top コラム推すぜ!ペンタックス第14回 顔立ちが良いからなんとなく許せてしまうペンタックスP30

推すぜ!ペンタックス

第14回 顔立ちが良いからなんとなく許せてしまうペンタックスP30

2022/02/24
赤城耕一

ウチにあるはずのペンタックススーパーAはいまだに行方知れずです。捜索願いを出そうかとも考えましたが、もしかすると酔っ払った勢いで、アシスタントの誰かにあげてしまった可能性も残されています。
 

あ、心当たりのある人、もう返さなくていいです。近いうちに別のスーパーAさんを探す旅に出ようかと思います。
 

と、いうわけで気を取り直して、今回は突然ですが、ペンタックスP30さんにお越しいただくことにしました、というか機材ロッカーから発掘したのです。P30まで持っているのかよお前は?みたいな声は却下します。だって仕方ないじゃないですか。

 

もう、あまりに不憫で保護したペンタックスP30

 

たしか数年前のことです。元箱入りのデッドストックで、本日の日替わりランチのドリンク付きセットみたいな値段で某中古カメラ店のウィンドウに申し訳なさそうに飾られていたのです。ええ、現在のトライX1本よりも安いお値段でした。これはうちにお越しいただくしかないと思いましたねえ。あまりにもつけられた価格が廉価で不憫じゃないですか。筆者が救出しなくてどなたがするのでしょう?こうなると「保護カメラ」になりますな。
 

筆者は高級なライカも好きですけどね、お、さすがライカで撮影した写真は違いますね、なんてムリして持ち上げられるよりも、廉価なカメラを使って撮影した写真を見せて、お、これはヤルなと驚かれる方が好きなんですね。もちろん満足のゆく作品はなかなかできないけど。そういう意味ではエントリー機はみな大好きです。
 

で、発掘したP30くん、電池を入れたら正常に動作しました。以前フィルム数本を撮影して、また元箱に入れて保管していましたが、スーパーAの探索時にこれを見つけたというわけです。これはP30くん、本連載に登場させろと手を挙げたということなのではないかと思うわけですよ。
 

はい。わかりました、そうします。

 

キレイな顔立ちながら、かなりマニアックな思想をまとった個性派

 

久しぶりに陽の光を浴びたペンタックスP30くん、なかなか良い顔立ちをしていますね。新鮮な印象です。本連載で紹介したME-FとかプログラムAなどのようにボディ上部にはボタンがなくスッキリして良い感じです。あれ、こんなキレイな顔立ちでしたかねえ。
 

ボディのシンプルさは、ペンタックスMEと共通するニュアンスがあるようですが、P30はまったく関係ない思想をもとに設計されていることがわかります。
 

P30がデザイン的に優れているのは、シャッターダイヤル、シャッターボタン、フィルム巻き上げレバー、巻き戻しノブが、ボディにビルトインされた感があることです。
 

つまり、これらのパーツが凹凸のないようにボディ上部のツラ位置にうまく収まっているという感覚です。こういうのには筆者は泣きますねえ。実際にかなり見た目カッコいいですよ、これ。

 

シャッターボタンにはケーブルレリーズ穴はないのに絞りプレビュー機構があるとか、変なちぐはぐさを感じるのも個性的であり、これも魅力ですね。すごいのはボディ周りにISO感度設定ダイヤルが見当たらないことです。つまりP30にはDXコードのついたフィルムを原則的に使用せよという意味でもあります。DXコードのないフィルムでは自動的にISO100に設定されるようです。しかしこれでは増感とかできないじゃないですかねえ。それに本機には露光補正ダイヤルが見当たりません。ML(メモリーロック)ボタンはあるけど。つまりフィルム感度設定を変更しての露光補正はしてくれるなということのようですね。もしくはうるさいことをいう人はマニュアル露出にして、どうぞ好きなように細かくやってくださいということでしょうか。このクラスのカメラのユーザーはそう複雑な設定はしないとか思っているのかなあ。いろいろやりたくなるような筆者はユーザーになってはいけないのかなあ。
 

外装はプラスチック製ですが、さほど安っぽさはないので気にならないです。たぶん使い込むとツルツルになってゆくんだろうなあと。
 

なんと、絞り優先AEがない!

 

本機の登場は1985年です。「Pシリーズ」というみたいです。ネーミングはプログラムのPから取られているんだろうなあ。
 

Aシリーズと併売されており、プログラムAEモード搭載の廉価機として販売されたようです。前回の紹介したプログラムAと機能面では似ているといえばそうなのですが、プッシュのボタンはありませんし、ワインダー、モータードライブ類は装着できません。手巻きで大事に撮るカメラのようです。
 

筆者が感動したのは、この種の一眼レフには常識的な装備である絞り優先AEが搭載されていないことです。つまり、P30ではプログラムAE+マニュアルの2通りしか撮影モードがありません。これ、かなり珍しいですね。

 

マウントには電子接点がありますので、使用レンズは原則として、Aポジションのある「ペンタックスA」レンズということになります。筆者の勝手な妄想では、せっかくカネを使って、マルチモードAEに対応したペンタックスAレンズを作ったんだから、他の廉価機でもプログラムAEを活かせるカメラを開発しろということではないかと。本当のところはどうなんでしょうか。
 

プログラムAE時は、レンズの絞り環をAポジションにするだけで準備完了です。この時、シャッタースピードダイヤルはどこの位置にあってもOKです。シャッターを押すだけカメラになります。
 

