smc PENTAX FA★28-70mmF2.8 ALは、数ある“標準ズーム” の中でも筆者お気に入りの一本であります。
外装の作り込み、仕上げなど、写りとは関係のないところにお金がかけられている印象を持ちますが、筆者は、これらの要件はとても重要なことであると考えています。さらにMF時のフォーカスリングのトルク感やズームリングを回した時のスムーズな動きは長期にわたって、そのフィーリングが維持されています。これもいいですね。モータースポーツみたいですね。
逆にAF撮影時の力強い動きはすごいですね。ボディ内モーターによる駆動なのですが、フルスロットルで内部のレンズを走らせ、合焦点でフルブレーキをかけるという印象です。ものすごく荷重のかかる仕事をしているように思います。
機構設計の優れている部分でしょうけど、おそらく光学設計者は、このような力技によるモーター駆動では、AFの精度に信頼がおけなくなるとお考えなのかもしれません。
でもね、いいんですよ、ここぞの時にはMFに切り替えて撮れば。時間がない時はフォーカシングの誤差のマージンを考えて、少し絞り込めばいいんじゃないですかねえ。これじゃいい加減でしょうか。でも合理的に考えて撮影を行うのも現代写真術ではないでしょうか。筆者も今さら、古いレンズにおいて厳密なレンズレビューをしたいわけではないのです。自分の写真撮影なら、好きなようにすればいいと考えていますからなおさらです。
必要以上の大きさじゃないかと思わせる着脱式の専用レンズフードもいいですね。ズームですからレンズ全長は焦点域設定の変化で長さが変異しますので、見苦しい形になることがあるのですが、フードがこれを覆い隠してくれます。そういう意味では本レンズにフードの使用はマストです。もし、中古で本レンズを入手される場合はフードの有無に気をつけてください。ない場合は全力で探索せねばなりません。
シルバーの外装は、このためにK-1のシルバーモデルを買い足さねばならんのではないかと思わせるほど良い印象なのですが、さすがに実際にはお越しいただくまでには至っておりません。いやなんとなく今もアブない感じはします(笑)
テレ端側で少し絞り込んで画質をみたところ、もうね、全画面でギンギンですね。コントラストも十分で、素晴らしい画質です。線が細いです。風景撮影などで緻密さが欲しいというときは、少し絞り気味にして撮影すればいいわけですね。
smc PENTAX−FA★ズーム28-70mmF2.8 AL・70mmで撮影・絞りF9・1/1000秒・−0.7EV補正・ISO400・WBオート
筆者はパワーズームは使用しないけれど、たまに手慰みとして動作させてみると、このモーターなかなか良い動きをするんですよね。動作音はしますけどね。
いい気になって動かしているとバッテリーがすぐに減りそうですし、設定したいレンズの焦点域で止めるのはそれなりに技を必要とするのですが。でも搭載されている機能なのだから、とりあえず動かしたくなるのは当然ですね。反面、パワーズームにしなければレンズはもっと小型軽量化できたのかもしれませんけど、こうした機能も製品の魅力として考えれば、難しいものがあります。
本レンズ、K-1に装着した時は筋トレできるほど重たくなります。お気に入りのレンズと宣言しつつ、実際のところ持ち出す機会がさほど多くはないのは、このためでしょう。矛盾しちゃいますけど。筆者の加齢もあるし。
出かける前に撮影の準備をしているときにバッグに入れたり出したりを繰り返し、結局は留守番になったりすることが多くなります。ただ、今日は絶対にペンタックスでキメなければならない撮影がある時は間違いなく携行します。勝負ズームレンズなわけです。
それに携行している時はイヤになるのに撮影しているときはさほど気にならないのはとても不思議です。全体のバランスが良いからでしょうか、信頼が厚いからでしょうか。
車のウィンドウに太陽のリフレクションを見つけました。意外といっては失礼ですが、ゴーストが発生しているものの、今ひとつ小さいようです。たぶん条件にもよりますね。問題が少ないのでつまらないです。嘘です。
smc PENTAX−FA★ズーム28-70mmF2.8 AL・70mmで撮影・絞りF9・1/5000秒・−1.3EV補正・ISO400・WBオート
ワイドレンズ好きとしてはワイド端が24mmではありませんので物足りないようにも思うのですが、筆者の個人的な印象では実用上はまったく問題はありませんでした。もちろん個人によってワイド端の焦点域の好みは異なるとは思いますが筆者は我慢できます。
