らないし、いらないけどね。
デフォルトで搭載されているフォーカシングスクリーンは、例の斜めスプリット+マイクロプリズムですね。当時のリコーは好きだったみたいですね、このスクリーン。スプリットを斜めにすると測距精度落ちるんだぜ〜。それをマイクロプリズムでカバーしようというわけでしょうかねえ。ファインダーは特別明るくないですが、フォーカスのキレはなかなか良好で、これは認めますよ。MF一眼レフでは重要な点でありますから。
内蔵のスピードライトです。ポップアップ式じゃないんです。でもTTLダイレクト測光ですぜ。精度は知りません。使ったことないし。発光部を両脇から摘んでもち上げるわけです。悲哀を感じますね。GNは仕様表に書いてないぞ。
ボディ左のマウント脇にAEロックボタンありますね。スポット測光を入れたから必要という判断かなあ。筆者は一度も使ったことないというか、今回の原稿書くまで存在を忘れており。なんだこれはみたいな感じで。老眼なんで見えないです。
ものすごくよろしくないのは、このカメラ、操作系がわかりづらく使いづらいことなのです。
基本設定はボディ上部のLCDを見ながらMODE1とMODE2の二つのボタンをそれぞれ設定したい項目までプッシュして探し、さらにダイヤルを使い、切り替えと各種設定を行うわけです。
言葉で書くと容易い感じがしますが、実際に扱うと、なんだか面倒なのです、カメラと戯れたい人はもしかすると楽しいのかもしれませんが筆者には難しいですこれ。
使いづらい主な理由は本機のLCD表示ですね。上部にあるMODE1ボタンを何度か押すと上部のLCDに「AUTO」表示が出ます。それからレンズの絞り環をPに合わせるとファインダー内のLCDにPと出ます。これがプログラムAEですね。ちなみに外部のLCDにはP表示が出ません。これだけで暴れたくなるところですが、グッと我慢します。
SモードはどうするかというとMODEボタンを押して「A OFF」を表示させ、5秒待ちます、5秒ですよ。そうするとあら不思議、設定シャッタースピードがLCD表示されます。で、絞り環をPに合わせると、任意設定のシャッタースピードに対して、適正値の絞りが自動的に表示されます。
もし、絞りの範囲内に適正露出が得られない場合は、自動的にシャッタースピードが変化して追い込むみたいですが、お願いします。これって、Pモードと何が違うんですか?
Aモードはどうするのか。はい、外部のLCDにAUTOを表示させて、絞り環をP位置から動かせばいいわけです。マニュアル露出はA OFFにして、任意のシャッタースピードと絞りが動けばいいなと。
じつはうちにある個体は液晶が経年変化で欠けてしまい、もはや肉眼で確認できず。設定なんかは勘ですよ、勘。まあ、正直のところどうでもいいんですけどね。
LCDに表示を頼りすぎるとこのように経年劣化でイタイ目に会うわけですよ。それにしても、ボディ上部のLCDに撮影モードが表示されないだけで、キレそうになっている人がここにいますが、繰り返すけど、本当に撮影モードとかの表示は上部のLCDにはなかったんでしょうかねえ。知っている人教えてください。上部のLCDで一番大きな表示はフィルムカウンターだもんなあ。
軍艦部にある、LCDですね。とにかくボタンを押して「AUTO」表示が出たらまず間違いなく写るという考え方でいいと思います。何か別のモードで撮ろうとするとしくじりそうです。なぜならこの個体、久しぶりにあれこれいじくり回してたら、この表示しか出なくなりました。
コマンドダイヤルじゃないんですよ、アップダウンダイヤルとかいうみたいですね。素直じゃねえなあ。MODEボタンと組み合わせて、機能のオンオフを決めるわけね。使用頻度高いですね。
電源は単三形アルカリ電池を4本という、世界のどんな僻地に行っても調達できる仕様ですね。これ、グリップの内側に収納されます。EOSみたいに2CR5だったら価格も高いし泣きそうでしたけれど。電池は重たいけど、これでよかったのかもしれないですね。
全体には、巻き上げ速度も速くなくてもっさりしていますね。大丈夫なのかなあ。中央部重点測光とスポット測光の切り替えできたり、露出ブラケッティングもできますねえ。だからどうしたとか言わないようにお願いします。
基本はKマウント互換だけど、ペンタックスのAFシステムには乗っかるということをしなかったリコーは本機を最後に一眼レフを終焉させてしまうわけです。