絞り環をAポジションから外すとどうなるか?ええ、このままマニュアル露出となります。でもメーターはちゃんと生きており、定点合致式で使用できます。設定シャッタースピード数値は点灯表示、適正露出になるシャッタースピードが点滅表示されます。絞り環を回して、スピード表示がひとつになり、点滅から点灯に変わると適正露出ということになります。シャッタースピード数値は、1/1000-1/60秒が緑色、1/30秒以下はオレンジ色ですね。手ブレ警告の意味があるのかな。
 

いちおうPというシリーズですから、のちにP30DATEとかP50というプログラムシフトが2通り用意された機種が出たり、絞り優先AEが追加されたP30Nという機種、これをチタンカラーっぽくしたP30Tも登場するようです。これ、絞り優先AEが追加されるとマルチモード機になるので当初のP30のシンプル思想が乱れませんか?そうでもないのかな。でもまあ、カメラは新型になると機能が増えてゆくのはいつものことです。
 

巻き上げレバーの少しトルクのある動作感触や、“カターン” と乾いた音のするシャッター音とか、気になるところはいくつかあるのですが、顔立ちが良いからなんとなく許せてしまうカメラですね。憎い魅力がある。店ではトップにはなれないけれど、人気は10番以内に入る小柄なホストというところでしょうか。そんなペンタックスP30なのであります。

 

ペンタックスP30+smcペンタックスFA 43mmF1.9 Limited

なかなかシンプルでデザインもキレイなカメラだと思うのですが、まったく人気ないですね。こういうカメラで自分の気に入った写真が撮れると愉快だろうなあと思いませんか。

 

 

メインスイッチとセルフタイマーの動作スイッチは一体です。セルフタイマーを仕掛ける場合は、ロックボタンを押してレバーを上にまで位置させます。

 

 

ML(メモリーロック)ボタンです。ボディ左袖にありますがまだ使ったことないですね。ISO感度ダイヤルがないのでAEでの露光補正はこれしかない。マニュアルにして撮影した方が早いです。

 

 

エントリー機だけど、プレビューレバーを備えています。これはエラいですね。おそらくビギナーの方はお使いにはならないと思うけど。セルフタイマーのランプが異様にデカくて、これは筆者がP30で気に入らない点ですね。

 

 

ボディに段差をつけて、フィルム巻き上げレバー、シャッターダイヤルをボディから出っぱらせない工夫が行われています。レリーズ穴くらいはあってもいいと思うんだけど、穴の有無でそんなにコスト下げられるんですか。

 

 

マウントの電子接点です。プログラムAEを使えるのはAポジションのあるレンズですから、通信のためにあります。Aポジションのないレンズでは、すべてマニュアル露出になります。

 

 

 

 

 

ペンタックスP30のカタログより抜粋(資料提供:リコーイメージング株式会社)

 

 

 

  • 【PENTAX P30 性能表】
  •  
  • 型式=プログラム自動露出・マニュアル露出・35mmTTL一眼レフカメラ
  • 使用フィルム=35mm DXフィルム(135パトローネ入り)、DXフィルム:ISO25〜1600、DXでないフィルム:ISO100固定
  • 画面サイズ=24×36mm
  • レンズマウント=ペンタックスKAマウント
  • シャッター=縦走りフォーカルプレンシャッター、オートおよびマニュアル電子シャッター 1/1000〜1秒、X=1/100秒、B、電磁レリーズ
  • ファインダー内表示=プログラム自動露出:P 1000〜1 表示、マニュアル露出:M 1000〜1 表示、測光連動範囲外:1000または1が4回/秒で点滅表示、手ぶれ警告:30〜1 黄色で表示、 フラッシュ:ストロボ充電完了表示
  • シンクロ=ホットシュー(X接点、専用ストロボ接点付)
  • 専用ストロボ連動=ストロボ同調スピード 1/100秒自動切換え
  • セルフタイマー=電子式、ランプ表示、作動時間約12秒、作動後の解除可能(始動はシャッターボタン)
  • ファインダー=ペンタプリズムファインダー(銀コート)、スプリットマイクロスクリーン、視野率 縦・横92%、倍率0.82×(50mm・∞)、視度ー1.0ディオプトリ−
  • ミラー=スイング上昇式クイックリターンミラー
  • フィルム入れ=イージーローディング
  • 巻上げ=レバー方式、巻上角130°、予備角35°、巻上げ確認表示付
  • フィルムカウンター=自動復元順算式
  • 巻戻し=クランク式、巻戻しボタン自動復元
  • 露出計=TTL中央重点全面測光方式、受光素子GPD
  • 測光範囲=50mmF1.4レンズのとき、ISO100  EV1(F1.4・1秒)〜18(F16・1/1000秒、F22・1/500秒)
  • メモリーロック=ボタン式
  • 被写界深度確認=プレビューレバーによる(レンズ絞り値セットのとき)
  • 電源=JIS LR44アルカリマンガン電池、またはSR44型銀電池(G13)を2個
  • 露出計スイッチ=シャッターボタンを押すとON、約10秒後タイマースイッチでOFF
  • 電池消耗警告=電圧低下により、LEDが1回/秒で点滅
  • 裏ぶた=フィルム確認窓付
  • 大きさ・重さ=137(幅)×87.5(高さ)×50.5(奥行)mm・510g(ボディのみ)

  • 発売時期=1985(昭和60)年10月1日
  • 価格=ボディのみ 39,000円、SMCペンタックスA50mmF2付 53,500円、SMCペンタックスA50mmF1.7付 60,000円、SMCペンタックスAズーム35〜70mmF4付 77,000円

 

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