しつこいようですが、カメラは小型軽量が正義と考えているアカギでございます。あけましておめでとうございます。2022年もペンタックスを推しまくることから始めたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
ペンタックスは他社よりもかなり遅れて1975年6月にマウントの変更を行い、M42からKマウントのバヨネットへ、そして同時に3機種の一眼レフを発売したわけですが、それでも存在は地味な印象でした。
ところが早くも1976年の12月に新たなカメラを発売します。これがMシリーズのアサヒペンタックスMEとMXですね。予期をしていない登場で、いきなりの小型軽量の一眼レフ路線に踏み切ったわけです。
前にもこの連載で述べましたが、Kシリーズは外観を見る限りは小型軽量というイメージを持つことができませんでした。実際はペンタックスSPFとかESIIとたいして大きさは変わっていないのに。だからニコンやキヤノンの一眼レフに比較すれば小型の部類に属しますね。
それでもオリンパスOM-1やOM-2登場の刺激があったのでしょうか。それらよりも小さいカメラを作ることが目標とされたのかもしれません。この分野は譲れないぜ、というペンタックスの矜持というものでしょう。
筆者も小型軽量なカメラは大好きですが、カメラというのはただ小さくすれば良いというものではないわけです。ボタンやレバーなどが小さくなりすぎて使いづらくなるという可能性もあります。OM-1もOM-2もボタンやレバー類は逆に大きくなっていました。巻き戻しクランクなんか、ニコンF2よりはるかに大きいですからねえ。
今回ご紹介するアサヒペンタックスMEは絞り優先AEオンリーの単機能の一眼レフです。マニュアル露出に設定することはできません。
唯一、シャッターボタン周りの黒いリングがシャッターロックボタンやメカニカルシャッターの1/100ポジションやB(バルブ)ポジションへの変更のために存在しています。シャッターダイヤルが軍艦部に見当たらないという特異なデザインで、この潔さがデザイン的にはステキです。一眼レフは高級カメラとして存在してきましたからビギナー向けのコンパクトカメラみたいな単機能AE機としたのは珍しい例というか、ここまでシンプルな機構にした一眼レフはMEが世界で初めてだったのではないでしょうか。
ボディのみでは重量460gほどです。軽いですが、作り込みにはさほど安っぽさがありません。上下カバーは真鍮製のようです。ただ肉薄で軽くコツンとしただけでも凹みやすい印象です。プラスチックのカバーにすればもっと軽量化できるはずですが、それを行わなかったことも評価対象なのです。別の機会にお話ししますが、後継機のMEスーパーやME Fなどはプラスチックの外装になりました。
ボディサイズに対して、ファインダーが高倍率であることにも驚きですね。ファインダーアイピースに目を当てると「おっ」と声が出てしまうほどで、なんと倍率は0.97倍もあります。こんなに小さいボディなのになぜファインダーが大きいのか、マジックのようです。ただ、撮影した感じは少々視野率が低い印象ですね。公式には92パーセントらしいのですが、実際にはこれに満たないようです。
操作フィーリングはとても良い印象です。小刻み巻き上げはできませんが、巻き上げレバーはフィルムを装填していてもかなり軽いです。シャッター音も柔らかく、耳ざわりが良い印象です。金属縦走りシャッターでこれは評価高いです。
カメラボディが小さいのだから交換レンズも小さくせねばならないという真面目な考え方でレンズもsmcペンタックスMシリーズとなります。OMズイコーレンズに対抗するようにこれも小さくまとめてきました。レンズは小型化を追求すると光学性能が落ちるという理屈があります。今のミラーレス機用の交換レンズをみると、小型軽量を追求しているレンズはあまり多くありません。現時点ではサイズよりも性能追求主義ですね。
smcペンタックスMレンズの評判は意外と分かれているんですよね。小さくしたからダメという感想も各方面からいただいていますが、手元にあるペンタックスMレンズでそういう印象を持ったレンズは少ないんです。