FA★と名づけられ、高性能描写を標榜する本レンズですが、全体の印象としては昨今の高性能ズームとは少し違う印象ですね。絞り開放ではどの焦点域でもハイライトにわずかな滲みがあります。
中心近くならば合焦点は絞り開放からシャープですが、中心部と周辺域の画質に少々差はあるようです。至近距離で四隅をみると、さらに画質は落ちます。絞りこむにつれ、次第に改善されます。いわゆる“絞りの効く” レンズなわけで、この効果は大きいです。なお至近距離では少々画質が低下しますが、これは周辺域だけです。インナーフォーカスではなく、おそらく前群繰り出しだと思うので、さほど光学設計に無理がないようですね。
ワイド端では28mmということもあり、開放絞りでも極端に被写界深度が深いわけではありません。開放絞りでは合焦点以外はボケるので、周辺域の画質は実用上はそんなに気にならないわけです。歪曲はタル型ですが、補正は自然です。像面の平坦性は今ひとつの印象で、少しクセのある描写を期待したのですが、今回の撮影ではたまたま被写体のカタチとレンズの収差が良い感じで作用したようです。被写体は平面ではありませんし。
テレ端ではどうでしょうか。中心部も開放時は少し軟らかい印象です。背景のボケ味も特筆していいわけじゃないですしね。線のボケは光線状態や被写体の条件によっては2線ボケに見えることがあります。またテレ端側でも絞り設定で画質が変化するようです。
結論としてはあたりまえですが、本レンズは フィルム時代の典型的な高性能レンズなわけです。絞りで性能が変わるのは面白いじゃないですか?だめですかねえ。
ワイド端、至近距離、絞り開放です。被写界深度浅いです。筆者はマイクロフォーサーズ機を使うことも多くレンズの焦点距離の違いが大きいためか、より浅く感じます。合焦点は線が細く見事なシャープさです。コントラストも高い。周辺光量はなだらかな感じで落ちます。ボケはうるさめですが特に問題はなく。合焦点以外にもフォーカスが合って見える箇所があるのは像面の湾曲のためでしょうか。
smc PENTAX−FA★ズーム28-70mmF2.8 AL・28mmで撮影・絞りF2.8開放・1/1000秒・ISO400・WBオート
どのような撮影条件でも周辺域までピシピシの描写が欲しい場合は潔く最新のズームや単焦点レンズを使用すべきでしょう。少なくとも本レンズは数値性能上は“超”のつく高性能というわけではありませんし、描写面では絞りの設定の判断など撮影者の介入の余地のあるレンズということになります。
でも繰り返しになりますが、筆者はペンタックスフィルム一眼レフをいまだに多く所有しているので、なかなか最新の絞り環のないレンズに手を出しづらいんです。
つまり描写性能面だけでは交換レンズを選択できないということになります。ええ、自分で縛りを設けているわけですがこれは悪いことではないと考えています。
欠点が出てこないとつまらない(笑)報告になるので一生懸命意地悪な条件で頑張ったのですが、なかなかうまくいかない。周辺光量落ちがよくわかるのはこのカットだけ。最短撮影距離、絞り開放。周辺像も流れ気味になりました。ああ、よかった(何が)。でも合焦点はすごくシャープです。
smc PENTAX−FA★ズーム28-70mmF2.8 AL・28mmで撮影・絞りF2.8開放・1/4000秒・−0.3EV補正・ISO400・WBオート
フードを外すと、すげーカッコ悪くなり、今後の人生をやってゆく自信がなくなります。ワイド端の時に鏡胴が最も伸びますから、フードの機能としては、たしかに理にかなっています。でも、フードはカッコ悪い姿を覆い隠すためにあると思いますけどね。
smc PENTAX−FA★ズーム28-70mmF2.8 AL
ペンタックスレンズ総合カタログ【35mm一眼レフ用・1994年版】
(資料提供:リコーイメージング株式会社)
- smc PENTAX−FA★ズーム28-70mmF2.8 AL SPECS
◉マウント=ペンタックスKAF2マウント
◉レンズ構成=11群14枚
◉画角=75~34.5°
◉絞り方式=完全自動絞り
◉最小絞り=F22
◉測光方式=開放測光
◉焦点調節=前玉回転式 AF/MF切替え可能
◉フィルター径=67mm
◉最短撮影距離=0.43m
◉最大撮影倍率=約1/4倍
◉フード=専用フード
◉大きさ=84.5(最大径)✕104.0(全長)mm
◉重量=800g(フードなし)
◉発売日=1994年(平成6年)3月10日
◉価格=165,000円(ケース・フード付・税別)
◉生産数=800本(当初月産)
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