ペンタックスSPより時代が前になってしまうのですが、M42時代のペンタックスで最も強く意識したのはSVだったんですよね。
ええ、理由は単純です。森山大道さんの愛機だったからです。森山さんは1970年代の後半って、あまり写真を撮っていなかったらしく、目立った活動を再開したのは、1981年に創刊された「写真時代」(白夜書房)からだと思います。
40年前とか、つい昨日みたいに思ってしまうのがジジイのいいところですが、森山さんの新連載がスタートしたことがこの時はとても嬉しかったですね。ええ、森山さんの連載を見るためだけに、もちろん私も買いました。嘘です。エロ記事も見たかったからです。こういう正直なところだけは筆者はジョージ・ワシントンばりですね。表紙は三原順子さんでした。ええ、今の国会議員さんと同じ人です。信じられないですね。
で、森山さんの連載「光と影」は素晴らしかったです。意外とアレブレボケじゃないんです。コントラストは強いけど、「光」を意識したものでした。ここで注目したいのは使用カメラが今回のお題のペンタックスSV+タクマー35mm F3.5だったことです。おーすげー。
森山さんはエッセイで珍しく使用カメラのことに言及しています。どこの中古カメラ屋さんかはわかりませんが、ウィンドウでブラックのペンタックスSVと目が合って、これを買って、再び撮影を始めたとありました。
当時20歳だった筆者はこの組み合わせのセットさえ手に入れれば「モリヤマダイドー」になることができるのではと考えました。ええ単純なものです。
ところが既に筆者は強力なカメラヲタクでしたから、森山さんのお使いレンズがスーパータクマー35mm F3.5なのかsmcタクマー35mm F3.5なのかがわからないのが強力な悩みでした。時代的にはスーパーだと思うのですが。SVはブラックボディであることがわかっていましたが。このあたりのレンズの違いはまた次回以降のお話にします。
で、この話を知って、さっそく中古カメラ店に赴き、この実際に「モリヤマセット」を見せてもらったわけです。
レンズはSVの時代に合わせてスーパータクマー35mm F3.5をつけてもらいました。外観はなかなかコンパクトでいいなと思ったんですが、ファインダーを覗いた時に後ろにひっくり返りそうになりました。
なぜなら絶望的に暗かったからです。フレネルレンズの同心円とか数えられそうなくらい粗くてびっくりしました。明るいところでファインダーを見てもピントが合いそうな気がしないんですよね。森山さんはこういう要件は我慢して撮影したのでしょうか。筆者はこの時はSVのファインダーを見て、購入を断念しました。なんか使いこなせる自信なくて。今ではなぜか手元にあるけどね。
こんど森山さんに会いできる機会があればペンタックスSVの使いこなしについてお聞きしようかといつも思うのですが、お会いした時は舞い上がってしまい、すっかり忘れてしまうのです。カメラのことを世界的写真家にお聞きするのはかなり勇気が必要ですし…。
でもね、SVはセルフタイマーレバーがボディ前面に存在しないところがデザイン的にイカしてましたね。ちなみにセルフタイマーを仕掛けるには、フィルム巻き戻しノブの下のダイヤルを止まるまで回して、脇の小さなボタンを押すことで機能します。そうなるとこのダイヤルが回るわけです。オルゴールみたいで結構可愛いので、原稿に詰まった時とか手慰みにいじくり回すにはちょうどいい装置なわけです。
ライカM2には前面にセルフタイマーレバーがないモデルがあることは有名ですが、ええ、セルフなんか使わないというのがこの当時のシリアスフォトグラファーの共通した点です。今みたいに自撮りとかしないしね。
ペンタックスSV+smcタクマー35mm F3.5
偽モリヤマセット。カメラとレンズの時代の整合性が取れていないというお叱りがきそうですが、スーパータクマー35mm F3.5が行方不明でして。我慢してください。
セルフタイマーレバーじゃなくてダイヤル。上にはASA(ISO)感度ダイヤル。メーター内蔵ではないからフィルム感度なんかどうでもいいんだけど。セルフは矢印方向にダイヤルが止まるまで回して右のボタンをセット。
自動復元式のフィルムカウンターに、最高速1/1000秒を備えているから、スペックはSPと変わらない。けれど不人気なSV。なぜでしょう。謎です。今晩の赤提灯を我慢すれば入手可能です。
ペンタックスSVシルバーボディ。ペンタプリズムにある「AOCO」マークってこの頃はシルバーボディに墨入れをされていたからそれなりに目立ちますね。ブラックは黒のままです。
オマケなんですが、ペンタックスS2画像を挙げておきます。時代が合っているかどうかはわかりませんが、オートタクマー35mmF3.5つきです。半自動絞りです。使いづらいです。絞りは5角形ですねえ。
森山大道写真集「光と影」(冬樹社 1982)。多くの作品はペンタックスSVで撮影されているのではないかと推測されます。充実した作品集です。
【ASAHI PENTAX SV 性能表】
型式=35mm判フォーカルプレン式一眼レフカメラ
使用フィルム=35mmフィルム
画面サイズ=24×36mm
レンズマウント=ペンタックス スクリューマウント(径42mm、ピッチ=1mm)
シャッター=フォーカルプレンシャッター、T、B、1~1/1000秒、フィルム感度表示窓付、セルフタイマー内蔵(約10秒)
ファインダー=ペンタプリズム式ファインダー、フレネルレンズ・クロスマイクロプリズム付き、像倍率 50mmで0.89倍、視野率約93%、視度-1.0ディオプトリー
ピント調整=距離環を回して、ピントグラスの映像をルーペで拡大透視
ミラー=クイックリターン式
巻き上げ=レバー式
フィルムカウンター=自動復元順算式
巻き戻し=クランク式
シンクロ=FPおよびX(JIS-B型ターミナル)
露出計=なし(外付けで対応)
電源=不要
標準レンズ=スーパータクマー55mmF1.8、自動絞り付き直進ヘリコイド、フィルターサイズ49mm
大きさ=55mmF1.8付き 横幅145×高さ92×奥行き87mm(ボディのみ51mm)
重さ=55mmF1.8付き 927グラム(ボディのみ585グラム)
付属品=レンズキャップ、バッテリー、ショルダー、三角金具、肩あて
発売年=1962年
発売当時の価格=23,500円(ボディのみ)、34,900円(標準レンズ付き)
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