スペックマニアさんからよくお叱りを受けるのは、アカギはカメラとレンズを時代に合わせて整合させて使わないから、機材のポテンシャルを完全には引き出せていないんじゃないかと。
はい。いや、まさにその通りかもしれないですね。でも、少し言い訳をしておけばカメラ雑誌の最新機材のレビューでは、カメラもレンズもメーカーからお借りすることが多いですから、時代的な整合は取れていると思いますよ。お仕事ですしね。いくら小商いとはいえ。
もちろんクラシックなフィルムカメラや、クラシックなレンズも好きですよ、ただ、こうした機材は、ヨタ話で毎回埋めてゆくような本連載のようなエッセイに初めて大きな効力を発揮するものであります。
正直なところプライベートな撮影では好きなものを好きなように使わせていただくというのが筆者の基本態勢でございます。こうみえても写真制作のONとOFFは明確に分かれている方なのですよ。
家の路地裏に転がっているバケツとか、野良猫とか錆びた看板を撮るためには最新の高性能レンズで撮る必然がまったくないということです。したがって、出がけにふと目についたレンズをとりあえずお気に入りのカメラにつけてゆくみたいな機材準備と撮影方法になります。
筆者がペンタックスK-1を使い出した時に聞こえてきたのは、35mmフルサイズ専用のペンタックス交換レンズが少ないのではないかという話でした。FAとかD FAと冠されるペンタックスのレンズですよね。
へーとか思いましたけどね、Kマウントやその前のM42マウント時代まで遡れば、星の数ほどレンズなんかあるんじゃないかと思いましたし。でも、先に申したとおり、K-1のポテンシャルを引き出すには最新のレンズを使わないとダメだそうです。面倒です、“仕事” じゃないのに。好きなレンズを好きなように使いたいですわ。
smc PENTAX−FA★ズーム28-70mmF2.8 AL
これも毎度の繰り返し言いますが、筆者はペンタックスレンズの味わいとやらを生かすには、35mmフルサイズのデジタルカメラを用意した方がいいのではと思っておりまして、この意見には微塵の変化もありません。歴史があるシステムなのだから当然なのです。
古いレンズはとくに周辺での画質が今ひとつということが多いので、APS-Cのフォーマットの方が周辺がカットされるため優位だと思われる人もいるかもしれませんが、筆者なんかは、逆にダメな場所を見ないようにする。というコンセプトに感じてしまいます。いや、像が流れたりするのが好きなのではなくて、装着されたレンズがどのようなものか良いところも悪いところも知りたいという好奇心からからくるものです。
フィルム時代の、デジタル時代の、と、レンズを区分けしてゆくとなんだか疲れることがあります。そこそこに普通に写れば、筆者の場合は自身の写真表現に差し障りは出ません。
単純な意見としてですが、ペンタックスが“不変のKマウント”を今後も標榜してゆくのならば、35mmフルサイズのイメージサークルをカバーするレンズはすべて絞り環を残し、通常絞りとして新旧カメラレンズの相互互換をはかるべきだと考えています。
真面目なレンズ設計者は、光学性能において、同じスペックのレンズの中で当然テッペンを取るのが目標となるでしょうし、機構設計のエンジニアならば、絞りは全て電磁絞りにして、高速連続撮影をしても絞りの動作を安定させ、適正な露出を維持するように考えるのではないでしょうか。いずれも エンジニアなら当然の目標となると思います。
それでもなお、筆者が思うにペンタックスは将来も一眼レフでゆく、しかもKマウントを堅持する趣味性を打ち出すならば、最新のレンズでは光学性能を重視しつつも旧製品への互換性を柔軟に考えるべきではないでしょうか。
もちろん旧レンズは新型ペンタックスボディに装着しても機構的には大きな問題は起こりません。ただ、絞り優先AEで使用すると絞りが開放のまま動作することになるから気をつけろ、ということは強くユーザーに注意喚起したいわけです。
でも旧来のFマウントを採用しているニコンのデジタル一眼レフでは、なんの設定もなくそのま絞り優先がAE使えますからねえ。マウントに関してはペンタックスもニコンも似たような事例のはずなのですが。
