今もなお、ワインダーやモータードライブは好きですね。還暦すぎても、こういうところがお子ちゃまなわけですわ。ええ、「大人のオモチャ」の最たるものです。
自分でも好きな理由はわかりませんが、写真青年時代に、かの「連写一眼」がオンタイムで目の前にあったからでしょうか。これはキヤノンAE-1+ワインダーのことです。
これはモータードライブではなく、廉価に設定された“ワインダー” だったのですが、AE-1登場前には、トプコンスーパーDM用しかなかったのではないですかねえ。ここから各社ともにワインダーは重要なアクセサリーになりました。のちに一眼レフの多くは巻き上げは自動化されますが、これはAF化とほぼ連動しています。
フィルムの自動巻き上げ装置そのものは、ワインダーが一般的なアクセサリーになる前は“モータードライブ ” という名称の製品がほとんどで特殊な装置でした。価格はカメラボディ本体か、それ以上することも珍しくない高価なものでした。スポーツ撮影などに使われましたが、学術用の無人撮影などにも多く利用されています。
定義ではモータードライブがコマ速度が速く、ワインダーはそれよりも遅く、とくにワインダーは指でフィルムを巻き上げる代わりにモーターがやる、みたいな軽い扱いになっていたと思います。だからおもちゃに見られてしまうのです。
とはいえ、当時のモータードライブはどんなに速くても5コマ/秒くらいですから、今から考えれば笑ってしまうくらいの速度です。でも36枚撮りのフィルムでも、あっという間にフィルムは終了します。
ワインダーでは1コマ/秒などという仕様も珍しくありませんでした。またワインダーでは、シャッターを切ったあと、シャッターボタンから指を離さないとフィルムが巻き上がらない仕様のものも珍しくありませんでした。これでは連続撮影はできませんね。
フィルム巻き上げを自動化するということは、手持ち撮影でフレーミングを変えないで撮影できることや、次のシャッターチャンスに備えるためにあったわけで、分解写真を撮るためではありませんでした。
往時のカメラメーカーのモータードライブのカタログ作例をみると、宣伝のためでしょう、まるで映画のコマを見るかのようでしたが、5コマ/秒程度でそんなことはあるはずもなし。現在のように120コマ/秒なんてとんでもない数字を見ると、モータードライブもワインダーもおもちゃにもならない感じですよね。
フィルムも今の価値観からしても、同等かそれ以上価格だったように思います。とんでもない無駄使いですね。でも5コマ/秒という数字を見ただけで、それだけでも世紀の名作が撮れそうな気がしたくらいです。
ペンタックスにモータードライブが用意されたのはSPからだと思いますが、これはモーター専用ボディを購入せねば装着できませんでした。もちろんモーターは別売です。
Kマウント化したのちもモータードライブは特別なボディでしか使えず、本連載で紹介したK2DMDで初めて無調整装着が可能になったわけですね。ワインダーが標準的なアクセサリーとして用意されたのはペンタックスMEやMXからではないかと。ペンタックスは当時のミノルタと並んで、ワインダー、モータードライブ関連の開発は奥手でした。
なんだか前置きが長くなりましたが、フラッグシップLXのフィルム自動巻き上げ関連アクセサリーはどうなっていたかということであります。エラいですね、ワインダーとモータードライブ両者が用意されました。一番のライバルF3はモータードライブだけの用意しかありませんでした。キヤノンNew F-1にもワインダーとモータードライブの用意がありました。フラッグシップといっても、一般のアマチュアのみなさまに売れなければ商売にはなりません。このために多用なアクセサリーを用意したということではないかと。
ワインダーLXのコマ速は2コマ/秒。それでも使用していてそう違和感がないのは、軽量だったからでしょうね。それにフィルム巻き戻しもモーターで行うことを可能にしていました。大型ストロボのチャージ時間とちょうどタイミングがあったので、重宝して使用していた記憶があります。
