top コラム推すぜ!ペンタックス第19回 後発の意地を見せつけろ!機能テンコ盛りの先駆的中判一眼レフ、ペンタックス645

推すぜ!ペンタックス

第19回 後発の意地を見せつけろ!機能テンコ盛りの先駆的中判一眼レフ、ペンタックス645

2022/03/31
赤城耕一

最初見たとき、なんとなく反則じゃないかと思ったんですよね、ペンタックス645のことですよ。理由は単純です。こちらで紹介しているペンタックス67とか、ペンタックスauto110とかを見てください。正統派の「一眼レフスタイル」をしているじゃないですか。


ところがこのペンタックス645をご覧ください、ペンタックスらしさ、一眼レフらしさを欠くというか。ゼンザブロニカとかハッセル500CMにプリズムファインダーをつけて、それを小さくしたみたいなカタチしてませんか。いずれも正統派の一眼レフではあるけど、35mm判のそれとは違うわけですよね。これには理由がありますね。フィルムの走行方向が縦方向だからですね。
 

ペンタックス645はその名の通り6×4.5cm判フォーマットの一眼レフカメラです。仮にフィルムの走行方向を横にするとなれば、カメラを構えると画面は縦位置がデフォルトになってしまいます。
 

当時のペンタックスの設計思想としては、6×4.5cm判でもカメラを構えた時は、基本的に横位置じゃないとイヤという方向性があったんじゃないかと。というのは建前でしょうか。世界初の6×4.5判一眼レフとして登場し、横位置撮影をデフォルトとしたのは1975年発売のマミヤM645がありましたねえ。
 

ペンタックス645+smcペンタックスA645  55mm F2.8

生き残ったsmcペンタックス645 55mmF2.8を装着してみました。現役時代はそう使用頻度が多いレンズではなかったけど、デザイン的にも良い感じです。

 

 

純正のインスタントフィルムバックがない……(汗)

 

ペンタックス645は後発の意地というやつですかねえ。フォーカス以外は自動化された、6×4.5cm判フォーマットの一眼レフとして気を吐いています。両優先AEに加えて、プログラムAEも可能です。しかも、モータードライブ内蔵ですからフィルム巻き上げが自動化されています。ボディ上部にはシャッターダイヤルが見当たりませんが、これはボタンによるプッシュ式での設定になっているからですね。ええ、ペンタックスME SUPERみたいな感じです。ISO感度とか露光補正もボタンで行います。設計陣は、後発カメラなんだから、先進な技術を見せてやるかと気を吐いたのでしょう。ファインダー内表示なんか派手に見える赤いLEDです。どこか、キヤノンA-1あたりを思い出します。マニュアル露出で適正露出になると「OK」と表示出るんですよ。どうしますか、これ。
 

ペンタックス645を最初にみた時はそれなりの感動がありました。先駆的なカメラには見えたし。でもね、筆者は長いことマミヤ645シリーズを使ってましたね。理由は単純です。ペンタックス645には純正のインスタントフィルムバックが用意されていなかったからです。フィルムマガジンが交換式ではないからフィルムバックを装着することができず、“ポラが切れない” んです。マミヤはフィルムバックが交換できましたから専用のインスタントフィルムバックが用意され、これを可能にしています。ずっと時を経てから、ペンタックス645用にも、サードパーティ製でしたが、インスタントフィルムバックも用意されました。すごく高かったけどね、買いましたよ。ペンタックス645ボディと同じくらいの価格しました。昔は仕事があったんだねえ。フィルムバックが高額だった理由は、インスタントフィルムのフィルム面までフォーカスを伸ばすため、分厚いグラスファイバーを用いて、距離を稼ぐ必要があったからですね。フィルムマガジン交換式でないとこういう弊害がありますがストイックな作りです。製品名は「NPC PROBACK Ⅱ」でしたっけ。これが使えるということを主な理由として645システムはマミヤからペンタックスに乗り換えることにしたわけです。


 

LCDパネルに各種情報が表示されますが、窓が小さいですねえ。カメラがそれなりに大きいんだからお願いしますよ、ってな感じです。

 

ボタンによる設定は、ペンタックス MEスーパーとかスーパーAとかを想起します。世代交代したなという感じもしましたけど、645Nでは、シャッターダイヤルが復活します。

 

これぞ真のスーパーフィールドカメラ

 

ペンタックス645のキャッチフレーズは「スーパーフィールドカメラ」だから、スタジオでは使うなということなのでしょうか。のちに入手した時はスタジオポートレートだろうが建築工事現場だろうがドキュメンタリーだろうがバリバリ使いましたけどねえ。 
 

ペンタックス645は、導入後35mm一眼レフとほぼ同様の活躍をみせてくれました。私にとって真のスーパーフィールドカメラでした。フィールドって、自然ではなくてスタジオから飛び出しても扱いが容易な中判カメラという意味ですね。グラフ誌のロケ撮影などにもかなり使いましたからねえ。35mm判とさほど変わらない撮影方法で、確実に階調再現性、粒状性は6×4.5cm判の方が1日の長があります。これはいまのデジタルのAPS-Cと35mmフルサイズの“画質差”で大騒ぎするより、はるかに大きい差異があるんじゃないかと思いますよ。
 

