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推すぜ!ペンタックス

第10回 「プロ用35mm一眼レフを考える・ペンタックスLX」その1

2022/01/28
赤城耕一

いろいろと寄り道をしましたが、いよいよペンタックスLXに登場していただきますね。
 

発売されたのは1980年で、それから約20年現役でいたわけですから、ニコンF3はLXと同時期にキヤノンNEW F-1は翌年の発売です。とくにニコンF3とは、ロングセラーを競い合いましたねえ。ちなみに20年を総計した両者の販売台数はかなり違うと思いますけどね。でもまあそういうことを詮索するのは野暮ですね。
 

プロにとっては35mm一眼レフはプロ用カメラではない時代があった

 

LXについて発売当時の関係者にお聞きしたことがあるのですが、ペンタックスのフラッグシップって、6×7(67)ですよとはっきり言うわけです。つまり35mm一眼レフって、プロにとってはプロ用のカメラではないという意味ですね。
 

これは当時のフィルムでは画質のクオリティ面で、35mm判と6×7判の差異が大きく、印刷面で画質の大きな差が出るからという意味もありました。画面サイズに今以上の大きなカメラのヒエラルキーがあったわけです。印刷原稿として考えれば当然のことかもしれないですけど。
 

だから今みたいに35mmフルサイズがエラいなんて時代が来るとは思ってもいませんでした。でも、当時のペンタックスは、プロ用の35mm判一眼レフとして誇れるカメラがなかったことがコンプレックスだったみたいな話もあって、ある意味では「一眼レフのパイオニア」として、ここで頑張ったわけですよね。開発期間も相当長かったとのことなので、気合いが違います。
 

LX発売当時、筆者は4×5カメラをかついで、住宅情報誌用にマンションや一戸建てなんかを撮影する仕事もしていました。高貴な「建築写真」などと呼べる代物ではないのですが。
 

で、このバックアップ撮影にはペンタックス6×7を使うことが半ば当然のようになっていて、6×7は筆者にとっては「情緒なき仕事カメラ」という存在でしたね。今とはだいぶ違う印象です 。バックアップなんで、4×5判の現像を先に行い、これでOKが出ると、未現像のフィルムを捨てました。現像代をケチるために。合理的ですな。
 

この当時アラーキーがペンタックス6×7や645を使い、街のスナップや女の子まで、あらゆるジャンルをフットワークよく撮影していたのを羨ましく見ていたのですが、筆者にとっては6×7判には苦手意識がありました。これは生理的な問題に近いかもしれませんし、このアスペクト比がうまく使いこなせなかったこともあるのかも。慣れないとフィルムが入れづらいことも印象としてありました。
 

とにかく、あくまでもペンタックス6×7は「仕事カメラ」だったわけで、私事の撮影に持ち出そうとは思わなかったわけです。今の若い写真家の皆さんはすごいですね、6×7で次々と、ご自身の表現のために撮影されています。
 

旭光学60周年を記念して誕生した正統派プロ仕様機、LX

 

先にも述べましたが、LXは正統派の35mm判一眼レフで、かつプロ仕様機で、フラッグシップであるというふれこみがあったからですね。LXは数字のローマ数字の「60=LX」の意味で、旭光学60周年を記念するカメラです。そこに選ばれたカメラがしつこいようですが、35mm判一眼レフであるということが筆者としては意外なことで、とても嬉しかったわけです。当時は仕事カメラとして、35mm一眼レフを使う分野は、新聞か雑誌の一部くらいで、広告撮影では稀だったこともありますが、先に述べたように、どこか軽んじられていたところがあります。
 

プロ用機としてLXがニコンF3よりも優れていたアドバンテージは、シャッタースピードがB、1/75ー1/2000秒ではメカニカルシャッターで機能すること。それ以下のスピードは電子式としたハイブリッドタイプであること。つまりバッテリーがなくても、撮影できる可能性が高いということですね。でもね、ニコンF3の使い手で、バッテリーのバックアップを常に気にしていた人って、筆者を含めてさほど多くないのではと思いますけど。筆者はF3の緊急シャッターなんか使った経験は一度もありません、そういえば。モードラを装着するとボディ側にも電源供給されますしね。
 

こう書くと、絞り優先AE搭載なのに、これはおまけみたいな感じでしたが、そんなことはありません。フィルム面を測光するTTLダイレクト測光採用でしたし、露出精度は悪くありません。それに専用のスピードライトを装着すればTTL自動調光機能を使うことができました。
 

LXはメーカー自らが防塵・防滴仕様を高らかにブチあげていました。カタログには雨ガッパ着て、暴風雨の中、わざとらしくLXを使う、おっさんのポートレートがあります。ラバーやシールドにより水分やチリの侵入を防ぐ構造らしいです。LXはファインダーも交換できましたし、モードラやワインダーも装着できますから、スキマだらけですよね。より浸水に関してはリスキーだと思うのですが、頑張ったようですね。雨の中使ったことがないから知らんけど。
 

どこのカメラ雑誌か忘れましたが、交換レンズも防塵防滴なのかと質問していたところがありました。意地悪ですよねえ。でも私もチラっとそう思ったなあ。当時のその質問に対する回答は、記憶によれば「レンズにも水が入りづらい構造になっています」という具合でした。大丈夫なのかよ(笑)。

 

 

ペンタックスLX+SMCペンタックス 50mmF1.2

原稿執筆にあたり、うちにあるLXを引っ張り出したところ、「アイレベルファインダーFA-2」が装着されたままの姿で発見されました。購入時にデフォルトで設定された「アイレベルファインダーFA-1」はどちらかにお出かけ中で、今回は発見することができませんでした。おかしいなあ。でもホットシューのないFA-2つきのLXの姿はグラっときませんか?こないか(笑)。

