撮影モードをあれこれ選べることを、今では「マルチモードAE」と呼びますけど、最初は「両優先AE」ではなかったですかねえ。A(絞り優先AE)とS(シャッタースピード優先AE)のどちらがエライかという話がカメラ雑誌を真剣に賑わしていた時代があったんですよね。
1970年代の中盤くらいかなあ。両優先というのは変な言葉で、簡単にいえばAモードとSモードを撮影者が任意に選択できる、つまり“優先” が二つあるからということなのでしょうね。スポーツを撮影するときはSモードだとか、風景を撮るときは被写界深度が大切だからAモードとかね、なんだかこじつけているわけですが大きなお世話ですね。
絞り優先AEは特別な交換レンズを用意しなくても、すぐにAE化できたけど、シャッタースピード優先AEはカメラボディ側から絞りをコントロールせねばならないので、専用のレンズを使用する必要がありました。どちらのモードがエラいという話をするよりも、最初っからシャッタースピード優先AEを採用していたメーカーの方が両優先AEにするのはラクだったんでしょうね。
ミノルタXD 1977年(昭和52年)10月
ちなみに35mm一眼レフで両優先AEを最初に実現したのは1977年のミノルタXDですね。ミノルタは絞り優先AE派でしたから、ミノルタバヨネットマウントはそのままに、レンズ側の絞り連動ピンが、Sモードに対応できるように改良されていましたが、本気でSモードを使おうと思えば、このMDロッコールと呼ばれるレンズに手を入れなければならなかったわけですね。
別にそこまで気を使わなくてもいいんだけどとは思います。ただメカニズムに興味ある人は自分の好きな設定とか追求しそうだからなあ。MDロッコールレンズだって、絞りの動きをみてると、シャッターを切るたびに、絞りの大きさが変わって見えることあるんですよね、同じ明るさなのにね。
同じ明るさなのに絞りが毎度変わったら、露出が変わるじゃないかと思ったあなた。その通りです。この絞りの誤差はシャッタースピードの変化でカバーします。だからXDのAEはいわゆる瞬間絞り込み測光を採用していまして、これを“サイバネーションシステム” と呼んでました。XDは両優先から一歩進めて、いわゆるプログラムAE的な使用も可能にしてましたね。
ライカR4はミノルタXDをベースにしていますが、専用のライカRレンズ群にはSモードの対応は行われませんでした、誤差は瞬間絞り込み測光で対応しちゃえというね。これ、多くのカメラメーカーも行うようになりました。
また本題に入る前に長引いていましたが、両優先AEからマルチモードAEを搭載したのはキヤノンA-1だと思います。キヤノンはこの当時AE一眼レフはSモードを主流としてきたからAモードを加えるのは楽勝ですね。
リケノンPズーム 28-70mm F3.5-4.8を装着したリコーXR-P。この角度から見るとキヤノンA-1じゃねえのかというくらい雰囲気も似ておりますね。
今回もじつはスピンオフしちゃいますが、取り上げるのは1984年登場のリコーXR-Pなんです。このカメラ、マルチモードAEですけど、デザイン面ではキヤノンAE-1やA-1の影響を色濃く受けているというかパクりな感じがします。シャッターボタンまで似てるんですぜ。フィルム巻き上げレバーとシャッタースピードダイヤルが同軸というのも似てます。
レンズはリケノンPというKマウントなんだけどP(プログラムAE)モード対応のレンズで装着するとマルチモードAEができちゃうというわけです。
絞り環には最小絞りの隣に「Pポジション」があります。同じKマウントのペンタックスでは「Aポジション」が絞り環にあるレンズをペンタックスAレンズと呼びますが、これとリケノンPとは機能上の互換性はないみたいですね。どうしたんだ互換力に優れるKマウント!
リケノンPレンズには、最小絞りの隣に「Pポジション」があります。Aではないのは、プログラムAEが基本となるからでしょうか。
シャッタースピードダイヤル。Aポジションのほか、TVポジションもある。TVのモニターを撮るためのものだそうです。走査線が写らないようにということでしょうか。プログラム設定のポジションもカラフルです。
潔いのはT(シャッタースピード優先AE)モードが表向きは存在していないことですね。変わってPモードが3種あるので、マルチプログラムAEと呼ぶみたいです。普通のプログラムシフトと違い、任意でプログラムラインを選べってわけですね。
興味深いのはオフィシャルでは撮影モードは16種あるそうで、硬直したジジイの頭では、それぞれを意味するところとか、どうやって使い分けるのか悩みそうです。ええ、調べるのが面倒ですので各モードの意味合いは読者の皆様にお任せしたいです。筆者はどうでもいいので。キヤノンA-1は5モードくらいでしたね。大変ですよね覚えるの。
キヤノンA-1 1978年(昭和53年)4月
XR-Pの使い方は単純です。まず、シャッターダイヤルが「A」で絞り環が「P」ではプログラムAE、シャッターダイヤルが任意のスピードで、絞り環が「P」でもPモード。絞り環を任意設定、シャッターダイヤルを「A」でAモード。シャッターダイヤルも絞り環も任意設定なら、フルマニュアルでの撮影ですね。マニュアルでも、メーターは動作しています。面白いのはシャッタースピードダイヤルに「TV」があって、テレビ画面がキレイに撮れるという触れ込みらしいです。これ。そんなに重要なモードなんですかね。
シャッター音は優しいけど動作音にもう少し品格が欲しいです。子供のくしゃみみたいな音ですね。一眼レフなんだから高級感が欲しいです。最高シャッタースピードは1/2000秒となっています。これはいいと思います。