過去のカメラ雑誌での評判を少し調べてみると意外に性能評価は高いですよね。ただ、個人的には一部のペンタックスMレンズは、フィルム撮影では以前の同スペックレンズより少々硬めになったような印象を持っています。推奨したわけではないのですがMシリーズで特に有名なのはsmcペンタックス40mmF2.8ですね。パンケーキレンズとして有名です。なぜか曇りやすいことでも有名ですが、製造番号700万台以降のものは曇りづらいという都市伝説がありますが、筆者のこれまでの経験ではその傾向のようです。この種の薄いレンズはテッサータイプのものが多いのですが、本レンズは4群5枚構成です。なんだか贅沢です。
他にもsmcペンタックスM20mmF4とかM28mmF2.8、M35mmF2.8、M50mmF1.7などは小さくて描写もよくとても好きなレンズたちで、今でも使用頻度が高いレンズたちです。
基本的なフィルターアタッチメントサイズはペンタックスSP当時のM42マウントのタクマーレンズでは径49mm、Kマウント化したsmcペンタックスレンズでは径52mm、smcペンタックスMレンズからは再び径49mmに戻りました。このあたりも、オリンパスのOMズイコーレンズと似ています。
当時の流行りもあって、MEには専用のワインダーMEも用意されました。グリップが太めで、かなり大きい意匠です。MEの小型軽量である特徴をブチ壊してしまうくらいの印象です。
ただグリップ感が良いため、MEに重量級の長焦点レンズを装着するような場合はホールディングバランスがとても向上します。その他の場合は不要なんじゃないですかねえ。真面目にワインダーを使った人っているんでしょうか。筆者は不真面目だから使いますけどね。でもKシリーズまでは専用のモータードライブボディを使用しなければならなかったのにMEのワインダーは無調整互換でしたから、やればできるじゃねえかよと思いましたけど。
小型軽量は正義といいましたが、オスカー・バルナックがライカを発明した理由は何かという話を思い起こしてみれば、35mm一眼レフって、機能や性能の進化と共に、巨大化してしまったことに問題を感じます。現在の35mmフルサイズミラーレスだって、なんであんなに大きいのですかと言いたくなるんですけど。そういう意味ではMEって、思い切りの良さがありますね。
多分割測光もまだ採用されていない時代ですし、カラーリバーサルフィルムをMEに装填して、AE撮影ですべての撮影に勝負を賭けるなんていう人は、その当時にいたのかなあ。露出補正も1ステップで粗い刻みですしね。ISO感度の細かな設定で乗り切ったのでしょうか。それともカラーリバーサルフィルムを使わないことが設計の前提とされていたのかも。もちろん公式にはそんなことは言えません。
受光素子はGPDです。ガリウムフォトダイオードという半導体です。当時はSBCとかSPDとか応答速度が速い受光素子が次々とAE機に採用されています。応答速度の速さは低輝度撮影時には有効ですが、通常撮影でのAEの露光精度とは関係ありません。けれど、経年変化で安心できなくなるCdSよりも長持ちしている個体は多いようですね。
絞り優先AEのみの機能に割り切ったカメラには、後にヤシカFRIIとかニコンEMとかオリンパスOM-10などもありますが、ユーザーのみなさんはどういう使い方していたんでしょう。
やはりそれらはビギナー機として割り切って考えていたのだとは思いますが、今となれば謎です。モノクロやカラーネガフィルムを使うぶんには問題はないでしょうから、用途や目的に合わせて使い分けせよという考え方なんでしょうね。その方がカメラ好きもカメラを増やせるし良いんじゃないかな(笑)
アサヒペンタックスME+smcペンタックスM40mmF2.8
王道の組み合わせです。コートのポケットにそのまま入ります。それなのに35mmフルサイズ一眼レフなんですからすばらしいですよね。