モータードライブLXも小型でした。最高コマ速度は5コマ/秒でした。当時のモータードライブとしては標準的なコマ速度ですが、K2DMDのモータードライブが2コマ/秒ですから、かなり高速になったイメージがあります。面白いのはコマ速度の任意変更がダイヤルで可能だったことです。フィルムのモーター巻き戻しも可能です。ニッカドバッテリーを使用するのが基本仕様ですが、うちにあるニッカドバッテリーは寿命は尽きており、リファブリッシュが必要なようです。しかし、現在の使用頻度を考えれば、そこまでしてという思いもあります。
これに代わって、バッテリーグリップMなる巨大なバッテリー用グリップも用意されています。これが単3アルカリ乾電池を12本使用するという、装着するのも躊躇してしまうほど重いものなのです。横位置での構えでは重心が下に来るので問題はないのですし、広角レンズを装着して、ハイアングルからの目測スナップ撮影に役立ちました。ところが縦位置撮影ではカメラを構えるとグリップが横に突き出すようなイメージになります。これはかなり邪魔で、バランスに欠けるものになります。もっとも現在では見られない部類のアクセサリーですからパフォーマンスとして周りに見せびらかすにはちょうどいいかもしれないですね。
とはいえこのモータードライブLX、動作音がなかなか上品です。往時の他社のモータードライブは破壊音のようなけたたましく高い動作音を発するものも珍しくなかったのに、品格があるわけです。もしこのニッカドバッテリーに代わる単3アルカリ電池を入れることができる長方型のバッテリーパックがあれば、再び見直されることになるのではないかと思いますが、さすがにこれはもう望めるはずもありません。でも世界は広いから、自作した人とかいらっしゃるんじゃないですかねえ。
LXの巻き上げレバーによるフィルム巻き上げトルクや感触は、ニコンF3の軽さには及ばないけど、キヤノンNew F-1のゴリゴリ感よりもはるかに優れているというイメージです。モータードライブやワインダーは必然ではないのですが、その姿が当時としては比較的スマートだったため、個人的には有用なものであると今も考えています。
ペンタックスLXチタン+ワインダーLX+smcペンタックスM 35mmF2.8
ペンタックスLXチタンに、ワインダーLXをつけてみます。下半身デブにはなりますが、許せる範囲です。縦位置撮影では使いやすいですね。2コマ/秒なので動作は少しまったりです。
ワインダーLX背面です。Cはコンティニュアス、Sはシングルですね。左に見えるレバーはフィルム巻き戻しをモーターで行う場合に使用します。
ワインダーLXやモータードライブLXを装着するにはLX本体底部の連動軸用の蓋をコインで回して、外します。外した蓋はワインダー、モータードライブ側にネジ込むことができますから紛失の恐れがありません。
モータードライブLXとバッテリーグリップMを取りつけてみましたが、ちょっと笑えるスタイリングになりますね。単3アルカリ電池12本は結構な重さになります。
モータードライブLX背面です。中央のダイヤルL-Mの範囲でコマ速度が変速できる仕組みですが、コマ速度数値が書いてはいないのでいい加減です。筆者は5コマ/秒だと速すぎるように感じていますから、いつも遅い位置で使用しています。ワインダーくらいの速度でしょうか。
ペンタックスLX(1984年)カタログより抜粋(資料提供:リコーイメージング株式会社)
ペンタックスLX(前期型)システム図・価格表より抜粋(資料提供:リコーイメージング株式会社)
- [モータードライブLX 性能表]
- 連続撮影=0.5コマ/秒~約5コマ/秒
- 巻戻し=36枚撮りフィルムを約8秒で巻戻し可能
- 電源=電源分離式、Ni-CdバッテリーパックLX、バッテリーグリップM、パワーパックMの3種
- 発売時期=1980年11月
- 発売時価格=50,000円
- [ワインダーLX 性能表]
- 連続撮影=約2コマ/秒
- 巻戻し=36枚撮りフィルムを約15秒で巻戻し可能
- 電源=単3形電池×4本
- 発売時期=1980年11月
- 発売時価格=30,000円
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