smc PENTAX−FA★ズーム28-70mmF2.8 AL
パワーズームに切り替えるにはズームリングをスライドさせてPOWER ZOOM文字が現れればOK。動画時代を見据えた機能。というのは嘘ですね。動作音が大きいので、影響が大きくなりそう。
フォーカスリングもクラッチ式でスライドすることでAF/MFの切り替え可能です。「AUTO FOCUS」文字が現れて入り状態ではAF可能です。OM SYSTEMや富士フイルムのXシリーズの一部のレンズにも似た形式を採用しているものがありますが、本レンズの切り替えは硬めで確実。知らぬ間に動いてしまうようなことはありません。
繰り返しますがペンタックスもニコンも古い機種、とくにフィルム一眼レフには優しくありません。
で、筆者が下した結論は単純です。K-1の性能を最大限に発揮させる、じゃない“楽しむ” には、かつての「FA★(スター)レンズ」 を使うのが得策じゃないかということに思い当たりました。そう、FA★レンズとはペンタックスフィルム一眼レフカメラ時代の高性能レンズシリーズのことであります。
FA★レンズの鏡筒はシルバーカラー、脇にレンズ構成図のプレートが貼られ、デザインに凝っていて、フォーカスリングを前後させることでクラッチ機構が働き、AF/MFの切り替えができる多機能のレンズです。さらに絞り環もあります。
ズームはモーターによるパワーズームを使うことができます。この電力供給はマウント内にあり、レンズ内モーターAFへの電源供給も行われます。カメラボディの電源オフで、パワーズーム位置の場合には自動的に全長が一番短くなるように動いて止まる機能があるのもすごいですね。
多くのスターレンズは収差補正が追求されK-1での撮影でもけっこうバリバリいけると思いますよ。ただ一部のレンズでは、明暗差が大きい条件下の被写体のフリンジに色が残るということもあるのですが、そんなのどうってことはありません。ものすごく気になるならPhotoshopで消してしまえば済むことであります。
次回から、手元にあるFAスターレンズと筆者、そしてK-1のありようについて少し続けて考えてみたいと思います。
K-1ミラーボックス内にある、2つの接点は、今はレンズ内モーター駆動用ですが、以前はパワーズーム用の接点だったそうです。前者はこれを応用したわけですよね。ズルいです。手前に出ているのはフォーカス用のカプラーですね。
smc PENTAX−FA★ズーム28-70mmF2.8 ALのマウント面です。パワーズーム用の接点が見えます。奥のマウント部分にはAFカプラーが見えます。ボディ側と連結します。
smc PENTAX−FA★ズーム28-70mmF2.8 ALの鏡筒にある銘板です。こういうレンズ性能とは全く無意味なものをつけるのが好きなPENTAXです。Limitedレンズの七宝焼のフィンガーポイントもそうですね。このレンズ構成図はこの28-70mmのものなのか分かりません。でも悪いことじゃないです。趣味性も極まれりです。
ペンタックスレンズ総合カタログ【35mm一眼レフ用・1994年版】
(資料提供:リコーイメージング株式会社)
- smc PENTAX−FA★ズーム28-70mmF2.8 AL SPECS
- ◉マウント=ペンタックスKAF2マウント
- ◉レンズ構成=11群14枚
- ◉画角=75~34.5°
- ◉絞り方式=完全自動絞り
- ◉最小絞り=F22
- ◉測光方式=開放測光
- ◉焦点調節=前玉回転式 AF/MF切替え可能
- ◉フィルター径=67mm
- ◉最短撮影距離=0.43m
- ◉最大撮影倍率=約1/4倍
- ◉フード=専用フード
- ◉大きさ=84.5(最大径)✕104.0(全長)mm
- ◉重量=800g(フードなし)
- ◉発売日=1994年(平成6年)3月10日
- ◉価格=165,000円(ケース・フード付・税別)
- ◉生産数=800本(当初月産)
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