じつは今回もペンタックスLXでひっぱるつもりでした。ところが自分のだらしなさが露呈する結果となりました。見つからないんです。そう、LX用の交換ファインダーが。
ノーマルのFA-1も初回以降依然として出てこないし、できればシステムファインダーベースFB-1に多種類のアイピースを装着し、デザインの変化を見ていただきたかった(実用的じゃなくてね)のですが、どちらかにお出かけのようですわ。
もし、本連載の最中にお戻りになったら、再度出演いただくことにしますね。本稿は一応時代に沿ってペンタックス各機種を紹介していますが、そこは筆者の本意でもないので。気まぐれなんですよね。編集者はたぶん困っていると思います。
で、気を取り直して、今回はうちにあるはずのペンタックス スーパーAに登場いただいて、マルチモードの楽しみでも一席ブツかなと思ったのです。
ところがです、これもどちらかにお出かけで執筆を開始するまで見つからなかったのです。困りますねえ。誰かに貸したかなあ。記憶薄いなあ。けっこう好きなカメラなんですよねえ。うちの仕事場からスーパーAをお持ちになった方はいませんか?早急に返却をお願いしますよ。
で、とてもまわりくどいですが、代打として登場をお願いしたのはペンタックス プログラムAでございます。もともとは機能説明というよりも「マルチモード」という話をしたかったので、こちらでも良いわけでしてね。少し長くなるのですが、ここからカメラの発展、イコール自動化とはなんぞや的な話をしますね。
ほんとに昔の話になってしまったのですが、その昔、一眼レフカメラには「両優先AE」って言葉がありました。
簡単にいえばマニュアル露出に加えて絞り優先AEとシャッタースピード優先AE、あるいはプログラムAEが切り替えられるカメラは「マルチモードAE」という呼び名になるようですね。
両優先AEは当時のミノルタが先鞭をつけたので、この後の他のメーカーもXDに対抗するために、ほとんどの一眼レフを両優先AE対応せねばならなくなりました。
今みたいに電子マウントなんか考えられない時代ですから、絞りの連動もメカニカルでボディ側のレバーでレンズの絞りピンを動かすという方式がとられていました。絞り優先AEでは撮影者が任意に決めた絞りに対して適正になるシャッター速度をカメラが自動的に決めていましたので、特別に新しい機能を加えることなく絞り優先AEは可能でした。多くの一眼レフは絞り優先AE方式が多かったので、シャッター速度優先AEに対応するには、安定した絞りの制御のために何らかの機械連動の改良が必要となったわけです。
キヤノンFDマウントのように最初からシャッタースピード優先AEを基本としていたカメラ・レンズシステムでは、カメラボディに絞り優先AEを加えて、両優先AEにするのは容易だったわけで、将来のマルチモード化に向けて有利に働きました。
Kマウントレンズもこの例に漏れず、シャッター速度優先AEのことは考えていませんでした。比較的新しいマウントなのに未来は予見できなかったのでしょうか。
PENTAX PROGRAM PLUS+smc PENTAX-A 24mm F2.8
日本名はプログラムAですが、海外向けネーミングだとプログラムプラスです。本機は後者です。たしかオーストラリアでの購入です。機能的には調べてないけど、両機はたぶん同じです。違っても大勢に影響はなく。
ご紹介するはずでした、スーパーAはマルチモード機ですが、そのポテンシャルを発揮するには、レンズに「Aポジション」のある「ペンタックスAレンズ」を使う必要があります。
Aポジションに合わせれば、シャッタースピード優先AEやプログラムAE撮影をすることができます。Aポジションから絞り環を動かして、絞りを任意に設定する時は絞り優先AEやマニュアル露出で撮影ができます。
シャッタースピード優先AEはボディ側からの絞り連動ピンでレンズの絞りレバーを制御することになりますが、これを可能にしたマウントをペンタックスKAマウントと呼ぶようです。
メカニカル動作のマルチモードって、今から考えればずいぶん大変な労力が必要だと思うのですが、カメラのカタログにうたうような表現や撮影条件によって、撮影モードを切り替えるという人は多くの人はするはずもないですね。それとも、逐一モードを切り替え撮影している読者の方いますか?いるなら表彰したいので申告してください。
現在のカメラもそうだと思いますが、マニュアルで露出を決めるのは、おおむねシャッタースピードを決めてから絞りを動かして、適正な露出に持ってゆくというのが定石ですから、本来はシャッター速度優先AEの方が馴染みやすい感じでした。でも、ペンタックスをはじめとして、どちらかといえばAEは絞り優先だぜ、という考え方が一眼レフでは主流だったはずです。容易にAE化を可能にしたからでしょう。