 

LXはオプションパーツとの交換ができることがユニークです。私はシャッターダイヤルと露光補正ダイヤルをカラータイプに。巻き上げレバーを金属一体型のスリムに変えてみましたよ。このシャッターボタンの受け皿は後期タイプですが、後期のタイプなので、これがデフォルトの仕様でした。

 

巻き戻しクランク部分。下部は露光補正ダイヤルのカラー版だけど、これまでより補正量の刻みが細かく、1/3EVで設定できますね。クランクシャフトの下もシールド型ベアリングなるものが入っているみたいですな。

 

スプール部分は「マジックニードル」と呼ばれる縦置きのスダレみたいな形状を採用している。ここにフィルム先端を刺すだけで、巻き上げの失敗はないという簡単、簡便さが嬉しいです。不器用な私ですら、しくじったことありません。

 

 

 

ペンタックスLXカタログ(1984)より抜粋(資料提供:リコーイメージング株式会社)

 

 

  • 【PENTAX  LX  性能表】
  • 型式=TTL自動露出式35ミリ一眼レフカメラ
  • レンズマウント=ペンタックスKマウント
  • シャッター=チタン幕フォーカルプレーンシャッター ●オート:無段階1/2000~125秒(ASA100、常温・常湿) ●マニュアル:機械式1/2000秒~X(1/75秒)・B、電子式1/60~4秒
  • シンクロ=FP、Xソケット(専用ストロボ用接点付)
  • ホットシュー=アイレベルファインダーFA-・FA-1Wにあり
  • セルフタイマー=機械式約4~12秒、チャージ後の解除可能、(始動はシャッターボタン)
  • ファンダー=ファインダーおよびフォーカシングスクリーン交換式、視野率:縦98%、横95%、倍率:0.9倍(ファインダーFA-1、レンズ50mm、無限遠)
  • ファインダー内表示=①シャッタースピード ●オート:1/2000~1/30秒は(緑)LED、1/15秒~1/4秒は(黄)LED、オーバー・長時間(LT)・およびB・ストロボ充電完了・調光確認表示は(赤)LED ②絞り 交換ファインダーFA-1、FA-1W、(FB-1+FC-1)(FB-1+FD-1)により可能(直読式) ③露出倍数警告 1×以外は赤色指標
  • ミラー・絞り機構=スイングバック式多層コート大型クイックリターンミラー ミラーアップ、プレビュー機構付 測光ミラー付
  • フィルム装填=マジックニードル式クイックシュアローディング
  • 巻上げ=レバー式巻上げ角120度、予備角25度、分割巻上げ可能、巻上げ表示付、モータードライブLX、ワインダーLXで自動巻上げ可能
  • フィルムカウンター=自動復元順算式(赤表示:20、24、36)、巻戻しに連動
  • 巻戻し=クランク式、巻戻しボタン自動復元、モータードライブLX、ワインダーLXによる巻戻し可能
  • 多重露出=巻戻しボタンで多重露出機構切換え 巻戻し連動カウンターを併用して任意コマへの多重露出可能
  • 露出計=IDMシステムTTL中央重点全面測光 ●マニュアル測光範囲:EV1~19(F1.4レンズ、ASA/ISO100) ●オート測光範囲:ASA/ISO100でF1.2・125秒~F22・1/2000秒(EV-6.5~20常温・常湿) ●受光素子:SPDセル1個 絞り込み・ミラーアップ時も自動露出可能
  • フィルム感度目盛=ASA/ISO6~3200(露出倍数1×の時)
  • 露出補正=露出補正ダイヤル 4×・・2×・・1×・・1/2・・1/4(1/3ステップダイヤル式)1×でダイヤルロック付、補正警告ファインダー内表示
  • 露出計スイッチ=ON:シャッターボタンまたは補正ダイヤルロックボタン、OFF:タイマースイッチ(約25秒でOFF)
  • 電源=JIS-LR44型アルカリマンガン電池、またはSR44型銀電池2個使用
  • 電池消耗警告=電圧低下により表示用LEDが点滅、さらに低下すると消灯。別にシャッターもストップする警告装置あり(オート、マニュアル電子式の場合)
  • 裏ぶた=交換式(長尺マガジンLX、ダイヤルデータLX、データLX装着可能)メモホルダー付
  • 大きさ・重さ=144.5(幅)×90.5(高さ)×50(厚さ)mm・565g(FA-1付ボディ)、144.5(幅)×90.5(高さ)×87(厚さ)mm 805g(FA-1・50mmF1.4レンズ付)
  • 付属品=ファスナーストラップLX、三脚用補助板、視度アジャスター、ボディのみ販売は他にボディマウントキャップ、ボディトップキャップ付
  • 発売時期=1980年11月21日
  • 価格=ボディ(ファインダーなし)112,000円、ファインダーFA-1付 125,000円、FA-1、50mmF1.4付 154,400円
    アイレベルファインダーFA-1 13,000円、アイレベルファインダーFA-1 13,000円、アイレベルファインダーFA-1 13,000円、ファインダーFA-1 13,000円、ファインダーFA-1W 14,000円、ファインダーFA-2 10,000円、ファインダーFB-1 19,000円、ファインダーFC-1 8,000円、ファインダーFD-1 11,000円、ファインダーFD-2 4,000円、ファインダーFE-1 15,000円モータードライブLX 50,000円、ワインダーLX 30,000円

 

 

 

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