非常に重宝したのは、コダックのタングステンタイプの高感度リバーサル、エクタクローム160Tフィルムの120サイズを使う時です。これは映画やテレビの撮影取材現場では本当にありがたかったですねえ。現場撮影ではスチル用のために別のライティングを用意することができない場合があり、映画用のタングステンライトでそのまま撮影するのです。本当は画質のためならエクタクローム64Tを使うべきですが、時間の限られた撮影で使うには厳しい。三脚を立てられることは稀で、被写体も人物が多いのですが、多くの場合は手持ち撮影が主になります。
 

35mm判でもエクタクローム160Tがあるのですが、高感度フィルムのために性能が今ひとつで、少しでも大きなフォーマットのタイプを使って、写真を鮮鋭に見せるために努力しようと考えたわけです。
 

もっともペンタックス645の動作音はかなり大きいため、こうした張り詰めた現場では周りの気配を読む必要があり、使う場面は限られましたが。それでもここぞというときは短時間でバーッと多くのシチュエーションが撮影できるので、ありがたかったですね。
 

現場でもスペースがあって、スチルのためにストロボライティングができる場合はハッセルを使いましたが、条件によって機材の使い分けをしたわけです。つまりカメラを買う理由が生まれたわけ。今のデジタル時代は色温度の苦労がなくて、本当に天国のようなんですよ。
 

ペンタックス645は後発だったから電子マウントでマルチモード機でした。このため、smcペンタックス645レンズには電子接点がつき、絞り環には「Aポジション」があります。35mm判のsmcペンタックスAレンズみたいですね。
 

非常に興味深いのはペンタックス67用の交換レンズも純正のマウントアダプターで使用可能だったことです。しかもこのアダプターでは自動絞りが機能するので、撮影時に違和感が少ないんですよね。マウント規格を同じくする現行のペンタックス645Zにもアダプターを使えば同じように67交換レンズが使えるのでお試しください。かなり楽しいですよ。

 

マウント部分には電子接点があります。将来的なAF化を目指していたことは登場時点から間違いありませんでした。

 

 

「Aポジション」のあるsmcペンタックス645用交換レンズのデザインは35mm判用のsmcペンタックスAレンズと酷似している。

 

 

カメラとしての質感や仕上がり、デザインは元祖645に軍配

 

それにしても、なぜ、ウチにペンタックス645が残されていたのでしょうか。
 

じつは少し前まではペンタックス645NIIも2台所有しており35mmから400mmまでの交換レンズもAF、MFの多種類がありましたが、さすがにもうアサインメントで使うこともなくなり、プライベートでも何かを作り出すために持ち出そうという気が起こりませんでした。筆者が怠惰なだけかもしれないけど。


いや、実はですね、使わないし処分しちゃえということで見積もりをしてもらったのですが、この元祖645にはほとんど満足な値段がつかなかったのですよ。そんな値段なら壊れるまで使うわい。ということで残したわけです。
 

幸いにも処分し忘れた645交換レンズの55mmと135mmが残っておりました。AFのマクロ120mmも出てきました。この3本だけでもそれなりに撮れてしまいます。
 

価格がつかなくなったとはいえ、ペンタックス645、作り込みは悪くないと思いますよ。プラスチック上下カバーでも、それなりに高級感がありますし、各部の作り込み、動作感触も合格です。先に述べたシャッター音、モーターによるフィルム巻き上げ音もデカいんですが、耳には心地いいんですよね。これ、結構すごいことだと思います。
 

ペンタックス645NからはAF化とともにシャッターダイヤルが復活したので、それなりに使いやすかったのですが、カメラとしての質感とか仕上がりとデザインは、元祖645の方が良いんじゃないかと思ったりします。ほんと、久しぶりに触れて思うのは、手放さずによかったということです。

 

 

電源は単3形電池を6本、グリップに収納します。グリップは大きすぎず、小さすぎず握りやすく私の手にちょうどいい感じです。

 

 

ペンタックス645用ポラバック「NPC PROBACKⅡ」

(画像提供:八百富写真機店 https://www.yaotomi.co.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペンタックス67 645 カタログ[1992年版]より抜粋(資料提供:リコーイメージング株式会社)

 

 

 

 