筆者もこれに慣らされて逆にシャッタースピード優先AEはオマケだぜ、みたいに考えていましたからねえ。でもキヤノンAE-1とかを使っていたらそういうことにはならなかったんでしょうねえ。このあたりの慣れって、染み付いてしまいそうですね。
撮影モードの切り替えだけではなくて、ボディ側から絞りを制御できるようにするならば、レンズの絞り環は動かさないわけだから不要だぜ、ということなります。マニュアル時には絞り環を動かすことになりますが、ボディ側に絞り環の代わりになるダイヤルを設け絞りの制御ができれば、絞り環は不要になります。
ボディ側からシャッタースピードも絞りも制御することを可能にしたのがキヤノンA-1でした。現在主流のコマンドダイヤルで絞りもシャッタースピードも決めるぜ、みたいな考え方が出てきたわけです。なにか知恵を出し合って、メカ的な解決をしてゆく感じがアナログの妙というやつです。それに繰り返しますが、モード切り替えは撮影の利便性ではなくて、いじくる楽しみのためにあるようなものじゃないのかなあ。でも各社のエンジニアはがんばりました。
ペンタックスAレンズの絞り環のAポジションです。キヤノンFDレンズのように独立した位置にあり、ロック機構があります。ニコンFマウントやミノルタのMDレンズでシャッター速度優先AEやプログラムAEのモードを使う場合は最小絞りに設定するのが基本でした。
で、プログラムAなんですが、これはスーパーAからシャッター速度優先AEを省いて、最高速シャッタースピードを1/2000から1/1000秒に落とし、TTL自動調光を省略した普及機的な扱いの一眼レフのようですね。
マウントには6個の電子接点が設けられていますが、これを「KAマウント」と呼ぶようです。でもペンタックスAレンズには電子接点は1個しかないみたいですが。あとの5個は何のためにあるのでしょうかねえ。飾りじゃないですよね。またこの頃はAFレンズは出てないし。どなたか電子接点の役割をご存知の人がいらしたら教えてください。
マニュアル露出時にはシャッタースピードはボタンをプッシュする方式が採用されていたので、シャッタースピードダイヤルは存在していません。
これはペンタックスMEスーパーから採用されていて、外観がスッキリしていていいという話もあるのですが、個人的には面倒に思いました。たしか当時のカメラ雑誌では、その頃流行り出した、テレビゲームの影響じゃないのかという論評もあったくらいです。どうなんでしょうねえ、さすがにこじつけっぽいですよねえ。
専用のモータードライブAや、ワインダーMEIIとの互換性もあったので、自動巻き上げの楽しみはなくはないのですが、カメラ全体から高級感を感じないのは、プラスチックボディだったからでしょうか。
全体のデザインは個人的には好みですが、一眼レフって、エントリークラスであっても、もう少しエラそうでいいのではないかと思いましたけどね、コンパクトカメラとの差別化という意味においても。
先に書いたようにマルチモード機って、便利なようでいて、モードを切り替えて使うことは筆者はまずないのですが、家で一杯やりつつ、カメラをあれこれいじくりまわす時は楽しいんですよねえ。
今みたいにモード切り替えがさらにたやすくなるとますますモードを切り替えようとも思わなくなるし、AEで撮影する場合にも、プログラムAEなど、ダイヤルでプログラムシフトできてしまうから、撮影モードなんか事実上関係ないのではと思いますもん。つまり、気に入らない数値が表示されれば、ダイヤル回せば絞りなりシャッタースピードは変化しますから好きなものを選べばいいわけですね。シャッタースピードと絞り数値は、ファインダー内のLCD窓に表示されます。見易さはまずまずなんですが、筆者はあまり気にしてないですねえ。
あれだけバカにしていたプログラムAEを、デジタルカメラ時代になってからわりと積極的に使っている筆者なのですが、時おり、こんなことしてていいのかなとか思うことがありますよ。ジジイだからかもしれませんが、なんだかユルく写真撮っている感じはしますねえ。
毎度述べていますが、基本的にカメラの発展とは自動化のことです。だから、色々な手段が使われ、マルチモードが採用されるのは当たり前のことですよね。
ただ、実際にはこのプログラムAでプログラムAEモードを使って撮影した記憶がないのです。この当時はどこかでプログラムAEを軽んじていたんだろうし、筆者としては完全にお仕着せになる露光量をカメラが勝手に判断することが許せなかったのでしょう。
ペンタックスAシリーズレンズにリニューアルされています。Kマウントは、ユニバーサルマウントとして呼ばれていたことは明白です。
あれこれボタンでいじくるのは嫌いではないですが、ボディ周りにLCD窓があるわけではないので、ファインダーを覗いて確認せねばなりません。ユーザーには、気をつけてと書きておきます。