モードダイヤルじゃないですよ。上からシャッターロック、AUTO、メカシャッターの1/100秒、B(バルブ)の切り替えを行うリングです。白いボタンはロック解除用で指標にもなっています。
フィルム感度設定窓と周囲は露出補正ダイヤルですね。補正量はご覧のように粗いですし、補正中の警告マークもファインダー内には出ませんから注意が必要です。
カメラ背面。フィルムメモホルダーも金属製。フィルム給送シグナルもあります。しかし、こんなものをつけるなら、プレビューレバーをつけたほうがよかったですよね。
smcペンタックスM50mmF1.4(左)とsmcペンタックス50mmF1.4(右)の大きさ比較
一回り小さいMレンズだが性能は向上しているようです。個人的にはMEにはMレンズ以前のデカいペンタックスレンズを装着して、そのアンバランスさを楽しみたくなります。ええ、変態です(笑)
ワインダーMEII
初代ワインダーMEの改良型。単3形電池の本数は6から4本、コマ速度は1.5コマ/秒から2コマ/秒へと改良されています。あいかわらず大きいですが、長焦点レンズを使う場合はホールディングが安定します。
アサヒペンタックスME・MXカタログより抜粋(資料提供:リコーイメージング株式会社)
【ASAHI PENTAX ME 性能表】
型式=自動露出TTL電子シャッター内蔵35mm一眼レフカメラ
使用フィルムと画面サイズ=35mmフィルム・24×36mm
シャッター=セイコーMFCシャッター(縦走りメタルフォーカルプレーン)、オート電子シャッター 8秒~1/1000秒(連続無段階)、メカニカルシャッター 1/100秒・B(無電源で作動)、シャッターボタンロック付き
シンクロ=ホットシュー(X接点・感電防止装置付)、、X接点(JIS-B型ターミナル、抜け止めネジ付)、X=1/100秒
セルフタイマー=作動秒時4~12秒、始動はセルフタイマーレバーの復元操作による
ファインダー=銀コート・ペンタプリズム式ファインダー、スプリットマイクロマット式フォーカシングスクリーン、倍率0.97倍(50mmレンズ時)、視野率92%、ファインダー内に自動露出シャッター速度を16個のLEDで表示、ファインダールーペはSMC、視度調整レンズアダプターM、レフコンバーターM、マグニファイヤーM装着可
ピント調節=レンズの距離環の回転による
ミラー・絞り機構=クイックリターンミラー、自動絞り
フィルム装填=マジックニードル式スプール、フィルム送り・巻戻し確認表示
手動巻き上げ=プラスティックカバー付きレバーによる、巻上角135°、予備角30°、巻上完了表示窓付
フィルムカウンター=自動復元順算式
巻もどし=クランクによる、巻もどし完了表示付
レンズマウント=ペンタックス・バヨネットKマウント、着脱角は65°
露出計=開放・中央重点測光式TTL、新受光体GPD(ガリウムヒ素リン・フォトダイオード)、16個のLEDで自動露出シャッター速度を表示、露出倍数切換えダイアル4×~1/4×
露出計スイッチ=シャッターボタンと巻上げレバー連動式、測光範囲EV1~19(ASA100・F1.4 付)
フィルム感度目盛=ASA12~1600
電源=1.5V銀電池G-13型2個
バッテリーチェック=露出計をスイッチオンにして露出表示用LEDの点灯で確認(3段階)
裏ぶた=交換式(ダイアルデータMEの装着可能)、メモホルダー付
大きさ・重さ=ボディのみ:幅131×高さ82.5×厚さ49.5mm・460g、SMCペンタックス-M 50mmF1.4付き:幅131×高さ82.5×厚さ86.5mm・700g、SMCペンタックス-M 50mmF1.7付き:幅131×高さ82.5×厚さ80.5mm・650g、SMCペンタックス-M 40mmF2.8付き:幅131×高さ82.5×厚さ67.5mm・570g
自動巻上げ=ワインダーME(連続撮影約1.5~1.2コマ、1コマ撮り切換式)をボディに装着して自動巻上げ可能
発売時期=1976年12月
発売時価格=50,000円(ブラックボディは3,000円高)
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