露光補正の刻みは1/3ですね。この時代としては頑張っています。スダレ上の透明プラスチックは、ファインダー内表示の灯とり窓かと思われます。
セルフタイマー、インターバルタイマー内蔵。正面側のボタンはセルフタイマーが0だと左指シャッターとして使えます。目立つところにありますねえ。
面白いのは、セルフタイマーだけではなく、インターバルタイマーを内蔵しているのです。この設定ダイヤルはボディ左前にあります。セルフタイマーを0位置にセットすると、ダイヤル中央部のボタンが左指用として使えます。動作は確認しましたが、これ、どうやって使うと便利なんでしょうねえ。
縦走り金属シャッターの感触は悪くないのですが、モードにかかわらずタイムラグがあります。これは瞬間絞り込み測光の対応のためでしょうか、よくわかりません。
所有していないので知らないけどXR-Pに用意された専用のモータードライブだと、自動的にボディに装着されるとか書いてあるけど、それは見てみたかったですねえ。面白そうです。まさかお掃除ロボットみたいにカメラを見つけると自動的に寄ってきて装着するとかそういうことはないよね。見てみたいですね。
筆者は本機のようなマルチモード機でもAモードとMモードしか使いませんからねえ。他のPモードも手慰みに使うには楽しい感じはします。ファインダー内数字表示も白とオレンジでカラフルだし、撮影モードや露光補正表示もあるし飽きないカメラですね。
ボディ底面。専用のモータードライブを無調整で装着できます。バッテリーは喰いますね。LR44を4個使いますし。
着脱式のグリップがあります。装着のタイプは細身のものですが、シャッターボタンがついているグリップもあった記憶があります。
リコーXR-Pカタログより抜粋(資料提供:リコーイメージング株式会社)
- 【 リコーXR-P マルチプログラム 性能表】
- ◉型式=電子自動露出制御式35mm一眼レフフォーカルプレーンシャッターカメラ
- ◉使用フィルム=画面サイズ:35mmフィルム 、J135、24✕36mm
- ◉レンズマウント=R-Kマウント
- ◉撮影モード=マルチプログラムAEモード(ノーマル、アクション、デプスの3モード)、プログラムストロボAEモード、シャッターバイアスプログラムAEモード、シャッターバイアスストロボAEモード、絞り優先AEモード、マニュアル露出モード、テレビモード
- ◉測光方式=開放測光、TTL中央重点平均測光
- ◉測光範囲=EV0~18(ISO100・50mmF1.4レンズ装着時)
- ◉フィルム感度範囲=ISO12~3200(1/3ステップ)
- ◉ストロボ連動=TTLダイレクト測光(XRスピードライト300P使用時)●プログラムストロボAE ●シャッターバイアスストロボAE ●絞り優先ストロボAE、プログラム日中シンクロ可能
- ◉シンクロ接点=X接点、シンクロソケット付き
- ◉露出補正=露出補正装置(+2~-2、1/3ステップ)、AEロック機構
- ◉シャッター=電子制御式上下走行メタルフォーカルプレーンシャッター、オート時:16秒~1/2000秒、マニュアル時:4秒~1/2000秒、B、TV
- ◉セルフタイマー=作動時間 10秒、作動中赤いランプ点滅と電子音(消音スイッチ付)、作動時間 0秒で左手レリーズ
- ◉インターバルタイマー=作動時間 2秒、15秒、60秒の3段階切り換え(XRワインダー2併用で)
- ◉ファインダー視野率=上下93%、左右93%
- ◉ファインダー倍率=0.88×(50mmレンズ装着時)
- ◉ファインダー内表示=<LCD表示> 露出補正、AEロック、マニュアルモード、プログラムモード、TVモード、露出オーバー&アンダーマーク、シャッター指針、マニュアル指針、バルブ、電池切れ予告、プログラム絞り値、ファインダーLCD照明装置(AEロックボタン兼用) <LED表示> ストロボ充電完了(専用ストロボ調光確認兼用) <光学読み取り式> レンズ絞りリング情報
- ◉ファインダースクリーン=新開発リコーアキュブライトスクリーン採用、スプリットイメージ、マイクロプリズム式、マット方式、ファインダースクリーン交換可能
- ◉フィルム巻き上げ=一作動レバー巻き上げ式、巻き上げ角135度、予備角35度
- ◉自動巻き上げ=XRワインダー2装着により可能
- ◉フィルムカウンター=自動復元順算式
- ◉フィルム巻きもどし=巻きもどしクランク方式
- ◉ミラー=スイングバック方式クイックリターンミラー
- ◉裏ブタ開閉=巻き戻しノブ引き上げによる蝶番式開閉(裏ブタ交換可)
- ◉その他の機能=2ポジション多重露出機構、レリーズグリップ装着可、データバック用ダイレクト端子、60秒節電タイマー内蔵
- ◉電源=LR44 1.5V アルカリ電池4個、またはSR44 1.55V 酸化銀電池4個、または、CR-1/3N 3V リチウム電池2個
- ◉大きさ=136(幅)×87.5(高さ)×53(奥行)mm ボディのみ
- ◉重さ=505g(ボディのみ)
- ◉標準レンズの重さ=50mm F1.7P 150g、50mm F2P 135g
- ◉発売時期=1984(昭和59)年7月
- ◉価格=ボディのみ 66,000円、レリーズグリップ 3,000円、カメラケース 4,000円、リコーXRスピードライト300P 22,500円
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