プレビューレバーの形も特異です。手前に押し込む感じですが、ホールディングを乱さない印象を受けました。
フィルムメモホルダーがあるのは良いですね。ただ、裏蓋の右側の変な位置にあるのですが、この理由はよくわかりませんね。
あいかわらず粗い、露光補正ダイヤルの数字刻みです。どうせ露光補正量は勘になるんだからちまちませずに大胆にヤレということなのでしょうかねえ。せっかくマニュアル設定ができるんだから、良い子は露光補正を必要とした場合はマニュアルに切り替えて撮る方がいいんじゃないかなあ。
ワインダーMEIIを装着して動作させてみましたが、無事に動きました。嬉しかったですよ(笑)。親指でフィルムを巻いた方がはるかに速いんですけどね。お遊びとしては、これでいいんじゃないかなあと思います。
ペンタックス プログラムAのカタログより抜粋(資料提供:リコーイメージング株式会社)
- 【PENTAX Program A 性能表】
- 型式=プログラム絞り優先TTL自動露出、35ミリレフレックスカメラ
- 撮影モード=プログラム自動露出モード、絞り優先自動露出モード、マニュアル露出モード、外光オートストロボモード
- モード設定=Aレンズ A[オート]ロックまたは解除、シャッターダイヤルAUTOまたはMANの組合わせによる
- 使用フィルム=35mmフィルム(JIS 135またはパトローネ入り)
- 画面サイズ=24×36mm
- レンズマウント=ペンタックスKAマウント(従来のペンタックスKマウントにレンズ情報接点付)
- シャッター=セイコーMFC-E5縦走りメタルフォーカルプレンシャッター、シャッターボタンロック付きオートおよびマニュアル電子シャッター15〜1/1000秒、1/100秒、B、電磁レリーズ
- ファインダー内表示=LCD表示 マニュアルおよび自動露出のシャッタースピードと絞り値、測光連動範囲外警告(点滅)、エラー警告(点滅)、電池の警告(点滅)、プログラム自動露出「P」、ストロボ充電完了表示(専用ストロボのとき)
- シンクロ=ホットシュー(X接点、専用ストロボ接点付)、Xシンクロ 1/100秒
- 専用ストロボ連動=ストロボ同調スピード 1/100秒自動切換え、マニュアル露出では1/100秒以下撮影(低速シンクロ)可能
- セルフタイマー=電子式、ランプ表示、作動時間約12秒、作動後の解除可能(始動はシャッターボタン)
- ファインダー=ペンタプリズムファインダー(銀コート)、スプリットマイクロマット式(クリアーブライトマットスクリーン)、視野率 縦・横92%、倍率0.82×(50mm・∞)、視度ー1.0ディオプトリ−
- ミラー=スイング上昇式クイックリターンミラー
- フィルム入れ=マジックニードル式クイックシュアローディング
- 巻上げ=レバー方式、巻上角135°、予備角30°、ワインダーMEⅡ、モータードライブA取りつけ可能
- フィルムカウンター=自動復元順算式(シャッターダイヤルAUTOおよびMANのとき、フィルムカウンター0枚目までシャッタースピード1/1000秒固定)
- 巻戻し=クランク式、巻戻しボタン自動復元
- 露出計=TTL中央重点全面測光方式、受光素子GPD
- 測光範囲=50mmF1.4レンズのとき、ISO100 EV1(F1.4・1秒)〜18(F16・1/1000秒)、フィルム感度目盛ISO6〜3200
- 露出補正=露出ダイヤル 4×、2×、1×、1/2×、1/4×
- 被写界深度確認=プレビューレバーによる(レンズ絞り値セットのとき)
- 電源=JIS LR44アルカリマンガン電池、またはSR44型銀電池(G13)を2個、あるいはCR-1/3N型リチウム電池を1個使用
- 露出計スイッチ=シャッターボタンを押すと、タイマースイッチによって露出表示約30秒間ON
- 電池消耗警告=電圧低下により、LCD表示と000のLCD表示が交互に点灯、消灯ではシャッターロック
- 裏ぶた=蝶番式、メモグリップ付、着脱可能、ダイヤルデータME、デジタルデータM取りつけ可能
- 大きさ・重さ=131(幅)×87(高さ)×47.5(厚さ)mm・490g(ボディのみ)、131(幅)×87(高さ)×84.5(厚さ)mm・725g(50mmF1.4レンズ付)
- 付属品=グリップスーパーA、ストラップ、三角金具、三脚補助板、ファインダーキャップ、ボディマウントカバー(レンズ付出荷の場合はレンズキャップが付属、ボディマウントカバーは付属しない)
- 発売時期=1984(昭和59)年2月24日
- 価格=58,000円(ブラックボディ)
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