でもね、潔い。という感じもしないところがまたリコーらしいというかなんというか。本機は一体どのあたりのユーザー層を対象にしたカメラだったのかは謎ですね、これは謎のままにしておきましょうかね。ビギナーの方は買わないほうがいいと思います。なんかMF一眼レフに遊び疲れた人が最後に手を出す、トンデモ機という感じも。
初代のリコーGR1はこの1年後の1996年に出てきますから、マンパワーやリソースをそちらに割きたかったんでしょうが、どうせならAF一眼レフまでやって欲しかったなー。
電源は単三形アルカリ電池4本という。どこにでも手に入るバッテリーです。電池切れなぞ不安なくいこうじゃないかという設計方針なわけですね。モーターによるフィルム巻き上げだしね。だから重量は少し重たいかな。
高級機(?)にはプレビューないとなあ。と、仕方なく採用されています。というのは嘘で、これ電子式で軽く動作します。本機で被写界深度確認しながら撮影したら、良い作品できそう。みんなで被写界深度を確認しようぜ。
リコーXR-10PF/XR-10Pカタログより抜粋(資料提供:リコーイメージング株式会社)
- 【 リコーXR-10PF 性能表】
- ◉型式=電子自動露出制御式35mm一眼レフフォーカルプレーンシャッターカメラ
- ◉撮影モード=プログラムAE撮影、シャッター優先AE撮影、絞り優先AE撮影、マニュアル撮影
- ◉使用フィルム=35mmフィルム(J135) 画面サイズ:24×36mm
- ◉レンズマウント=リコー方式RKマウント
- ◉シャッター=電子制御式上下走行フォーカルプレーンシャッター、オート時:1/2000~32秒、マニュアル時:1/2000~16秒(0.5EVステップ)、Bulb
- ◉セルフタイマー=作動時間約10秒(セルフタイマーランプで作動表示、情報パネルで作動時間を減算表示)
- ◉ファインダー=ペンタプリズム使用のアイレベルファインダー
- ◉ファインダー視野率=上下91%、左右91%
- ◉ファインダー倍率=0.8倍(50mm標準レンズ装着時)
- ◉ファインダー内表示=日中シンクロ撮影・スローシンクロ撮影、ストロボ充電完了/調光確認、測光方式、AEロック、シャッタースピード、露出アンダー、露出オーバー、プログラムAE撮影、絞り、露出インジケーター
- ◉ピント合わせ=スプリットイメージ/マイクロプリズム/マット方式、フォーカシングスクリーン交換可能
- ◉測光方式=TTL開放測光
- ◉測光モード=中央重点平均測光、スポット測光
- ◉測光範囲=EV0~18(ISO100、50mm/F1.4標準レンズ装着時)
- ◉フィルム感度=DXコード付きフィルムのとき自動セット ISO25~5000(1/3ステップ)、マニュアル設定 ISO12~6400(1/3ステップ)
- ◉シンクロ接点=X接点
- ◉ストロボ撮影=内蔵ストロボ〈PF〉、リコーTTL対応ストロボ使用時TTLダイレクト調光、プログラムストロボAE撮影、シャッター優先ストロボAE撮影、絞り優先ストロボAE撮影、マニュアルストロボ撮影、日中シンクロ撮影・スローシンクロ撮影可能
- ◉露出補正=露出補正範囲:-4~+4(0.5EVステップ)
- ◉フィルム装填=リコーオートロード方式、1枚目自動セット
- ◉フィルム巻き上げ=内蔵モーターにより自動巻き上げ、約2コマ/秒
- ◉フィルム巻き戻し=フィルム終了時自動巻き戻し、途中巻き戻し可能
- ◉被写界深度の確認=プレビューボタンにより可能
- ◉情報パネル表示=シャッターモード/シャッタースピード/フィルム感度/露出段差(オートブラケット)/露出補正値/ストロボ光量補正値/ON/OFF、露出インジケーター、フィルムカウンター/セルフタイマー残り時間/バルブ撮影露光時間/オートブラケット残りコマ数(オートブラケット撮影時)、測光モード、連続撮影、赤目軽減〈PF〉、多重露出撮影、オートブラケット撮影、ストロボ光量補正、ストロボ充電完了、電池残量
- ◉その他の機能=データバック用デート接点、節電タイマー、レリーズソケット、AEロック、裏ぶた交換可能
- ◉電源=単3形アルカリ電池×4本
- ◉大きさ(ボディのみ)=151(幅)×107.5(高さ)×62(奥行)mm
- ◉質量(ボディのみ)=550g
- ◉発売時期=1995(平成7)年3月10日
- ◉価格=ボディのみ 42,000円(税別)
- ◉月販台数=15,000台
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