  • 【PENTAX645 性能表】
  •  
  • 型式=マルチモードTTL自動露出、6×4.5cm判一眼レフカメラ
  • 撮影モード=①プログラム自動露出、②③絞り優先自動露出(2方式)、④シャッター優先自動露出、⑤マニュアル露出、⑥TTLオートストロボ、⑦外光オートストロボ、このほかレンズシャッター
  • モード設定=645レンズ、A[オート]ロックまたは解除、モードボタンにより設定
  • 使用フィルム=120ロールフィルム[15枚撮り]、220ロールフィルム[30枚撮り]、70mmフィルム[約90枚撮り]、120・220・70mm専用フィルムバック交換式[途中交換不可]
  • 画面サイズ=56×41.5mm(セミ判)
  • レンズマウント=ペンタックス645 Aマウント[レンズ情報接点付]
  • シャッター=電子制御式布幕縦走りフォーカルプレンシャッター、15秒〜1/1000秒、1/60秒、B、電磁レリーズ式
  • ファインダー内表示=LED表示[消灯ボタン付]、自動露出およびマニュアルのシャッタースピードと絞り値、測光連動範囲外警告、露出補正警告、専用ストロボ充電完了およびオートチェック信号、60、B、LS
  • 外部表示=LCDによるデジタル表示、プログラム自動露出、絞り優先自動露出、シャッター優先自動露出、マニュアル露出、60、B、レンズシャッター、フィルム感度、フィルム枚数、専用ストロボ充電完了マーク、LCD照明ボタン付
  • シンクロ=ホットシュー[X接点、専用ストロボ接点付]、Xシンクロソケット同調スピード1/60秒
  • 専用ストロボ連動=ストロボ同調スピード1/60秒に自動切換え[TTLオートストロボではフィルム面反射測光制御]、マニュアル露出では1/60秒以下撮影可能[低速シンクロ]
  • ファインダー=ケプラーテレスコープ式ファインダー、フォーカシングスクリーン交換式[クリアーブライトマットスクリーン]、標準仕様:スプリットマイクロマット式、視度調節リング付[ー5〜+2ディオプトリー]、視野率は縦92%、横93%、倍率0.75×、70mmフィルムバック使用時には70mmバック用アイピース645を接続
  • ミラー=スイング上昇式クイックリターンミラー、モータードライブによりミラー復元
  • フィルム入れ=120・220フィルムバックはスタートマークによるセミオートローディング、70mmフィルムバックはオートローディング
  • 巻上げ=モータードライブによる自動巻上げ[シャッターボタンによる作動]、C-S切換え可能[C:連続撮影約1.5コマ/秒、S:1コマ撮影]、フィルム終了時完全巻取後に自動停止、電池消耗時手動巻上げ可能
  • フィルムカウンター=自動復元順算LCD表示式[フィルムカウンター1枚目まで自動空送り機構]、フィルムバック交換によりカウンター自動切換え、多重露出時フィルムカウンター停止機構付
  • 多重露出=多重露出セットリング切換え
  • 露出計=TTL中央重点測光方式、受光素子GPD
  • 測光範囲=75mmF2.8、ISO100のときEV3[F2.8・1秒]〜19[F22・1/1000秒]、フィルム感度ISO6〜6400
  • 露出計スイッチ=シャッターボタンを押すとON、約30秒後タイマースイッチでOFF
  • 露出補正=露出補正ボタン+3〜−3段階
  • 被写界深度確認=プレビューレバー方式[レンズ絞り値セットのとき]
  • 電源=JIS単3形電池6本使用、グリップ組込み式のため取りはずしてパワーコード645により遠隔操作可能
  • 撮影本数=マンガン電池SUM-3:120フィルム 約100本、220フィルム 約70本、70mmフィルム 約20本、アルカリマンガン電池LR-6:120フィルム 約250本、220フィルム 約170本、70mmフィルム 約50本、ニッケルカドミウム蓄電池KR-AA:120フィルム 約100本、220フィルム 約70本、70mmフィルム 約20本 ※常温のとき、低温では低下
  • バックアップ電池=CR1220型リチウム電池1個[露出制御表示回路の記憶用、電池寿命は約5年]
  • 大きさ・重さ=146[幅]×109[高さ]×117[厚さ]mm・1320g[ボディのみ][大きさ・重さはボディにフィルムバック・グリップ付き(電池なし)、レンズなし]
  • 付属品=大型アイカップ645、ボディマウントキャップ645、ボディ後キャップ645、ストラップB
  • フィルムバック645=120フィルムバック、220フィルムバック、70mmフィルムバック
  • フォーカシングスクリーン=スプリットマイクロマット[UC-21]、マイクロプリズムマット[UA-21]、スプリットイメージマット[UB-21]、全面マット[UG-20]、方眼マット[UG-20]
  • 接写アクセサリー=オート接写リングA 645セット、ヘリコイド接写リング645、リバースアダプター645 58mm、645レンズ用リバースアタッチメント、SMCクローズアップレンズS 33/S 56、67レンズアダプター645、645レンズ用アダプターK、クイックシュー645/67、レフコンバーター645、円偏光フィルター、偏光フィルター
  • 専用ストロボ=AF400T、AF280T、AF200T
  • リモートコントロール=ケーブルスイッチA、パワーコード645、リモートバッテリーバック645
  • その他のアクセサリー=ゼラチンフィルターホルダー58・67・77mm/ラバーフードRH-A58・70・77mm、RH-B58mm/ソフトケース645/キャリングケース645/オートベローズ645
  • 発売時期=1984(昭和59)年6月
  • 価格=210,000円[SMCペンタックス-A 645  75mmF2.8(標準レンズ)付]

 

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する